世界中でシンドロームを巻き起こしている『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』に加え、医療×法廷×復讐劇の韓ドラの人気ジャンルを詰め込んだ『ドクター弁護士』、韓国初の“軍法廷”を題材にした注目作であり、悪役で大ブレイクを遂げたアン・ボヒョン初主演作の『軍検事ドーベルマン』など、近年新たな「法廷」ドラマが続々と誕生。そこで今回は、脚本の切り口も、演出の見せ方も、従来とは異なる良作の最新法廷ドラマ4選をピックアップ!
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班/エディターK
母の影響により、第1次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界へ足を踏み入れる。「寝不足だけど幸せ」を合言葉に、約19年間あらゆるジャンルの韓流ドラマを観続けている。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。永遠の推しは俳優ソン・ジュンギ。若手俳優の発掘が趣味の領域に。
ウ・ヨンウ弁護士は天才肌/一度観たら何度でも味わいたくなる“ヨンウ”の世界
法廷ドラマというと権力を巡るドロドロの攻防戦を思い浮かべることが多いのですが、もちろん、それとは全然違います。扱う案件はどれも大事件ではなく、身近な社会問題で普通にして切実なもの。普通でないのは、そう、主人公のウ・ヨンウ(パク・ウンビン)です。韓国初の自閉スペクトラム症の弁護士なのですが、わずか5歳にして刑法をすべて覚え、そソウル大学を主席で卒業するという普通でない経歴。しかも、面白いのは自閉スペクトラム症ならではの世間のしがらみや偏見、感情的な忖度のない独特の視点から、膨大な法律の中に埋もれている落とし穴を天才的閃きで導き出し、真の解決へと繋げていくところ。例えば、最初の案件。
認知症の夫を介護してきたハルモニが、激昂する夫をアイロンで殴ったことから怪我を負わせてしまった事件。検察は殺人未遂で起訴するのですが、通常、弁護側としては執行猶予をとって簡単に終わる案件なわけです。なので、シニア弁護士ミョンソク(カン・ギヨン)は、新人のヨンウに弁護を担当させてみるわけですね。彼女に弁護士としての適応能力があるかどうかを試すつもりで。ところがです。ヨンウは殺人罪としては無罪で臨むと言い出すのです。新人としてあり得ないことですが、そこがウ・ヨンウのウ・ヨンウたる所以で、ヨンウは見過ごされていた民法的な落とし穴に気づくわけです。殺人未遂罪が認められれば、夫の財産を相続できない、つまり夫が死んだ場合、途端に生活が困窮してしまうハルモニの現実を。しかも、ヨンウはハルモニが直前に夫にとった小さな行動も見逃しません。それは殺したい人ではなく愛する人にこそする行為ではないかと。ドラマは、そうした一つ一つの小さな小さな盲点を誠実に丁寧に細やかに描き出していくわけで、そこが通常の法廷ものとは一線を画すところ。その一つ一つが痛快でかつジーンと胸熱く。だから、何度でも泣けちゃうわけなのです。
主人公のウ・ヨンウの魅力は言わずもがなですが(解決に導いた後のドヤ顔も可愛い)、キャラ立ち豊かな脇役陣も素晴らしく、ヨンウを疎ましく思う同僚のミヌ(チュ・ジョンヒョク)や、ちょっとお間抜けな理不尽先輩弁護士(チェ・テフン)さえも愛おしく見えるマジック。まだ、観ていない人はぜひ。日々の疲れが癒やされること必至です。(さすらいのライター山崎)
軍検事ドーベルマン/韓国の“軍法廷”を題材に、新たなメッセージを世に放つ!
ついに来ました。待望のアン・ボヒョン主演作。『彼女の私生活』の恋のスーパーサブっぷりに心突き動かされ、『梨泰院クラス』のTHEヒール役に圧倒させられ、『ユミの細胞たち』で完全にノックアウトさせられた、あのボヒョンです。韓ドラ班も満場一致で、いま最も旬で愛しい俳優であります。こちらで熱く語っているように通称『ユミ』はぜひとも、ぜひとも、いますぐに観てほしい名作でありますが、念願の主演作『軍検事ドーベルマン』がついに日本初放送となりました! わーい! これもまた“軍検事”という新たなフィールドで繰り広げられる最新法廷ドラマであるため、ボヒョン好きも法廷好きもアクション好きも見逃せないよ!というわけなのです。
『D.P. −脱走兵追跡官−』も世の中に強烈なメッセージを残していますが、これまで韓国で暗黙の了解的にタブーとされてきた「軍法廷」を題材に描かれた本作。韓ドラにおいて初めて軍検事を扱う法廷ドラマの誕生とあって、放送前からかなり注目を集めていた作品です。ボヒョンが演じるのは、お金のために軍検事となった通称ドーベルマンことド・べマン。中卒ながら独学で司法試験に合格した努力家にもかかわらず、経歴で判断されなかなか弁護士事務所に就職できない日々を過ごしていたところ、韓国屈指の法律事務所「ローアンドワン」の代表弁護人ヨン・ムング(『愛の不時着』の耳野郎役ことキム・ヨンミン!)と出会い、軍検事になることに。
これもまあムングの策略なんですが、「5年務めたらローアンドワンに入れてやる」という口約束のもと、ベマンは嫌々ながらも軍検事となるわけです。で、最初こそお金しか頭になかったベマンが復讐のために軍検事となったチャ・ウイン(チョ・ボア)との出会いで、知られざる事実を突きつけられることに。実はベマンは10歳の頃に軍人だった両親を亡くしているのです、事故で。あれ、これってもしや……?と気になり出したらもう一気見。ウインと共闘しながら真っ黒に腐敗した軍内部に立ち向かっていく姿、検事として法廷に立つ凛々しい姿、控えめに言ってたまりません。ウインのアクションシーンも痺れます! 復讐×軍法廷の新たな世界観にハラハラドキドキさせられ、ベマンとウインのラブラインにキュンキュンさせられること請け合い。(エディターK)
ドクター弁護士/スピーディな展開から目が離せない話題の復讐ドラマ
瞳の奥底から匂わせるその切なさ……哀愁漂う演技をさせたら右に出る者なし。そう、ソ・ジソブです。4年ぶりのカムバックドラマは、なんと医者と弁護士の二刀流で(原題は『ドクターロイヤー』)、富と権力が渦巻く巨大組織に立ち向かう復讐劇かつ、韓ドラ人気ジャンルの“法廷”を絡めるという強引にも取れる設定。視聴前は、脚本に無理矢理感ありそうなどと思ってしまい申し訳ございません! 純粋に面白い!! 壮大な復讐劇にサスペンス要素もちらりと滲ませ、視聴者を飽きさせない緩急がてんこ盛り! 『梨泰院クラス』や『被告人』が好きであればハマる予感大です。
しかし、なぜジソブ演じるハン・イハンはドクターでありロイヤーであるか?を先に申しますと、先述した巨大組織の生贄となり医師免許を剥奪されたゆえに、医療訴訟弁護士となって自身の汚名をそそぐ物語だからです。天才医師と崇められていたイハン。とはいえ自身の実力を過信することなく、驕ることもなく、患者を第一に考えて生きてきた人。そんなイハンが大切な患者を死に追いやった罪を被せられ受刑者となり、医師免許を当然剥奪されたり、愛する恋人と別れる羽目になったりと、1話からカオスな状況に唖然……。不運という言葉では表せないほどの地獄を背負いながら、なんと出所後に弁護士になる選択をして復讐を決意するなど、並大抵の精神力ではできません。『梨泰院〜』のイガグリ頭ことパク・セロイを彷彿させますね。しかもイハンの宿敵は韓ドラ会長役でお馴染み(近頃主人公と敵対する悪役で引っ張りだこ)のイ・ギョンヨン演じるク院長。ほら、これだけでちょっと闘志に燃えてきませんか?
さらにここで注目したいのがこの人。やはり彼はただ者でない!と心震わせる人物こそ、シン・ソンロクです。纏うオーラを変幻自在に操り、主演&脇役どちらもこなす演技派のひとり。そんなソンロクが演じるのはク院長のビジネスパートナーで大金持ちの投資家ジェイドン・リー。これがまた絶妙に物語を掻き乱してくる存在なんですよ……ジェイドンの言動にこちらも一喜一憂し、敵なの? 味方なの? と最後の最後まで翻弄させられる! 1話観たら徹夜案件になる可能性大のドラマです。(エディターK)
なぜオ・スジェなのか/主演俳優としての確かな実力を改めて証明
オ・スジェ役の主演ソ・ヒョンジンが凄すぎです。時代劇もラブコメもヒューマンもオールマイティにこなせて、どんな作品だってピリリとコク味に仕立ててしまう凄腕。実力派ひしめく30代俳優の中でも、その上手さはもはや別格といえるかもしれません。で、本作はそんなヒョンジン初のリーガルサスペンス。大手法律事務所TKに所属するオ・スジェは、どんな案件も冷徹に処理して勝ち続ける超一流のスター弁護士。でも、実は高卒であるがためのなき力を得るため、なりふり構わず昇り続けてきたという経緯があるわけです。ドラマ序盤は、だからなのか戦場に赴く女性兵士のように誰にも1ミリだって心許さないぞ的面持ち。何せ、オープニングからして、純白ワンピースを血に染めて登場し、でもって顔についた血しぶきをクールに拭ちゃう衝撃的なカット。な、何が始まるのぉ!と、その表情一つで一気に引き込む手練れ感なわけです。
で、物語は、TK法律事務所の次期代表弁護士の座をつかんだスジェが、ある国会議員の性的暴行事件を担当する中、被害を受けたと主張する女性が墜落死したことから始まるのですが、その責任を問われてスジェはロースクールの教授に左遷……。そんな重苦しい流れではありますが、そこにそよそよ癒しの風を運ぶのがロースクールの学生チャン(ファン・イニョプ)。実は彼、10年前にある殺人事件の容疑者に仕立てられ有罪判決を受けたのですが、その時、唯一無罪を信じてくれたのが、当時はまだ力なき国選弁護士だったスジェ。で、スジェの女性兵士の鉄仮面がチャンの出現により徐々に解きほぐされていくという展開なのですが、なんとラブ命の私が、それはさておき釘付けにされたのが、スジェとTK法律事務所の代表テグク(ホ・ジュノ)の対決。このテグク、権力も金も人脈も自在に操るラスボス的な敵役。誰が見てもこいつが事件の黒幕だろうとわかるのですが、巨大な力を持っているがゆえに、証拠という隙を一切残さないのはもちろん、途轍もない攻撃を次々と繰り出してくるわけです。瀕死の白鳥状態に追い込まれるスジェは、テグクの悪を暴くことができるのか。詰めの甘さが気になる部分も多々ありはしますが、それでも法廷サスペンスの面白さは一気見したくなる力強さ満々。
そして、何よりやっぱりヒョンジンの天才的演技っぷりです。穢れなき10年前の清純スジェと、武装して闘う鉄仮面スジェと。表面だけでなく心の佇まいまで一変させて見せる圧巻の実力。必見です。(さすらいのライター山崎)