泣いても、泣いても、とめどなく泣けてしまう、そんな良作の韓国ドラマ&映画をご存じですか? “私”と心優しいおじさんとの何気ない日常に何度涙したか分からない『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』や、母娘、親子、家族の尊い絆を前に涙腺崩壊するほど泣ける『ハイバイ、ママ!』など、何度観ても涙が頬をつたう……そんな涙なしには語れない名作韓国ドラマ&映画をご紹介します。
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班/エディターK
母の影響により、第1次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界へ足を踏み入れる。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。永遠の推しは俳優ソン・ジュンギ。若手女優&俳優の発掘が趣味の領域に。
マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~/真の優しさとは?を何度も問う
現代に生きるすべての“私”に贈られる最高のソンムル(贈り物)。その箱を開けないまま放っておくなんて、あまりにももったいない……そんな名作です。演出は、あの『ミセン-未生-』『シグナル』を手掛けたキム・ウォンソク監督。『ミセン』の課長が、『シグナル』のジェハン刑事が、そうであったように、主人公のアジョシことパク・ドンフン(イ・ソンギュン)の在り様は、心のどこかに何かしらの“しんどさ”を抱えて生きる私たちの救いであり、そして、希望である……と思うのですが、どうでしょう。
物語の大きな鍵となるのは“盗聴”。仕掛けられるのは、もちろん主人公のおじさんドンフンです。大手建設会社の部長という役どころですが、今は左遷させられ地味な日陰部署で、黙々と働くだけの毎日を送っています。盗聴器を仕掛けたのはその会社の派遣社員として働くイ・ジアン(IU)。誰にも心許さない、いつも他人を拒絶するような強面な態度のジアンですが、実は両親が遺した多額の借金の返済に追われながら、聴覚障害の祖母をひとりで面倒みているという現実を抱えています。
ある偶然から会社の社長ジュニョンが、ドンフンの妻と浮気していることを知ったジアンは、ジュニョンに「1,000万ウォンでドンフンを会社から追い出す」と持ちかけます。そして、ドンフンの携帯に盗聴器を仕掛けるという展開。不倫に差別、相手をいかに蹴落とすかしか頭にない派閥争い、そしてジアンの荒んだ環境と圧倒的な貧困と孤独……。最初の1〜2話は、そのあまりの重苦しさに、心折れてしまう人も多いはずです。そうなったら、ぜひ、ジアンと一緒に盗聴するドンフンの気配に、心を集中させてみてください。その声が、その言葉が、その考え方が、ドラマが進むほどに深く深く心の奥底に沁み入ってくるはずです。そして、少しずつ、本当に少しずつ、でも確実に、固く重く沈んだ心がゆるやかにほどけていくのを感じるはず。手負いの狼のごとく、毛を逆立て構えるジアンが、少しずつ、本当に少しずつ、でも確実に変わっていくその心情と重なるように。優しさは最上の強さである。語り尽くされている言葉ではありますが、ドンフンの在り様は、真の優しさが何であるかを私たちに切々と語りかけます。ハンカチでは足りません。バスタオルを用意して、しっかりと味わい尽くして欲しい全16話です。(さすらいのライター山崎)
ハイバイ、ママ!/大切な人に会いに行きたくなる、そんな作品
観る度にこれでもかと大号泣してしまう名作……。我が子に会えるのを今か今かと待ち侘びている出産間近のユリ(キム・テヒ)と、夫ガンファ(イ・ギュヒョン)は誰が見ても羨む仲の良い円満夫婦。しかし不慮の事故により自分の命を顧みず娘ソウを庇う形で亡くなったユリは、幽霊となってソウとガンファをずっと見守っているという設定。これだけで涙腺崩壊の勢いですが、まだ序の口。ユリがとある奇跡により49日間限定で生まれ変わったのち、物語の真髄が見えてきます。ユリの母ウンスクは韓ドラ界のオモニこと名俳優キム・ミギョン(『ゴー・バック夫婦』も必見)が演じており、母娘、親子、家族、友、それぞれの絆にひたすら泣かされる。
成仏できぬまま2人の側に居続け、見守れる幸せと、触れることもできない歯痒さの狭間で苦しんでいたユリ。失なった5年の間にギュヒョンは元看護師のミンジョンと再婚し、ソウのママに。それを側で終始見てきたって、もうどんな感情だろうと想像するだけで胸が締め付けられる思い……。
ただ最愛のユリを亡くしたギュヒョンの傷も決して癒えていないし、ミンジョンもソウの成長が遅いのは自分のせいではないかと悩み続けていて、ユリの唯一無二の親友ヒョンジョン(安心のヌナ役シン・ドンミ)や、夫でガンファの親友グンサン(濃い演技が虜になるオ・ウィシク)も、夫婦4人で過ごした日々をずっと胸に抱いている。そして誰よりもユリにもう一度会えることを祈る母ウンスク。消化することのできない、娘を亡くした母の気持ち……原稿を書いている今もなお涙が止まりません。ユリが生き返ったあと、大切な人たちと再会を果たしていく過程がまた毎話泣ける。ウンスクとの再会シーンは思い出し泣きするほど。残した者、残された者それぞれの気持ちが丁寧に描かれていて、悪人がいないんです。全員傷ついていて、その事実が痛いほど心に突き刺さる。
さらに特筆すべきは、撮影当時5歳にして完璧な演技を見せたスーパー子役のソ・ウジン。テヒに似ているという理由もあり娘役に抜擢されましたが、彼は絶対に未来の韓流スターになると確信。ユリを「ママ」と呼ぶ瞬間は、喉の奥が痛くなるほど嗚咽。家族や大切な人に会いたくなる、もっと大切にしたくなる、そんな不朽の名作です。(エディターK)
建築学概論/初恋の思い出が胸をかすめる名作
もう、何度リピートしたかわかりません。それほど好き。そして、何度見ても、やっぱり泣いてしまう……甘く切なく、そして、美しい初恋の物語です。映画は、現在と15年前の過去が重なり合いながら進んでいく構成。建築士として働く現在の主人公スンミン(オム・テウン)の前に、ある日、もうひとりの現在の主人公ソヨン(ハン・ガイン)が「家を建てて欲しい」と現れるところから始まります。今は、医師の夫がいるというソヨンですが、建てる場所は、その夫と暮らす住まいではなく、ソヨンの故郷のチェジュ島。ソヨンの依頼に戸惑いながらも、その建築を引き受けるスンミンに、15年前の記憶が鮮明に蘇ってきます。
15年前のスンミン(イ・ジェフン)は建築学科に通う大学1年生。純朴青年スンミンは、「建築学概論」の授業で音楽科のソヨン(ペ・スジ)に出会い一目惚れします。ソヨンはスンミンと同じ町に住んでおり、そのことからふたりは一緒に課題をやることになるのですが、どこにいても周囲の目を引く美しくおしゃれなソヨンに、心躍らせながらも恋愛に不慣れで奥手なスンミンは自分の思いをなかなか伝えることができません。そして、ある小さな誤解からソヨンと疎遠になってしまうのですが……。
さて、ここで質問。あなたの初恋はいつでしたか? それはどんな思い出だったのでしょうか。今となってはどれが初恋か思い出せないほど、私にとっては遠い昔の話ですが、まだ携帯もなかったころ、家の電話の前で好きだったあの人からかかってくる電話を、毎日毎日息を潜めながら待っていたのを思い出します。そんなの自分から掛けろよっつー話ではありますが、それがなかなかできないのが初恋。ドラマは、そんな初恋のもどかしさを初々しく丁寧に描き出しながら、現代のスンミンとソヨンの複雑な心の内を繊細に映し出していきます。韓国には多くの名作恋愛映画がありますが、日本でも大ヒットしたあの『私の頭の中の消しゴム』の興行記録(韓国における)を6年ぶりに塗り替えた名作。今や揺るぎないトップ女優のひとりスジは、この映画の大ヒットで“国民の初恋”と呼ばれるまでになったのはあまりにも有名な話。ラストに流れる90年代のヒット曲「記憶の習作」の切ない調べがいつまでもいつまでも心に残ります。(さすらいのライター山崎)
黄金の私の人生/まさに人生の軌跡は“黄金”
「52話、長いな……」と思いますよね。大丈夫です。母に全力で勧められた私も話数で一瞬怯みました。が、これは見始めたら廃人視聴必至!! 豪華キャストで贈る笑いあり、涙あり、怒りあり、感動ありのヒューマンドラマに、胸が熱くならないわけがなかった……。
ヘソンアパレルの契約社員から必死に正社員を目指している優秀で真面目な姉ジアン(スーパー子役出身シン・ヘソン)と、おっとりした性格で、貧しいながらも家族と幸せに過ごせる現状に満足している妹ジス(ソ・ウンス)は、性格も見た目も正反対の双子の姉妹。精一杯努力しながらも苦労が報われないジアンを見ていると胸が切なくなり、優しくおおらかな性格で周囲を明るく照らすジスを見ていると、心がほっと温かくなる。
ある日ジアンは仕事で運転中に追突事故を起こすのですが、相手はまさかの(視聴者としては慣れた展開)ヘソングループの後継者ドギョン(パク・シフ。5年ぶりのドラマ復帰作!)。多額の修理代を払う払わないのすったもんだはありつつ、財閥と庶民の許されぬ恋に発展していくと、物語は割と従来の韓ドラ!なポイントが多め。しかし、ここにあんぐりな脚本をバシバシ入れ込み、マクチャン的なドロドロ展開に目が離せなくなるんです。
なんと実は25年前に行方不明となったヘソングループの娘が自分であることを母ミジョンに聞かされたジアン。突然のことで大混乱するものの、貧しい家庭で育った苦労が走馬灯のように頭の中を駆け巡り、正社員になる夢も途絶えた今、財閥の娘として生きることを決意。姉が大好きなジスはショックのあまりにジアンを非難し犬猿の仲に。父テスも必死にジアンを引き止めるのだけれど、娘たちが中学生の頃に会社が倒産したことで裕福な暮らしから一転し、苦労をかけたことをずっと気に病んでいるため、これ以上説得することができず……ヘソングループの娘&ドギョンの妹としてのジアンの新しい生活が始まるのですが、それは決して幸せな道ではなく、あとから知る驚愕の事実にジアン&ジス同様にこちらも開いた口が塞がらない。キム・ヘオクやチョン・ホジン、チョン・ノミンなど名俳優たちがガシッと脇を固めているお陰で、主人公たちを取り巻く環境すべてに本気で怒って、本気で泣けてしまう。特にテスと娘のやり取りにはエンドレス涙。自分が願う本当の幸せとは? 家族とは? 終始考えさせられる作品です。(エディターK)
『黄金の私の人生』U-NEXTで配信中! Licensed by KBS Media Ltd.©2017 KBS.All rights reserved/STUDIO DRAGON CORPORATION