配信してから瞬時に話題となり、今や配信地域83ヶ国すべてにおいてNetflix視聴ランキング１位を記録した『イカゲーム』や、昨今の韓国ドラマのジャンルにおいては珍しく“ロマンス”のみのテーマで勝負し、見事高視聴率を叩き出している『海街チャチャチャ』。さらに、後世に引き継がれていくであろう名作&大人気シリーズの『賢い医師生活』まで。Netflix配信の韓ドラはもはや見逃し厳禁!?と思ってしまうほど、話題作が目白押し。今回はそんなNetflix配信の最新韓ドラ４作品をご紹介！
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班／エディターK
母の影響により第1次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界にどっぷり浸かり、気付けば韓流ドラマ歴18年。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。永遠の推しは俳優ソン・ジュンギ。若手女優&俳優の発掘が趣味の領域に。
イカゲーム／コン・ユにイ・ビョンホンまで！ 名だたるスターが大集結
正直こういったデスゲームやグロテスクな演出が多い作品は大の苦手。なんですが、家族を道連れに（笑）、自宅で叫びまくりながらもなんとか鑑賞。続きが気になるというより、モヤモヤした思いを抱えたままじゃ寝れん！という一種のハイ状態に陥りまして、気付けば配信からわずか1日でコンプリート。
貧富の差をテーマに忍ばせる韓国ドラマは多いですが、本作も始まりはそこ。あらゆる理由でお金に困っている人生崖っぷち状態の456人の元にとある招待状が届きます。それは子供の頃に遊んだゲームを基にした“命懸け”のサバイバルゲーム。全６回のゲームに見事勝利した者には、なんと賞金456億ウォン（日本円で約45億円）が贈呈されると。普通に考えたら怪しすぎますが、人の理性を破壊するのに十分な金額。その甘い匂いに誘われて心身ともに壊れていく人たちと、ゲームに負けて跡形もなく消えていく人たち。１回目のゲーム「だるまさんが転んだ」からすでに残酷すぎる描写も多く、一概におすすめとは言い難い……けれど、人間の欲望がこれでもかというほど映し出されていて、“既存”を上書きした韓国ドラマだと個人的には感じます。
主人公は優しい性格ながらお金にだらしなく、母親のすねをかじって生きるソン・ギフン。離婚した妻との間に授かった最愛の娘を大切に思う気持ちは伝わるものの、いつもどこか空回り。多額の借金に加え、病気が判明した母の治療費のためにゲームへの参加を決意。そんなギフンは、幼馴染で後輩のチョ・サンウとゲームで再会を果たします。ソウル大学出身の秀才で証券会社に勤めていたサンウがなぜ!?とギフンも困惑しますが、実は横領がばれて多額の借金を背負う身。家族のために大金を必要とする脱北者のカン・セビョク（演じたチョン・ホヨンは現時点でInstagramのフォロワー数1200万人アップ!!）や、病に冒されて生い先が短い老人、無給労働を強いられる外国人労働者など、参加者の年齢も性別も、参加理由もバラバラ。残酷なのはこのゲームなのか、それとも現実世界なのか。信じるべきは何なのか、誰なのか。深く考えさせられるシーンも多い。想像を絶する“イカゲーム”の終着点。ぜひ全貌は本編をご覧ください。（エディターK）
D.P. －脱走兵追跡官－／閉鎖された社会で過ごす“兵役”義務とは
現在も北朝鮮との緊張関係が続く韓国。そのため、20〜28歳の成人男子全てに、約2年弱という兵役の義務が課せられているのは周知の通りですね（兵役免除者ももちろんいますが、全体の５％ほどとか）。自由もプライバシーもなく、厳しい規律のもと閉鎖された社会で過ごす約２年弱という歳月。それがどんなに過酷なものなのか、日本に暮らす私たちには想像することもなかなか難しく……。で、本作は、そんな軍隊を舞台としたお話です。
D.P.とは、軍を脱走した兵士を追跡して逮捕する特殊部隊のこと。脚本のキム・ボトンは実際にD.P.経験のある人だそうで、それゆえに軍が抱える問題をかなり赤裸々に描いていると韓国でも結構な話題。主人公となるのは新人兵士のアン・ジュンホ二等兵（チョン・ヘイン）。上司に見込まれD.P.に任命されるのですが、最初の任務で勝手わからず脱走兵を自殺させてしまうという大失態。失意に沈むジュンホですが、新たにバディを組んだ先輩兵士のハン・ホヨル上等兵（ク・ギョファン）とともに再びD.P.として脱走兵を追いかけるという展開。実はドラマは2014年という想定なのですが、この年は、実際に執拗なイジメにあった若い兵士が同僚兵士5人を射殺して脱走するという事件が起こった年。ドラマでも、その事件を彷彿とさせるシーンもあるのですが、ジュンホとホヨルがD.P.として追跡していくなかで、そうした脱走兵の抱える重苦しい現実がひとつひとつ解き明かされていき、韓国の軍隊が抱える深い暗部が浮き彫りにされていくという。それが、ジュンホという新人兵士のニュートラルな視線から綴られているのもミソで、ジュンホが、その軍の現実をどう感じ、どう思っていくのか。その思いはそのまま見ている私たちの思いと重なっていくという。
そんな重厚な社会派でありながら、追跡サスペンスとして痛快に魅せるエンタメとしての技量も素晴らしく、その要素のひとつが、ジュンホとホヨルの絶妙なバディぶり。心に傷を抱える真面目で硬派のジュンホと、飄々として軽妙かつ人情味あるホヨル。その絶品ケミぶりからも目が離せません。（さすらいのライター山崎）
海街チャチャチャ／美しい街・コンジンへの脳内トリップを堪能
シン・ミナ×キム・ソンホ。このえくぼカップルのケミが最高です。ふたりの演技が自然すぎて（もはや素だと錯覚中）、本物のカップルにしか見えません。昨今の韓国ドラマには珍しく、テーマは“ロマコメ”オンリー。奇想天外なことも起きず、マクチャンな展開もなし。なのに視聴率は回を追うごとにうなぎ上り。ほのぼのとした日常の中にこそ、とびきりのロマンスが潜んでいるのだと教えてくれる作品。
舞台は自然豊かな架空の地方都市・コンジン。そのコンジン市にソウル在住の歯科医ユン・ヘジン（シン・ミナ）が開業のため、友人で歯科衛生士のピョ・ミソンとともに移住することに。そこで出会うのが通称ホン班長こそホン・ドゥシク（キム・ソンホ）です。一体何者？ばりにあらゆる分野の資格を持ち、なんとソウル大学出身。超エリートながら故郷であるコンジンの便利屋として自由気ままな生活を送っている不思議すぎる人物。一方ヘジンは他人との必要以上の馴れ合いを嫌うクールな性格に加え、99歳まで人生プランを立てている計画的な人間。まあご想像の通り、対照的なふたりが最初はバッティングしつつのちに……♡という王道の展開です。
ただロマコメにありがちな「この人たち、いつ、お互いのどこを好きになったの？」という疑問は浮上しません。出会いからお互いを知って距離を縮めていく期間、それによる気持ちの揺れ動きをしっかり描いてくれている。だからこそホン班長&ヘジンを筆頭に、コンジン市の人たち全員が愛おしく思えてしまう。まるで隣の家の話のような距離感と言いますか、自分もコンジン市の一員という気分。先日配信された11話〜12話はホン班長&ヘジンのデレデレっぷりが最高潮まで来ておりまして、観ているこちらまで内なるフェロモンが活性化されたような気が。錯覚ですかね？
さらに本作で注目したいのがエンディング。本編もかなり繊細に描かれていますが、このエンディングが本作の魅力を２倍も３倍も底上げしている要因だと思っております。ああ、この人はこの時こういう感情だったんだとか、こういう経緯があったんだとか。視聴者に丁寧に教えてくれる演出が粋！！（エディターK）
賢い医師生活／細胞ひとつひとつを満たすように味わいたい
今、重症のロスに陥っております。毎週木曜日の深夜、この配信をどれほど心待ちにしていたか。澱のようにたまる１週間の心の汚れをきれいに洗い流しつつ、無垢な気持ちを満タンに次なる１週間に臨む……。『賢い医師生活』シリーズは、私のもはや殿堂入りの名作。
以前、この記事でシーズン１をご紹介しましたが、わかりやすいスター俳優もいなければ、とびきりのイケメン俳優もいない……、サスペンスもなければ、ドロドロ要素も一切ない……。ソウル大医学部出身の同級生医師5人を主人公に、彼らと彼らを取り巻く患者やスタッフたちのさまざまな日常のエピソードをじんわりと紡ぎ出していくという、そう、一見地味なスタイルは、声を大にして「観てね！」と叫んでも、１話で辞めちゃう人もいたりして……。でも、このシーズン２です。配信されるたびにNetflix総合TOP10の上位を常にキープ。やっぱり、名作には名作の底力があるんだなぁと改めて感慨に浸ったという次第。
シーズン１では、小児科のジョンウォンとレジデントのギョウルが結ばれたラストで終わりましたが、ほかはどうなっちゃうのと思ったその後がシーズン２では描かれています。友人のままでいたいという神経外科のソンファと彼女を想う肝胆膵外科のイクジュン。彼女（イクジュンの妹イクスン）がイギリス留学してしまった胸部外科のジュンワン。何度も告白するレジデントのミナをいつも玉砕させちゃう産婦人科のソッキョン。それぞれの恋の行方もじんわりホットに魅せてくれますが、もちろん、恋の見どころだけで終わらないのが『賢い医師生活』の“賢い〜”たる所以。子どもの心臓移植を待ち続ける母親のお話。親友同士の生体肝移植にまつわるお話。新生児集中治療室で24時間小さな命を見守り続ける看護師たちのお話。などなどなどなど、日常茶飯に起こる病院でのエピソードの数々はどれもこれも胸に深くじんじん響くものばかり。まだ、観ていない人は、ぜひ。一気観もいいですが、できれば、全身すべての細胞ひとつひとつを満たすようにじっくりと味わってほしい。そんな名作です。（さすらいのライター山崎）
