以前、Netflix配信作『私の解放日誌』をご紹介しましたが、本作の出演から今まさに韓国で遅咲きの大ブレイクを遂げているのが“ク氏”役こと、ソン・ソック! 元より脇を固める演技派の立ち位置で、『サバイバー: 60日間の大統領』や『D.P.-脱走兵追跡官-』など、数々のドラマにおいて存在感を示してきた彼。そこで今回は、韓ドラ好きなら今絶対に押さえておきたい俳優ソン・ソックの観るべき過去作4選をピックアップ!
ソン・ソックブームの火付け役『私の解放日誌』は以下をチェック!⇩
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班/エディターK
母の影響により、第1次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界へ足を踏み入れる。「寝不足だけど幸せ」を合言葉に、約19年間あらゆるジャンルの韓流ドラマを観続けている。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。永遠の推しは俳優ソン・ジュンギ。若手俳優の発掘が趣味の領域に。
最高の離婚 ~Sweet Love~/日本ドラマのリメイク版でイエルと夫婦役に!
2013年放送の日本の同名傑作ドラマの韓国リメイク版です。離婚したのに別れきれずに同居を続ける元夫婦と、結婚したと思いきや書類上は夫婦ではなかった夫婦のそれぞれの愛をめぐる紆余曲折を描いた物語。坂元節が炸裂する(オリジナル版脚本家は『Mother』や『カルテット』などヒットメーカーとしても知られる坂元裕二)原作の特徴的スタイルだったダイアローグに見せかけたモノローグ率を抑えめに、ちょこちょことオリジナルにはない設定やエッセンスを挟み込んで肉付きよくしているところがいかにも韓国版リメイクらしいといいましょうか。
永山瑛太と尾野真千子が演じた主軸の離婚した元夫婦を演じるのがチャ・テヒョン(役名はソンム)とぺ・ドゥナ(役名はフィル)。神経質で何かと口うるさい元夫と何事も大雑把な元妻というキャラ設定はそのままなのではありますが、自分ルールには神経質な元夫の、人に対して(というか妻に対して)無神経かつ理不尽な部分をかなり抑えて変人度合いを少なくするなど、元妻のフィルが自ら離婚届を出しながら、なかなか元夫から離れられないし、でも、そのまま戻りたくはないし……という葛藤にもよりスムーズに共感できるようになっている印象。
で、ソン・ソックです。彼が演じるのは、オリジナル版で綾野剛が演じたもう一組の夫婦のモテモテ夫(役名はジャンヒョン)。美大の講師で複数の女性と悪びれることなく浮気していて、婚姻届の提出を託されたのに出していなかった(妻は知らず)というナップン(悪い)野郎なのではありますが、なぜか憎めないというか、つい油断して許しちゃうというか、そんなキャラ。だから、めちゃくちゃワルな感じなのに、どこか人懐っこい子犬的要素もあって、かつちょっとミステリアスなソン・ソック(個人的見解です)がハマらないわけがなく。特に後半、妻に拒否られ涙を浮かべてすがるところなんぞは、母性本能にじんじん響いてきちゃったり? 硬派なソン・ソックもいいけれど、こんな軟派な役もいいわあ……なんて感じなのです。オリジナルでは真木よう子が演じた妻は、『私の解放日誌』の長女役だったイエル(役名はユヨン)。そうなんです。『私の〜』の熱烈ペンとしては、なんとも感慨深い組み合わせ。キャラも役どころも全く異なるその差を味わいながら鑑賞するのも一興。(さすらいのライター山崎)
恋愛体質 〜30歳になれば大丈夫/ドキュメンタリーのような雰囲気が心地いい
ク氏の「ヨム・ミジョン!!!!」が頭から離れず、エンドレスリフレイン……はい。未だ『私の解放日誌』ロスです。『最高の離婚』も大好きなのですが、私の勝手に名作韓ドラベスト10に入る『メロが体質(原題)』のソン・ソックもまた最高に憎たらしくて最高に愛らしい演技をしているんですよ……。むしろキャスト全員が名演技炸裂でして、名言をここぞとまでに入れ込む脚本も最高に良い。「邦題に惑わされないで〜!」と声を大にして伝えたいヒューマンドラマであり、不朽の名作です。以前にも本作をご紹介しているので、今回はク氏……ではなくソン・ソック氏メインで、本作の魅力を語らせていただきます。
物語の軸となるのは大学時代からの親友3人組なのですが、ソックはパワハラ全開のCM監督サンス役で登場します。サンスと主に関わるのは、最愛の人と死別し、精神的な病を患うドキュメンタリー監督ウンジョン。演じるのはチョン・ヨビン(『ヴィンチェンツォ』)です。この演技派の共演だけで絵面的に強すぎるのですが、強烈な憎たらしさの奥に隠されたサンスの真心を知ると、もう好きにならざるを得ません!! まさに「ガシッ」と心を鷲掴みにされます。
とはいえ乱雑な喋り方とか、すぐキレるが故にあだ名が雷監督とか、最初は素敵要素ゼロ。でも、暴言でないとスムーズに話せないとか、ハブ茶ばかり飲んでいるとか、実はものすごく子ども好きであだ名は“寄付天使”とか。事実を知る度に切なく愛らしく思える不思議。こういったクセだらけの人物をなんの違和感もなく、あくまで自然体に見せてしまうのがソックマジック!! エキセントリックな役こそソックの担当領域であり、その演技力は一級品です。CM撮影中にブチギレたサンスに鉄槌を下すウンジョンとの初対面シーンはぜひ注目を。ドラマチックな恋物語ではなく、ドキュメンタリーのようなふたりの距離感や、ひとつひとつの会話、表情まで、すべてが自然。いつまでもそのやり取りを噛み締めていたくなるような尊さがあるんです。
さらに愛する人を失うつらさ、想像を絶する苦しみをお涙頂戴目線では決してなく、リアルな日常の中で生きる人の目線で描かれているからこそ、ウンジョンのシーンは特に感情移入が止まらなくなるはずです。(エディターK)
サバイバー: 60日間の大統領/序盤から驚愕の展開で繰り広げられるサスペンス
いきなり、始まりがまず凄まじい。でもって、速攻引き込まれずにはいられない超ド級の面白さなのです、これが。人気の米ドラマシリーズのリメイクなのですが、ドラマが始まった途端に国会議事堂が大爆破で、演説中だった大統領も、閣僚も、出席した議員も全て死亡するというかつてない大惨事に見舞われてしまう衝撃のスタート。この非常事態に国政を守らなければならない青瓦台の大統領スタッフたちは、閣僚のなかで唯一生き残ったムジン(チ・ジニ)を60日間の大統領権限代行に任命するのですが、このムジン、6カ月前に環境省長官に抜擢されたばかりの本業は学者という政治に関しては全くの素人。しかも、大統領の命令でも信念を曲げない超実直かつ超誠実なキャラクター。
この日の朝も、大統領と意見が衝突し、解任されそうになった経緯があり、私利私欲も権力欲も全くもってゼロという絵に描いたような“いい人”なわけです。なのに、軍は北のテロと決めつけてミサイル発射を主張するわ、日本はイージス艦を進めてくるわ、米国も指揮権を渡せと高圧的だわと、緊張極まりない政局に立たされてしまうという。当然、スタッフたちは、何もせずに大人しく私たちの言う通りにしてくれ的スタンス。ソン・ソックが演じるのも、そんな一人。誠実で正しい政治を理想としながら、亡くなった大統領が“いい人”なために政治的に大敗していたのを知るだけに、“いい人”ではなく“勝つ人”を求めている若き行政官ヨンジン役です。
そのため、嘘をつけないしつかないし、妥協もできないししないムジンとことごとく意見が食い違ったりするのですが、最初はそのあまりの実直ぶりに戸惑い、振り回されながらも、次第にムジンに傾倒していくという流れ。役柄的に色気部分はかなり抑え気味ではありますが、“いい人”では勝てないと思っていたヨンジンが究極の“いい人”ムジンに徐々に希望を見出していく時の表情なんぞはやっぱり絶品。それにしても、議事堂爆破の犯人は誰なのか? その目的は何なのか? その謎を解き明かしていくサスペンス的面白さも超ド級なのですが、何度も立たされる政治的窮地におけるムジンの行動と選択は、それ以上に胸熱くなる感動の連続です。真の“いい人”が行う政治の痛快さは、現実が現実なだけに、無条件に酔いしれずにはいられない、と実感です。(さすらいのライター山崎)
D.P. -脱走兵追跡官-/シーズン2も続投決定! 個性光る演技派の旨みが凝縮したドラマ
すでにシーズン2の制作が決定し、今年撮影開始との情報が! 本作は韓国の「兵役義務」と「兵役中の約2年弱の閉鎖された生活」に焦点を当てた社会派ドラマ。実際に兵役が身近なものである韓国の人々は本作に対してさまざまな思いを抱えているかと思いますが、ドラマで見せられた想像を絶する過酷な状況に世界中の人々が度肝を抜かれました。主軸となるのは我らがチョン・ヘインと、旬の俳優ク・ギョファンのD.P.(軍を脱走した兵士を追跡して逮捕する特殊部隊)コンビ。そんなD.P.ふたりの上官役キム・ソンギュンと冷戦を繰り広げるのがソックです。保身と進級がすべてと考える第103歩兵師団憲兵隊長補佐官イム・ジソプ大尉役なのですが、まさに個性派俳優ソックのいい味がふんだんに凝縮されている役どころでして、物語にピリリとした緊張感と、謎のコミカルさを演出してくれるのですよ……。
極悪非道というわけでもなく、極端に傍若無人というわけでもなく。周囲と円滑なコミュニケーションは取っているのだけれど、保身のために危ない橋は決して渡らず、進級のために上官には媚を売り、ただし部下には有無を言わせないと。妙にリアルなのですよね。「こういう人いるよね……」と誰もが共感しそうなキャラクター。この絶妙なラインをお芝居で表現するのは容易ではないはずですが、そこを軽やかに演じてしまうのがソック。『応答せよ』シリーズでお馴染みのソンギュンとの攻防戦も本作の見どころのうちでして、やはり演技派同士の戦い(シーン)は視聴者の心をいい意味でかき乱しますよね。「チュンソン!(敬礼)」と挨拶を交わしながら、互いに心の中は真っ黒。ゾクゾクする瞬間です。ソンギュンがついに声を荒げるシーンも注目を。細かすぎるけれど、この時のソックの“ちょっと”後退りする驚き方と表情があまりにもナチュラルで演技大賞もの(笑)。
ただ終盤に向けてソックの“選択”が脱走兵の未来を左右するシーンが訪れます。やっと理解し合えるようになったソンギュンと、責任転嫁の天才・大将の間に立たされるなか、どのような選択をするのか。6話は特に心を打たれますし、回を重ねるごとにソックを応援して好きになっていることに気づくはず。シーズン2も続投だけに、物語の行方はもちろん、次はどんな演技が見られるのか楽しみでなりません。(エディターK)