紹介するのは、ヒューマンドラマとしての趣もあり重層的に楽しめるフランス発Netflixオリジナル作品の『マリアンヌ -呪われた物語-』、今再燃している80年代ファッションとカルチャーを楽しめる『アメリカン・ホラー・ストーリー シーズン9』、ラテンアメリカ版「ほんとにあった怖い話」として、実際に起こった心霊・怪奇現象を再現したドラマシリーズ『ホーンテッド: 衝撃の超常現象 ラテンアメリカ編』の3作品。単に怖いだけではなく、物語、演出、カルチャー、キャスティングなど、様々な観点から複合的に楽しめる作品をピックアップしました。ホラー初心者はもちろん、ホラーを見慣れている人も(きっと)楽しめるラインナップです。
ホラー・スリラー『マリアンヌ -呪われた物語-』/友情、恋愛、家族愛あり。重層的に楽しめる、フランス発ホラードラマ
以前、こちらで紹介した『Lupin/ルパン』然り、フランス発のNetflixオリジナル作品に一目おいていることから、また、前回紹介した、『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』と同じ文脈で語られているレビューをいくつか見て気になっていたという理由で視聴したのがこちら。
悪魔の憑依に降霊術、さまよえる森やら廃墟といったシーンなど、ホラー初心者の私でも「これ、不気味なことが起こるフラグだよね?」とわかるほど、古典的な事象が登場しますが、その演出は現代的。
サブリミナル的にフラッシュフレームを差し込んで映像を切り返したり、縦横無尽にアングルを切り替えたりと、今風に例えるならTikTok的な緩急があり、現代の表現手法を採用しているなと思いました。小説のチャプターに沿うような展開もわかりやすく、なんかおしゃれ。加えてフランス映画のような空気感、さらに自然の美しさが織りなす映像美も同居していて、総じて飽きさせません。
ホラー作品に関しては初心者ですが、悪霊や悪魔といった悪役の魅力が作品の面白さを左右するカギだなと思います。その点この作品は、はなまる! 「マリアンヌ」に取り憑かれた老婆(主人公の友人の母)がとにかく猟奇的で恐ろしくてインパクトがあって。否が応にも画面越しに何度か目が合ってしまうのですが、夢に出てきそうで困りました(笑)。
なお、物語が進むにつれ老婆の怖さは失速し、悪魔に立ち向かう話が軸になります。そこからがまた本作品の第二の真骨頂。友情、恋愛、家族愛が恐怖のなかで描かれます。前半の恐怖は、それらの物語を盛り上げるための布石ともとれます。恐怖に苛まれる状況だからこそ引き立つ、人間性。その点が前回の、『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』と共通するところかなと思いました。ヒューマンドラマ好きにおすすめできるホラー作品です。
【ホラー初心者が勝手に採点!】
背筋ゾクッと度 ★★★★☆
グロテスク度 ★★★☆☆
心霊・幽霊度 ★★★★★
老婆の顔がトラウマになる度 ★★★★★
ホラー・サスペンス『アメリカン・ホラー・ストーリー シーズン9』/80年代カルチャーが渦巻く、スプラッターホラー
“アメホラ”でお馴染み、アンソロジードラマ『アメリカン・ホラー・ストーリー』のシーズン9です。『1984』のサブタイトルが表すように、80年代が舞台。現在、当時のファッション、音楽とカルチャーがリバイバルされるなか、その世界観をドラマから垣間見ることができ、面白いです。
なお、1970〜1980年に公開された、ホラー映画へのオマージュも盛りだくさん。明らかに『13日の金曜日』のジェイソンをオマージュした描写など、(私はさほど楽しめませんが)往年のホラーファンが喜びそうな小ネタが満載です。
オマージュの度が過ぎて、敬意なのか、パロディなのかとまどう過剰な演出は、ときにクスッとしてしまうことも。そもそも私がホラーが苦手になったのは、幼少の頃に、スプラッターやスラッシャーなど、その手の作品を見てショックを受けたから。ある意味私の中では、リバイバルよりリベンジ、トラウマを克服する手助けとなる作品となりました。
アメホラといえば、キャスティングも見所のひとつ。シーズン5の『ホテル』では、レディ・ガガが出演しゴールデングローブ賞を獲得しました。シーズン9では、アメホラを手掛けるライアン・マーフィーの代表作『グリー』よりマシュー・モリソンが参加し、シーズン3より、定番キャストとなっていたエマ・ロバーツが、今シーズンではついに主役の女性、ブルックを演じています。
なお、次のシーズン10の撮影も進んでいて、マイケル・ジャクソンの娘であるパリス・ジャクソン、マコーレー・カルキンに加え、スーパーモデルのカイア・ガーバーも参加するとか。どんな作品になるのか、待ち遠しいですね!
【ホラー初心者が勝手に採点!】
背筋ゾクッと度 ★☆☆☆☆
スプラッター度 ★★★★★
心霊・幽霊度 ★☆☆☆☆
ホラーなのにポップ度 ★★★★★
Photo:Aflo
STORY
1984年の夏、5人の男女の若者が、指導員として働くためにレッドウッドキャンプ場を訪れた。そのキャンプ場は、過去に、史上最悪といわれる凄惨な殺人事件が起きた場所だった……。
ホラー・ミステリー『ホーンテッド: 衝撃の超常現象 ラテンアメリカ編』/明日は我が身!? 日常に潜む恐怖を描く再現ドラマ
前回のレビューで紹介した再現ドラマ『ロア~奇妙な伝説~』で、“事実は小説より「恐怖」なり”を、実感しました。それと同じ路線で、よりリアルな恐怖を疑似体験させてくれたのが、こちらの作品。
『ロア〜』では、オカルトや都市伝説といった伝承もの、未解決ミステリーなどを取り扱っていましたが、今回紹介する『ホーンテッド〜』は、より日常的な心霊・怪奇現象、日本でいうところの「ほんとにあった怖い話」の再現ドラマです。アメリカをベースにした本編のほか、ラテンアメリカ編がありますが、今回は後者を見ることに。
構成は、再現ドラマと並行しながら、霊体験をした人が、恋人や友達、家族などに当時の様子を語るスタイル。司会もいなくナレーションも入らず、体験者の語りで進行するので、友達から怖い話を聞くといった、小学生や中学生の頃にした友人同士の怪談話を追体験しているような感覚があり、恐怖がより身近に感じられます。
肝心の内容ですが、やはり全て事実に基づいているのでその告白も説得力があります。 遠く離れたメキシコでも、日本のそれと同じような心霊体験をした人がいるんだなと思うと、やはり霊というのは存在するのか……と妙に納得。出てくるのも、悪霊が憑依した人形だったり、成仏できない子どもの幽霊だったり、かなり似ている。
ただ、ちょっと後味の悪さはぬぐえません。話のほとんどが、最終的な解決ができず「今も続いています」で終わるのですよね。それが最大のゾクッとポイントなのかもしれません。なお、一つの物語が30分ぐらいで観やすいのもポイントです。
【ホラー初心者が勝手に採点!】
背筋ゾクッと度 ★★☆☆☆
グロテスク度 ★★☆☆☆
心霊・幽霊度 ★★★☆☆
日常に起こる恐怖度 ★★★★★
STORY
超常現象や心霊現象の体験者が、その恐怖体験を再現ドラマとともに振り返る。事実に基づいたリアルな話に、戦慄が走る。
【海外ドラマ ナビゲーター】
エディターR
一日の終わりを、ワインとショコラとドラマで締めくくるのが愉悦のとき。“SATC”よりゴシップガール派。映像美と緻密な脚本ものが好物。最近は動画配信サービスのオリジナル作品のチェックに余念がない。作品でいうと、Netflix『ザ・クラウン』、Apple TV+ 『ザ・モーニングショー』などがお気に入り。ドラマに出てきた名台詞をコツコツとしたためていて、いつかどこかでアウトプットするのがささやかな目標。