紹介するのは、これからますます盛り上がること間違いなしのSFドラマ『アンブレラ・アカデミー』 、スペイン発サスペンスドラマ『ペーパー・ハウス』、 Netflixを代表するオリジナル作品として配信ドラマ界を牽引しファイナルシーズンを迎えた『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の3作品。いずれも、SNSやレビューサイトで話題なのはもちろん、エミー賞ほか数々の賞レースにノミネート&受賞歴のある実力派です!
SFタイムトラベルの傑作が誕生! 異次元バトルから目が離せない/『アンブレラ・アカデミー』シーズン2
2019年にシーズン1が公開された、Netflixオリジナル作品。先日授賞式が開催された、2021年度エミー賞にて、衣装賞(ファンタジー部門)、音響編集賞(コメディ/ドラマ・シリーズ部門)、撮影賞、視覚効果賞にノミネートされただけあって、映画さながらのダイナミックさ、おしゃれでセンスのある華やかな映像で見応えたっぷりです。
スーパーパワーを持った7人の兄弟姉妹による異次元バトルと、設定や世界観はベタではありますが、今までにない新感覚のヒーローものとして、観はじめると止まらないのがこの作品の面白さです。特に、シーズン2が圧倒的に面白い。シーズン1で時間をかけて(ちょっぴりダレつつ)、兄弟姉妹の相関関係、各人のキャラを描いてきたのが、意味をなしてくる感じ。失速なくテンポ良く進むのであっという間に見終えてします。ひとつのシーズンをプロローグや前日譚にあてる贅沢さや緩急が、数シーズン続く海外ドラマシリーズならではの醍醐味ですね。おかげで、登場人物に肩入れしてしまいます。
シーズン2の舞台は1960年代。アメリカ本土でソ連と戦争になり世界が滅亡へと向かうのを阻止すべく、動き出すアカデミーのメンバー。実際のケネディ大統領暗殺事件とリンクしながら進む設定が斬新。と書くと、割とヘビーな話なのですが、全体的にテンションが軽い(笑)。よくいうとスマート。ユーモアもあるそのお気楽さが心理負担を減らしてくれるのですが、一方、ちょっとしたボタンの掛け違いで歴史が動くことを教えてくれているよう。今の時代になぞらえ、はっとする場面もありました。ちなみに、登場人物の服装や髪形が、シーズン1と変わり、きちんと60年代スタイルに変化しているのも見所です。
ドラマファンの友人たちに聞き込み調査をしたところ、テレポテーション能力を持つ主人公の5号(ナンバーファイブ)の人気がやはり高い。5号の見た目は13歳、中身は58歳。演じるエイダン・ギャラガーは現在16歳と、年齢設定も時空を超えています(笑)。この設定、何かに似ている……。そう、『名探偵コナン』です! “見た目は子供、頭脳は大人”のコナンは推理で問題解決しますが、“見た目は子供、中身は暗殺者”の5号はバトルで解決します(笑)。そのギャップに萌える人が多いような気がします。個人的には、自在にナイフをあやつるディエゴが推し。強いけど優しい一面もある、ツンデレ感、ダークヒーロー感がたまりません。
作品の企画・製作を担当するスティーブ・ブラックマンが自身のインスタグラムで、シーズン3の撮影が終了したとの内容を更新。日本での配信が待ち遠しいですね! YouTubeのNetflix公式チャンネルでは、VFXアーティストのエヴェレット・バレル解説による、VFXメイキング映像が公開されているので、そちらもお見逃し無く!
Netflixシリーズ『アンブレラ・アカデミー』シーズン1~2独占配信中
STORY
世界中で、妊娠していない43人の女性が同時に出産。実業家のレジナルド・ハーグリーブズは、その中から7人を養子として引き取り、アンブレラ・アカデミーを創設。シーズン1で散り散りなった兄弟姉妹が、人類を襲う大きな危機を前に、再び結集する。
ハラハラドキドキがとまらず、イッキ見確定! スペイン発ドラマの勢いに圧倒される/『ペーパー・ハウス』シーズン5
こちらで紹介した『ケーブル・ガールズ』しかり、スペイン発Netflixオリジナルドラマシリーズが話題です。なかでも、2017年に放送開始され、世界的大ヒットをとばしているのが、こちらの作品。第46回国際エミー賞では最優秀ドラマ・シリーズを受賞するなど、専門家からも高い評価を得ています。
トーキョー、ベルリンなど、世界の都市名をメンバーのコードネームにつけた強盗団が、スペインの王立造幣局を襲うというビッグスケールな作戦を企てるのが物語のはじまり。強盗はもちろん犯罪なのですが、それに至る経緯や社会情勢などへの問題提起も盛り込まれ、また、強盗団の仲間同士の確執などが加わり一筋縄ではいきません。やってることは大きいのに、それを企む人たちは目の前の人間関係でもがいている。強盗集団のメンバー個々の紆余曲折が物語に奥行きを出す“隠れ旨み成分”となっているといいますか、惹きつけるものがあります。また、それらの見せ方も巧みで、とにかく続きが気になり、再生ボタンがとまりません。
今回のおすすめとしてピックアップした、『オレンジ〜』しかり、『アンブレラ〜』しかり、登場人物多めの作品は、各キャラの立ち位置とキャラがしっかりしていることがカギだと思うのですが、今作品もその点は抜かりなし。なかでもトーキョー役のウルスラ・コルベロにうっとり(特にアクションシーン)。強さが同居する美しさ、ときに見せる憂いを帯びた表情に惹きつけられます。スペインではファッションアイコンのひとりで、2018年にはブルガリ「Fiorever」のアンバサダーにも抜擢されましたね。と、私はウルスラがご贔屓キャラですが、シーズン5では……(以下、ネタバレのため省略)。ほかのメンバーもそれぞれに個性的で、一人ずつその魅力についてプレゼンしたいほど。『ペーパー・ハウス』のオフ会を探して、ファンのみなさんと強盗メンバーについてああだこうだと語り合いたい衝動に駆られています。
配信ドラマのパイオニア的作品が、ついに完結!/『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』シーズン7
シーズン1の放送が、2013年。Netflixオリジナルの金字塔的作品が、約7年のときを経て、ついにファイナルを迎えました。歴代のゴールデングローブ賞、エミー賞でノミネートおよび受賞歴多数の実力派作品。私が観はじめたのは、担当した特集「数秘術 × 診断でわかる、開運シネマ&ドラマ」で、紹介したのがきっかけです。
政治、経済、人種問題、宗教、etc. アメリカが抱える様々な問題を物語に落とし込み、視聴者に問題提起しつつもエンタテイメント作品として仕上げていて、配信ドラマのクオリティの底上げの一翼を担ったのではと思います。シーズン7では「移民問題」や「MeToo」運動にクローズアップ。ニュースになっている社会問題をタイムリーに扱う機動力は目を見張るものがあります。
LGBTQなど社会問題も早くから取り上げています。「正解」がない問題なだけに、ときに解決の糸口が不可抗力的に閉ざされるなか、それでもポジティブに立ち上がる主人公らの姿に何度も勇気をもらいました。
この作品の魅力のひとつが、登場人物の多さとその個性。外見・出自・性格が様々で、アメリカ社会を表しているかのようです。多くのキャラが出たり入ったりするのに主人公の存在感は盤石、各キャラの相関関係もしっかりしているのも特筆もの。みな同じ色の囚人服をきているのに、「えっと、あの人誰だっけ?」となることがほぼないのがすごい。
シーズン7では、主人公パイパーが出所してからの話と塀の中の話が交差します。ファイナルシーズンとあって、作品を盛り上げてきた囚人たちが総出演するのですが、ここまでの道のりが思い出され感無量。みなの幸せを願いそして影から見守りたいと、(勝手に)脚長おじさんになった気持ちでした。この愛着と併走感は、長期ドラマ・リリーズだからこそ得られるものだと思います。
STORY
保護観察となり刑務所を出所したパイパーだが、塀の外の環境になかなか馴染めずにいる。一方、塀の中の「妻」アレックスは、看守たちの違法なビジネスに巻き込まれ、さらにオハイオの刑務所に移送されることになり……。
【海外ドラマ ナビゲーター】
エディターR
一日の終わりを、ワインとショコラとドラマで締めくくるのが愉悦のとき。“SATC”よりゴシップガール派。映像美と緻密な脚本ものが好物。最近は動画配信サービスのオリジナル作品のチェックに余念がない。作品でいうと、Netflix『ザ・クラウン』、Apple TV+ 『ザ・モーニングショー』などがお気に入り。ドラマに出てきた名台詞をコツコツとしたためていて、いつかどこかでアウトプットするのがささやかな目標。