未成年者の悪事と法の在り方を訴えた『未成年裁判』をはじめ、警察学校で繰り広げられる学生たちの青春をベースとしながら、巨悪に立ち向かう姿に心がグッと熱くなる『キミと僕の警察学校』など、最後の最後まで観る手が止まらない新作韓国ドラマをピックアップ。寝る間も惜しんで観たい良作4選は、沼視聴必至です!
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班/エディターK
母の影響により、第1次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界へ足を踏み入れる。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。永遠の推しは俳優ソン・ジュンギ。若手女優&俳優の発掘が趣味の領域に。
未成年裁判/少年法の在り方を訴えた、新たな法廷ドラマが誕生
まずは、冒頭のジャブ的なエピソードからして凄い。シム・ウンソク(キム・ヘス)は、「非行少年を嫌悪する」と公言する少年部エリート判事。転任したばかりのヨンファ地裁の判食(処分を終えた少年たちとの会食会)に参加するものの、その席で参加者の少女が財布窃盗の疑いをかけられる事件が発生。周囲の偏見の視線の中、泣き叫んで無実を訴える少女に対して、同僚の人情派チャ・テジュ判事(キム・ムヨル)は少女を弁護するのですが、シム判事は警察に行くようクールに指示。その最中、財布が見つかり、少女の疑いは晴れたかに思われるのですが……。ところがです。「謝って」と迫る少女にシム判事は容赦なくポケットの中身を差し出すよう言い放ちます。そして、そこには違う財布が……。そう、最初の疑いは少女のカモフラージュ。実際には別の財布を盗み取っていたという……。
韓国の法律では、18歳以下の少年少女は重い罪でない限り、刑法で裁かれることなく、少年法の保護処分となります(10〜13歳は罪状にかかわらず少年法の保護処分のみ)。その問題に大きく斬り込んだのが、この作品。ドラマ1〜2話では、13歳の中学生が9歳の男児を殺害後、遺体を切断放置する衝撃的な事件が描かれるのですが、実はこの事件をはじめ、ドラマで描かれるのは、韓国で実際に起きたセンセーショナルな少年犯罪がモチーフ。少年を更生させたいという生半可な“正義”だけでは解決し得ない厳しい現実がそこにあります。それがミソ。「非行少年を嫌悪する」シム判事が、そんな少年たちに少しの甘さも見せることなく立ち向かっていく姿が圧巻。
その脇を固めるキャラクターも素晴らしく、少年たちを優しく見守りたいチャ判事、政界に打って出たいウォンジュン部長判事(イ・ソンミン)、少年法は時間が勝負と言い放つグニ部長判事(イ・ジョンウン)、それぞれの少年犯罪をめぐるキム・ヘス演じるシム判事との対決は、実力派同士ならではの迫真かつ迫力。特にウォンジュン役のイ・ソンミンとキム・ヘスが真っ向勝負する6〜7話は、私の韓ドラ史上最高の見応えです。ドラマは、ラストに向かうにつれ、シム判事の過去が明かされていくのですが、クールで強い表面とは裏腹な心の傷を曝け出すキム・ヘスの繊細さもさすが。そして、シム判事が真に嫌悪するものとは……。次第に浮き上がるその深さにも感動必至。(さすらいのライター山崎)
キミと僕の警察学校/ときめき、青春、サスペンス……見どころは多岐にわたる!
近年韓ドラの題材でよく目にする“警察学校”。本作も舞台は警察を目指す若き学生たちの物語です。Wanna One出身のカン・ダニエル(推しです)の初ドラマ出演&主演作ということで、界隈では熱きときめきの血潮がほとばしっておりました。高い演技力で着実に力をつけているチェ・スビンがヒロインという安定感に加え、『愛の不時着』のイ・シニョンや、『私のIDはカンナム美人』のパク・ユナなど、選りすぐりの才能の原石たちが出演していることで新しさも感じさせる。そのバランスの良さやキャスティング力にパクス(拍手)!
初恋の人を追いかけて警察学校に入学したウンガン(スビン)と、警察庁長官の父を持つスンヒョン(ダニエル)を筆頭に、柔道ユース韓国代表のタク(シニョン)、首席合格者で警察学校期待の星ハンナ(ユナ)といった主要キャスト8人の個性の強さはまさに“韓ドラらしさ”全開。恋愛のすったもんだや、ラーメンの借り食い(ほぼ盗み食い)事件やら、ふっと笑える20歳の青春の日々が目一杯に広がりつつ、警察学校の悪しき習慣や理不尽な体罰に本気でぶつかる強さと若さには思わずハッとさせられる。こういったエンパワメント要素を随所にちりばめているのが韓国ドラマらしく、元気の源になるのかもしれません。
(勝手に)神回と称しているのは8話。ダニエルたちの貴重すぎる『FICTION』ダンスシーンや、「なぜそこにある?」と不思議すぎるのにまんまと胸きゅんした電話ボックスシーンなど、にやにやノンストップ。これは脚本に負けた感が否めない……!! とにかくムジョッコンときめきます。
そして、そういうことか!と、物語の後半に差し掛かり思わず膝をたたいた1話の意味。冒頭のみかなりシリアスに描かれていたので、ギョッとしたのも束の間、その事実を視聴者に忘れさせるかのように序盤から中盤までは学園ロマンスの比重がぐぐぐっと多め。演出の策略かはさておき、急に訪れたサスペンスな展開に脳も目も忙しい! この切り替えが非常にユニークで、観ている人を飽きさせないポイントだと解釈しています。前半のときめきどこいった!?と思わず叫びたくなる悲しい事実に直面してからがリスタート。恐れを知らず真正面から向き合うことしかできない若き彼らが、警察上層部までもが染まる真っ黒い渦にどう立ち向かうのか? ジェットコースターのような展開から目が離せない物語の結末をとくとご覧あれ。(エディターK)
悪の心を読む者たち/主演キム・ナムギルを筆頭に、演技派俳優たちの演技に魅せられるサスペンスドラマ
韓国初のプロファイラー、クォン・イルヨン元警察官の話を基にしたノンフィクションルポがベースとなる本作。1話からガツンと脳内に響き渡る台詞と演出と、演者の本気度に、心臓の音がドクンドクンと鳴り止まない! 実際の事件が根底にあるので想像の通り、憤りを覚えるシーンが多々あります。毎話と言っても過言ではありません。凶悪な連続殺人者たちが次から次へと現れ、嘘だと思いたい残忍な理由で人をおもちゃのように弄び、亡き者にする……そんな悪人たちを捕まえるために“悪の心”を読み解くべく、ソウル地方警察庁の科学捜査係 犯罪行動分析チームのプロファイラーたちが奮闘していきます。
まだプロファイリングという言葉さえなかった時代。犯罪行動分析の必要性を訴えるヨンスチーム長(チン・ソンギュの存在が本作の癒し)がハヨン(ナムギル)をプロファイラーの道に引き込み、唯一の部下ウジュとともに部署を新設。それこそ世間は「悪人の話を聞くなんて」と刑務所に出向くハヨンたちを白い目で見ていましたが、次第にプロファイリングの正確性に、内部の刑事さえ心を動かされていきます。その過程だけで目頭が熱くなりますが、特筆すべきはナムギルの熱演っぷり。ハヨンは一見感情がない“カオナシ”のように見えるけれど、実は誰よりも優しい心を持ち、物事の本質を深く、深く、見極めるタイプ。それは物語が進むにつれて視聴者サイドに伝わるのですが、そこになにか大きな出来事や演出を盛り込むわけでもなく、あくまで繊細な演技力のみで魅せている。まさに圧巻。
だからこそ犯人と日々向き合うことで次第に“悪”が心を蝕み、壊れていくハヨンを観るのがなによりつらい……と同時に「負けて欲しくない」と画面越しに本気で応援してしまう。それほどまでにのめり込めます。もう、ハヨンという一縷の望みにすがるような気持ちでした。視聴者をここまで巻き込むナムギルの演技と、脚本と演出の素晴らしさは言うまでもなし。
想像を絶する犯人がゴロゴロ湧き出てくるということは、多くの被害者が存在するということ。正直心が重く、苦しいです。ただこれがノンフィクションベースだと思うと、事実と向き合わなければという一種の使命感に駆られます。全12話とコンパクトではあるものの、秘められたメッセージは数知れず。1話観たらもう止まれません。後世に受け継がれるべき良作です。(エディターK)
学校2021/韓国スター俳優の登竜門“ハッキョ”シリーズの最新作
「学校」と書いて「ハッキョ」と読む。1999年に最初の作品が放送されたハッキョシリーズも、今作で8シーズン目。このドラマが新人俳優の登竜門的作品であるのは周知の通りですが、チャン・ヒョク、ペ・ドゥナ、チョ・インソン、コン・ユ、イ・ジョンソク、ナム・ジュヒョクなどなどなどなど(まだまだいますが割愛)、いや〜、まさに錚々たる顔ぶれ。つまり、ハッキョシリーズは明日のスター俳優の宝庫というわけで。韓ドラ好きとしては、やっぱり見逃すわけにはまいりません。ということで、本作。
舞台となるのは「特性化高校」。耳慣れない名前ですが、建設や機械など特殊な分野の職業教育を行ういわゆる実業系の高校で、生徒の目的はそのほとんどが就職。とかく過酷な大学受験ばかりがクローズアップされる韓ドラではありますが、実は2018年、特性化高校の生徒が実習先で死亡事故に巻き込まれ、その劣悪な労働実態が浮き彫りにされるなど、特性化高校をめぐる問題も大きな社会問題の一つとなっているのです。そんな事実を踏まえたモチーフを盛り込みながら、お受験ばかりではない、夢に向かう生徒たちをキラッキラに描くのが本作。大人たちの勝手な思惑に阻まれながらも純粋にひたむきに夢と希望を探し出そうと前に向かう高校生の姿は、疲れ切った大人のカンフル剤になるのはもちろんですが、それを演じる明日のスター俳優たちにもぜひ、ご注目を。
負傷によりテコンドー選手の夢を断たれ、目標を見失う主人公のギジュンに扮するキム・ヨハン。すでにトップアイドルではありますが、ドラマは『美しかった私たちへ』に続くまだ2作目。ペンとしては彼が演技する姿を見られるだけでも眼福ではありますが(プデュからの推し)、『美し〜』から格段に進歩したその表現力にも感涙しきり。で、ギジュンの初恋の相手となるのがジウォン。進学塾経営の母の反対を押し切って大工の夢を追うジウォン役には、『今、私たちの学校は…』ですでに世界的な注目を浴びるチョ・イヒョン。憂うる委員長役とは180度違う溌剌キャラが可愛らしく、ヨハンとの胸キュン初恋ロマンスも必見です。他にも訳ありの転校生ヨンジュ(チュ・ヨンウ)、名門大学を目指すソヨン(ファン・ボルムビョル)などなど、唾を付けたくなるようなお宝、ザックザク。明日のスター発掘としても大いに楽しめます。(さすらいのライター山崎)。