コロナが終息した近未来の韓国をベースに描かれる新たな“ゾンビ”作品であり、なによりハン・ヒョジュとパク・ヒョンシクのケミが好評価となった『ハピネス』や、映画『The Witch/魔女』以来の再タッグが注目され、いまNetflixで沼落ち者が続出している、キム・ダミとチェ・ウシクのW主演で繰り広げられる青春ラブストーリー『その年、私たちは』など、今すぐ観たい&話題の新作韓国ドラマをピックアップ! 韓ドラ班のレビューをご参考に、自分の推し作をぜひ選んでみては。
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班/エディターK
母の影響により第1次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界にどっぷり浸かり、気付けば韓流ドラマ歴18年。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。永遠の推しは俳優ソン・ジュンギ。若手女優&俳優の発掘が趣味の領域に。
ある日〜真実のベール/果たして無罪か?有罪か? 手に汗握る展開の連続
問題は、決定的な目撃者がいない限り、当人以外、犯人が誰であるかを誰も知らないということ。そこに、人を裁く難しさがあります。果たして、本当に有罪なのか、それとも実は無罪なのか。裁かれる容疑者の真実は、その現場を見ていない人たちの判断に委ねられるという現実……。久しぶりに、観終わった後もずっと後を引き、胸に重く残った本格派法廷サスペンス。
2008年にイギリスで放送された話題作をキム・スヒョンとチャ・スンウォンという異色の配役でリメイクされたことでも注目された作品。物語は、キム・スヒョン演じる大学生のヒョンスが、父のタクシーを無断で拝借し、友人たちの飲み会に出かけるところから始まります。その途中、見知らぬ女グクファが流し営業中と間違えて乗車、ミステリアスで奔放なグクファの雰囲気に引きずられるように、彼女の自宅へ上がったヒョンスは、誘われるまま酒とドラッグをやり、彼女とベッドを共にします。そして目覚めたヒョンスが目にしたものは、めった刺しにされたグクファの遺体……。動転したヒョンスは、ナイフゲームで使用した血付きのナイフを持って、現場から逃走。ところが、途中で飲酒検問にひっかかり、ヒョンスがナイフを隠し持っていたことから殺人事件の容疑者として逮捕されてしまうのです。味方は彼の弁護を買って出たチャ・スンウォン演じる三流弁護士のジュンハンだけ……。
状況証拠はすべて黒、刑事も検事も彼を犯人と決めつけ疑わない、そんな圧倒的不利な状況のなか、無実を訴えるヒョンスと弁護士ジュンハン。果たして、有罪なのか、それとも無罪なのか。犯罪とは無縁だった大学生が一転して殺人の容疑者になってしまう怖さ。真実を知っているのは犯人のみという不確実さ。そして、真実よりも勝つことが優先されがちな裁判の現状……。ヒョンスと自分を重ね合わせながら、毎話毎話観るごとに心揺さぶられずにはいられないという。中年太り&無精髭という汚れ姿で臨んだ本当はイケメンのベテラン・スンウォンにも魅せられますが、やっぱり圧倒されるのはキム・スヒョン。どこにでもいる普通の大学生が容疑者となって、追い詰められ、そして変わっていく、そのすべての心情をひとつひとつきめ細かに映し出すリアルかつ繊細な表現力。う、上手い! スヒョン・ペンならずとも必見です。(さすらいのライター山崎)
その年、私たちは/大人になった今、迎える結末は?
成績優秀で一匹狼的なツンケン女子クク・ヨンス(『梨泰院クラス』のキム・ダミ)と、成績底辺ののほほん隠れおぼっちゃまチェ・ウン(『パラサイト』のチェ・ウシク)の高校時代から大人になった現在までを描いたラブストーリー。接点など皆無だったふたりは、とあるテレビ局のドキュメンタリー番組への出演を機に知り合います。「青春」をテーマとした番組で、学年1位と万年ビリのふたりを映したら面白くなるという目論見のもと、招集されたという流れ。そして10年後、PR会社勤務のヨンスと、人気覆面画家「コオ」となったウンが続編制作のために再会。
物語が進むにつれ、ウンとヨンスが5年間付き合ったこと、そして別れの理由などが明らかになっていくのですが、これまた切ない。恋愛への共感がちりばめられている……。恋愛の比重も個々で変わってきて、その重みも違う。そうするしかなかったヨンスの余裕のなさも痛いほど分かる。さらに良いタイミングで必ず流れるテテ(BTS)の「Christmas Tree」。切ない歌声やメロディや歌詞、ウガウガ会の絆にも涙。
そして2番手欲を掻き立てる最高な演技で視聴者のときめきボルテージをあげてくれているのが、キム・ソンチョル(本作でソンチョル沼に落ちたらぜひ『刑務所のルールブック』『ブラームスが好きですか?』『ヴィンチェンツォ』を観て)。ウンとは家族同然の親友で、続編のドキュメンタリーPDキム・ジウンを演じており、ウンより先にヨンスに心惹かれていた人。ほら、もうこれだけで切なーーい!の予感がヒシヒシ。その理由やら、ウンとの絆やら、心の傷やら知ってしまったら、ジウンエンド求む……な気持ちに傾く。かと思いきや、カピバラ級の緩すぎる空気感を放ちながら、「最大の防御は逃げ」と言えてしまうウンの心の強さや真っ直ぐさにずきゅん。こうなると、え?どっちを選んだら?と笑えるほど真剣に悩むようになってくるんですよ。どっちにも幸せになって欲しいし、なんならウンに猛烈アタックするアイドルNJ(『18アゲイン』のノ・ジョンウィ)も報われて欲しい。社会問題に通ずるポイントも描かれていて、NJが抱える闇を損得勘定なしにパーっと明るく照らす言葉をかけるウン。そりゃあ惚れますよ〜。でも心にはずっとヨンスが……って、ああ〜にくい!!
さらに密かに毎話楽しみにしているのが、ウンのファッション。気取らないリラックスしたムードのクアンクスタイルに、エコバッグの組み合わせが可愛い……ってもう、とにかく観て! (エディターK)
ハピネス/近未来の韓国をベースとした新たな“ゾンビ”作品
ドラマ出演は『W-君と僕の世界-』以来5年ぶりというハン・ヒョジュと、除隊後初の作品となるパク・ヒョンシクの初共演作。しかも、演出はあの『秘密の森〜深い闇の向こうに〜』のアン・ギルホ監督。と聞けば、観る前から期待値も急上昇。で、その期待を裏切らないさすがの傑作。韓国お得意の“感染ゾンビ”ものでありますが、その視点も展開も見どころも、これまでとはひと味もふた味も違う仕立てになっているので、“ゾンビ”もの苦手派の方にもぜひ、観てほしいなぁと。
ヒョンシクが演じるのは、警察署強力班の刑事で、高校生の頃、ケガで野球選手の夢を断たれた過去を持つチョン・イヒョン。すっかり生きる気力を失った高校時代の彼を救ったのがヒョジュ演じる2歳年上の同級生ユン・セボムで、以来、イヒョンはセボムにひそかに心寄せているというのが、実は物語のベースにあるわけでして。といっても、ロマンスものではないところがミソ。あくまでも主軸となるのは感染症物語。
舞台となるのは、コロナ禍が終息した近未来の韓国。警察特攻隊となっていたセボムは、マイホームを持つことが人生最大の夢。警察に特別優先供給される高級マンションの物件が出たと聞いたセボムは、既婚者のみという条件を知り、友だちのイヒョンに偽装結婚を持ちかけて、その夢を実現させるのですが。そんな折、噛まれることで感染してしまう謎の“狂人病”が発生。ふたりの住むマンションエリアにその感染症が蔓延、住人を閉じ込めたままマンションが封鎖されてしまうというのが序盤の展開。迫りくる感染症の恐怖はもちろんですが、より魅せられるのはクセありワケありばかりの住人たちの極限下におかれた混乱と思惑。閉ざされた空間のなかで、本性をむき出しにした住人同士の心理戦が凄まじく、生き残るためのなりふりかまわない姿をコミカルさを交えながらリアルに描きだしていく演出も、演じる役者たちも、それぞれにお見事。
そして、その凄まじき“本性”に対抗するセボムとイヒョンの“正義”が痛快かつ爽快。もちろん、ふたりのケミも最高で、物語のなかで変わっていく関係性がマジでいい感じ。スリラーとヒューマンとサスペンスとロマンスと、その盛り込み具合のバランスも絶品で、どこか軽やかで、なのにずっしり見応えあって、胸キュンまで。全12話、存分に楽しめます。(さすらいのライター山崎)
恋するイエカツ/「家は人生を入れる器」など、心に響く言葉ばかり
個人的には原題の『月刊家』のほうが好きだし、しっくりきます。邦題のイメージで観ると「ん?恋愛要素少ない?」と少し物足りなく感じる可能性も……。不動産・インテリア雑誌「月刊家」で働く人たちが物語の主軸で、「家とは?」を終始考えさせられるドラマ。ウィズコロナ時代の今、自分にとって家とはどんな場所であって欲しいのか?を改めて考えるきっかけになるかもしれません。さらに家や土地に関する知識が乏しい私としては、家の買い方や選び方、不動産知識(もしや一般常識?)に、「へえ〜」と頷けて勉強になるポイントも多かった!
主人公で「月刊家」編集者ナ・ヨンウォンを演じているのはチョン・ソミン(通称『イタキス』からの推し)。彼女はどうしてこんなにも“一生懸命頑張っているのになぜか報われないキャラ”が似合うのか。本作冒頭では務めていた出版社の雑誌が突如廃刊になり、住んでいた家も競売にかけられ、無一文で家を追い出されるという嘘みたいな展開。まあその因縁をロマンスに繋げるのが韓ドラの常套手段。「月刊家」の超絶ドケチ社長ユ・ジャソン(キム・ジソク)が絡んでおり、彼の口癖はなにか気に障った時に発する「スターーーーップ!(※STOPのこと)」と「時間の無駄!感情の無駄!お金の無駄!」。ヨンウォンの親しい先輩ウィジュの誘いで「月刊家」に再就職しジャソンと再会するものの、まさに人生どん底状態のヨンウォンにとって耐え難いほどの性格の悪さとネチネチっぷりを発揮。
これまで優柔不断なダメ男やいわゆるクズ役が多かったジソクが演じるだけあり、ねちっこい演技も一品(笑)。ジャソンが披露するMOMOLANDの大人気曲「BBoom BBoom」のダンスシーンや、ライバル誌とエレベーターで格闘する(謎)シーンに加え、名前からして面白すぎる編集長チェ・ゴ(キム・ウォネが演じているのでさらに爆笑)を筆頭に、キャラが濃すぎる「月刊家」メンバーに笑わされてばかり。これぞロマコメ!なポイントを押さえつつ、日常生活のなかで誰もが抱える不安や、社会問題もちらりと覗かせる緩急。派手さがないからこそ、物語やキャラたちがゆっくりジワ〜っと心に入り込んでくるイメージです。考えて、癒されて、笑って、ときめく。
最終回にはちょっと物足りなさを感じたりもしましたが、見せすぎない、伝えすぎない演出も今っぽくていいのかも。自分にとっての幸せとは?暮らしとは?の問いに向き合えるドラマだと思います。(エディターK)