今回、イッキ見作品としてレコメンドしたいのは、10月後半にシーズン3が公開されますます勢いの増すNetflixオリジナルシリーズ、ペン・バッジリー主演の『YOU ー君がすべてー』、ディズニープラスのスターで独占配信が開始され話題のセレーナ・ゴメス主演の『マーダーズ・イン・ビルディング』、2021年度エミー賞で作品賞を含む三冠を達成したケイト・ウィンスレット主演の『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』の3作品。どれも続きが気になり再生がとまらない傑作。年末年始にむけて、“イッキ見の沼”にはまってみてはいかがでしょうか。
サイコパスな夫婦の行動から目が離せない!/『YOU ー君がすべてー』
初代『ゴシップガール』で、ダン・ハンフリーを演じたペン・バッジリーがサイコパスなストーカーに扮する、Netflixオリジナルドラマシリーズ。海外ドラマのトレンドを知りたいときに世界各国視聴ランキングをリサーチするのですが、シーズン3の配信が開始された10月中旬頃は、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの各国で連日首位を独占していた人気作品です。
予想の斜め上をいくストーリー、展開もアップテンポでスピーディ。重層的ながらコメディ要素も含み、続きが気になり再生ボタンがとまりません。シーズン3まで、主人公のブレることなく加速するサイコパスっぷりを観ているうちに、どこまでエスカレートするんだ?と、だんだん中毒性が出てきます(笑)。
人がよさそうな外面とは裏腹に、“運命の女性”だと感じた相手をストーキング、巧妙に近付き邪魔する人はあっさり始末。自省しつつも、ひとりよがりな理屈や理由を見つけてすぐ立ち直る。そのくせ、手に入れた“運命の女性”とかみ合わなければ絶望して殺して、次の新しい“運命の女性”になびく……の繰り返し。
そして、類は友を呼ぶといいますが、サイコな主人公は、その上をいくサイコな“運命の女性”と惹かれあい、結婚し子どもも生まれ、家庭を持つことに。サイコな夫 VS サイコな妻の、愛とバトルの話が、シーズン3となります。
とにもかくにも、主人公ジョーを演じたペンが適役過ぎて。『ゴシップガール』を観た人ならわかると思いますが、決して王道の“モテるタイプ”ではないダンが、なぜか好きになった女性といい関係になってを繰り返していたのに「???」が浮かんだ人も多かったのではないでしょうか。そのペンが纏う、「放っておけない」キャラのムードがこのドラマでも本領発揮。一見いい人そうで、こじらせまくった内面を秘めている人物を演じさせたら、右に出る人はいないのでは?と思えます。レビューサイトなどでは、“サイコ・ハンフリー”なんて造語も出てきたほど(笑)。
主人公ジョーの独白がナレーション代わり。サイコパス視点で話が進むのが斬新です。その独白は、ニューヨークの書店で働いていた主人公らしく、哲学的で、詩的で、論理的で、思わず同情しそうになることも。でも一歩ひいて観ると、ご都合主義で自分を正当化するこの思考回路こそが、サイコパスなのか!と納得。ジョーほど極端ではないにしろ、人は考え方次第では、誰もがサイコパスのようになる可能性があるという警鐘にも思えました。
現在はシーズン1〜3が配信中。一番のおすすめはシーズン1から観ることですが、巧妙にリンクしているシーズン2と3はぜひセットで間髪あけずに観て欲しい。
すでに、シーズン4の配信も決定している本作。きっと予想を超えた展開が繰り広げられ、またイッキ見してしまうのだと思います。
セレーナ・ゴメスが、極上コメディをひっさげてカムバック!/『マーダーズ・イン・ビルディング』
2021年にリニューアル、パワーアップして話題のディズニープラス。「ディズニー」の映画やアニメのほか、「ピクサー」「マーベル」「スター」などの豊富なチャネルの作品が楽しめるなか、10月27日より独占配信が開始され、話題になっているのがこちらのミステリー・コメディ。
見所はなんといっても、8年ぶりのドラマ出演となるセレーナ・ゴメス。米国コメディ界の大御所であるスティーブ・マーティンとマーティン・ショートとのふたりとセレーナがトリオを組むのですが、「あ、後世に語り継がれるトリオが誕生したかも」と思わせる、相性のよさを感じました。今後は、おじさん×ミレニアム世代ないしZ世代の掛け合わせがトレンド入りするかも!? ちなみに、私はセレーナの不機嫌そうな顔、シニカルな演技が好物なのですが、それがしっかり活かされていて大満足(笑)。
ミステリーとして謎解きも楽しめるし、不器用ながらハートフルで、ユーモアあふれる、3人の掛け合いがとにかく最高! お互いのバックグランドを知るにつれホロリもありながら、観ているうちになんだか元気が出てくるドラマ。オープニングのグラフィック、アッパーウェスとの街並みや行き交う人のファッション、映像もおしゃれ。ニューヨークらしい空気感に惹かれ、今すぐにでも行きたくなってしまいます。
見落とし厳禁なのが、スティングのカメオ出演! 世代的にスーパースターを知らないセレーナ扮するメイベルが「U2の人?」と問いかけるのには笑ってしまいました。
1話約30分という尺も軽やかで◎。ごはんを食べながら、お風呂に入りながら、スキンケアしながらと、“ながら見”するのにちょうどよく、あっという間にイッキ見してしまいます。
早くも、第79回ゴールデングローブ賞に、作品賞ミュージカル・コメディ部門、主演男優賞ミュージカル・コメディ部門にスティーブ・マーティン&マーティン・ショートが Wノミネート。すでにシーズン2の制作も決定していて、カーラ・デルヴィーニュが出演するのだとか! プライベートでも一緒にいるところを目撃されているセレーナとカーラ。カーラの個性と セレーナたち謎解きトリオがどんな掛け合いを繰り広げるのかが楽しみ! ますます、目が離せません。
2021 20th Television 『マーダーズ・イン・ビルディング』ディズニープラスのスターで独占配信中
STORY
ニューヨークの高級アパートの住人で実録犯罪マニアの、チャールズ、オリバー、メイベルの異色のトリオが、同アパート内で起きた死亡事件の謎を解き明かすため奮闘。推理が進むにつれ、事件に巻き込まれ、次第には自分たちの中に犯人がいるかもという疑念がわき……!?
おかわりでイッキ見してしまった、私的2021ベスト作品/『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』
ここ最近、おすすめの海外ドラマを聞かれたとき、迷いなく筆頭にあげているのがこちらの作品。エミー賞16部門ノミネート、リミテッドシリーズ/テレビムービー部門にて、主演女優賞、助演女優賞、助演男優賞の三冠を受賞した超・傑作『メア・オブ・イーストタウン』です。
ただただひれ伏してしまう、主人公メアを演じたケイト・ウィンスレットの役作りに対するプロ根性、迫真の演技、感動ポイントなどは、エミー賞特集のこちらの記事で紹介させていただきましたので、ぜひ一読を!
久しぶりに徹夜をしてノンストップで観てしまった当作品。観てレビューを書いて、まだなお、余韻がおさまらず……。おかわり視聴したところ、先の展開も知っているのに懲りずにまたイッキ見。
初見のときは、犯人捜しや謎解きといった「この先どうなるの?」で再生がとまりませんでしたが、2回目となるとそれぞれの登場人物の心理面に焦点が移り、「だから、そうしたんだ……」と、よりストーリーを多角的に楽しめました。
主人公メアの娘であるシボーン、メアを支える作家のリチャードも愛しいのですが、おかわり視聴で個人的“主人公”だったのが、ジュリアンヌ・ニコルソン演じるメアの友人ローリー。ネタバレになるので多くは語れませんが、ローリーの本当の役どころが明かされてくるのは物語の終盤。初見のときはキーパーソンだということに、まったく気付かなかったんですよね。でも、結末を知りながら二巡目で観ると、表情やしぐさで終盤の展開への伏線が張られていたのです。助演女優賞を獲得したのも納得の圧巻の演技です。
他にも観なくてはいけない配信ドラマがたくさんあり、しかも今季は、大河&朝ドラが大当たりで。再放送枠も、歴代の傑作が勢揃いと“可処分時間”がほぼないのに(完全にこちらの都合)、再生が止まらず2回も観てしまった本作は、心から推せる傑作です。まずは、後ろに大事な約束や予定がないことを確認して、第1話をチェックしてください(きっと再生が止まらないから)。
STORY
ペンシルバニア州郊外の田舎町イーストタウンで、まだ幼いシングルマザーの少女の遺体が見つかった。刑事メア・シーアンは事件の捜査を進めるも難航。少女を取り巻く人々の関係性を調べるうちに、事件は思わぬ展開を見せはじめ……。
【海外ドラマ ナビゲーター】
エディターR
一日の終わりを、ワインとショコラとドラマで締めくくるのが愉悦のとき。“SATC”よりゴシップガール派。映像美と緻密な脚本ものが好物。最近は動画配信サービスのオリジナル作品のチェックに余念がない。作品でいうと、Netflix『ザ・クラウン』、Apple TV+ 『ザ・モーニングショー』などがお気に入り。ドラマに出てきた名台詞をコツコツとしたためていて、いつかどこかでアウトプットするのがささやかな目標。