想像の斜め上をいくエンディングに毎話驚かされていた『シスターズ』や、ヒロインのユミを取り巻く恋模様と、細胞たちのやり取りに心癒される『ユミの細胞たち -シーズン2』など、秋の韓ドラ新作ラッシュが到来。そのなかからキム・ゴウンをはじめ、圧倒的な演技力に痺れる実力派が出演する注目の4作品をピックアップ。すべて10月1週目までに最終回を迎えているため、週末のイッキ観も可能です!
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班/エディターK
母の影響により、第1次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界へ足を踏み入れる。「寝不足だけど幸せ」を合言葉に、約19年間あらゆるジャンルの韓流ドラマを観続けている。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。永遠の推しは俳優ソン・ジュンギ。若手俳優の発掘が趣味の領域に。
『ユミの細胞たち -シーズン2』/ウン派もバビ派もときめかざるを得ない!
ネタバレせずに書く自信がありません。おしゃべりしたいことが山のようにあるわけなのです。だから、話したい! とはいえ、私が感じたこの感情の起伏をそのまま味わい尽くしてほしいので、とにかく肝心ネタは一切書かないよう努めたいと思います。ということで、まずはシーズン1ラストのおさらい。
実写×細胞たちの立体アニメという構成がユニークなドラマではありますが(詳しくはこちらの記事を)、平凡な会社員ユミ(キム・ゴウン)と紹介で出会ったゲーム会社のプログラマーのウン(アン・ボヒョン)の恋愛はいたって普通。それゆえの“あるある”体感目白押しで、ユミ以上にのめり込んでしまったという人も多いのではと。だからこそ、ラストのふたりの選択に、ソジュ(焼酎)をあおらずにはいられないほどやるせない思いに沈んだのも私だけではないはずです。それを受けての本作。ユミのお相手はウンに変わって(涙)、同僚ユ・バビ(ジニョン)。でも心の中がウンでいっぱいの身としては、バビなんて……と思ってしまうわけなのですね。案の定、ユミもウンを忘れられずボロボロ。当然です。私なんてSNSに上がるウンの写真が目に映るだけで(ウン、髪切ってるぅ)、ユミ以上に胸が締め付けられちゃうわけなのですよ。やっぱりウンとヨリを戻すっきゃないでしょ。ところがです。
同僚ルビに「バビ情報を教えて」と言われたユミが、なにかとバビを注視するようになると、なんとユミの細胞たちに変化が! 小説が好きなバビ。明るい音楽が好きなバビ。さりげにユミを気遣うバビ。そうなんです。バビったら、かなり好感度高め。失恋で寂しいユミの細胞たちがそんなバビを見逃すわけがありません。バビ同好会に入会する細胞たちが、一人、また一人と増えて、どんどん増殖。そして、そして、なんとこの私までもがバビ同好会に!! だって、だって、バビのまなざしが甘い、甘すぎるんですよ、もう! ということで、ユミとバビのどこにでもある平凡な恋愛パート2が始まるわけです。そう、いたって普通の恋愛。なのに、なのにです。ユミを差し置いてこれほど心揺さぶられたのは、おそらく私史上最高やも。まるでジェットコースターに、いやいや続け様のバンジーみたいな心のアップダウン。なぜかって? それについては本作視聴後にとことん。そのおしゃべりでソジュの空き瓶が山となるやも知れませんが。ちなみに、どうでもいいことですが、私はそれでもやっぱりウン派です。(さすらいのライター山崎)
『シスターズ』/毎話のラストがSNSで大きな話題に!
3姉妹役にキム・ゴウン、ナム・ジヒョン、パク・ジフというキャストだけで凄みを感じるけれど、毎度想像の範疇を超えるエンディングや、全12話とコンパクトな話数のなかで繰り広げられる復讐劇&愛憎劇に加え、ミステリー、サスペンス、ロマンスなどの要素がバンジージャンプ級の振り幅で表現されており、怒涛の展開が止まらない!! とにかくジャンルレスで、エポックメイキングな作品であることは間違いなし。
邦題は『シスターズ』ですが、原題はアメリカ文学に着想を得た『若草物語』。原作と異なる姉妹の性格や設定に加え、なにより本作で色濃く映し出される「貧困の差」。ウォルリョングループ所有の建設会社の経理部に勤める長女インジュ(ゴウン)、テレビ局の報道記者の次女インギョン(ジヒョン)、芸術高校に通う三女イネ(ジフ)、物語はこのオ家の3姉妹を筆頭に、ウォルリョングループの富・700億ウォン(約70億円)を巡って壮大なストーリーが繰り広げられていきます。
イネの修学旅行費を実の母親に持ち逃げされ途方に暮れていたインジュが、同部署で唯一の心の拠り所である先輩チン・ファヨンに助けを求めたことがすべての始まり。その後突然行方をくらませたファヨンは、自宅のクローゼットのなかで赤いヒールを履き、息絶えた姿で発見。さらにファヨンが会社から700億ウォンを横領したことが発覚!! 上層部は親しかったインジュに真相を調べさせると、序盤から驚愕の展開がドドドドン!! その時に出会うのがウォルリョングループ財務本部長のチェ・ドイル(ウィ・ハジュン)です。
本作は特にドイルというかウィ・ハジュンに終始感情を揺さぶられるんですよ! 「敵なの?味方なの?」が最後の最後まで読めず、ラストのその瞬間まで永遠にハラハラ。こんなに画面に食いついたドラマは久しぶりかもしれません。そして700億ウォンという大金の裏には、ウォルリョングループの理事長パク・ジェサン(オム・ギジュン『ペントハウス』)や、会長の娘でジェサンの妻ウォン・サンア(オム・ジウォン『産後ケアセンター(原題)』)の闇がたっぷりと潜んでいる。演技派ふたりが揃うと深みがまるで違うので、背筋がゾックゾク! 本作のキーとなる「青い蘭の花」の秘密とは? 3姉妹は蔓延る悪とどう対峙していくのか? 毎話予想を遥かに上回るエンディングを楽しみながら観てほしい!(エディターK)
『アンナ』/運命に翻弄される“アンナ”の人生が心に焼き付く
配信前の予告をチラリと覗いた段階で、スジが稀代の悪女を演じるのかと、ちょっと勘違いしておりました。悪女役をやることで本格派俳優へと脱皮する……というパターンは少なくなく、そういうステレオタイプ的な方向性に私的には少々辟易しているのですが。で、気が進まないまま、蓋を開けてみたわけです。これが、予想を裏切る秀作。ミニシアターのドキュメント映画のように単調に淡々と進む私小説的な映像に、なぜだかあっという間に釘付けにされて、目を離すことができなくなるという。
後にアンナという名で生きることになるスジ演じるイ・ユミは、家族を思い、人生を楽しみたいと思うごく普通の女の子。ただ、ちょっとだけ自尊心が高く、ちょっとだけ虚栄心が強く、そして、ちょっとだけ負けず嫌いなだけ。でも、この“ちょっとだけ”が実はとても大きくて……。テーラーを細々と営む父と、口がきけない障害を持つ母のもとに生まれたユミは、貧しいながらも利発な女の子として育ちます。夫の赴任で韓国にやってきた英国夫人に可愛がられ、幼いながら刷り込まれたのが本心を人に悟られないための「ポーカーフェイス」。そうして、高校生となったユミは、学年でトップの優等生に。このまま一流大学へと思った矢先、教師との恋愛が発覚、強制転校させられてしまうのです。その動揺からか大学受験はあえなく失敗。心配して電話をかけてきた父に“合格した”と思わずついた小さな嘘がアンナの物語の発端です。意図せぬことから積み重なっていく小さな嘘と嘘。そうして上り詰めていくピラミッドの頂上に見えてくるものとは……。
物語のキーポイントはアンナが稀代の悪女ではないということ。そこに意図した企みや悪意はなく、自分の意思とは関係のないところで偶然が必然を呼び、積まれていく嘘に怯えながらも次第に陶酔し、そして良くも悪くも翻弄されていくアンナは、心の内に隠されていた私自身を映すようでもあり。最初から最後まで細い糸がピンと張り詰めたような緊張感が途切れることなく続く展開も素晴らしく、その中心を担うスジの表現力の細やかさも正直、想像以上。時に高揚し、時に不安を隠せず、時に理不尽さに怒り、時に本気で悲しむ……ポーカーフェイスの奥で移りゆく表情の微細な変化がむしろ饒舌。特に夫の真実に気づいたアンナの面差し。驚きと軽蔑と嫌悪と自嘲が複雑に入り混じる絶品のポーカーフェイス。お見逃しなく。(さすらいのライター山崎)
『田舎街ダイアリー』/心に癒しを届ける現代ロマンス
タイトルからもお分かりかと思いますが、これぞノン・ストレス視聴!! ドッタンバッタンのマクチャン的展開もなければ、誰かが死に追いやられることもない。自然豊かなヒドン里を舞台に繰り広げられる“ほのぼの”ロマンスです。特にヒドン里で生まれ育った警察官でありヒロインのアン・ジャヨンを演じたRed Velvetのジョイ。コロコロ変わる表情や仕草に視聴者目線でもドキューン!! 笑った顔にイチコロ状態で、ジョイの魅力がこれでもかと凝縮されています。兎にも角にもいちいち可愛すぎるんですよ……これまでの出演作品のなかでいちばんジョイらしさが溢れる作品かもしれません。
で、このふわりとゆる〜いロマンス作品って、刺激がない代わりについつい「ながら見」になったり、いつの間にか観るのを忘れていたりということも多々ありますよね〜。でもご安心ください。面白さの鍵を握るラブラインはもちろん、メインキャスト3人のケミストリーが最高なのです。
家畜病院を営む祖父に頼まれて、数ヶ月の間ヒドン里に移り住むことになった獣医ジユル。演じているのは2021年放送のハッキョシリーズで注目を浴びた期待の星ことチュ・ヨンウです。ソウルで動物病院を開院しており、その美貌を活かしながらYouTubeでバズりまくりの獣医という設定。そりゃあもちろん、ヒドン里には嫌々訪れるわけです。そこで天真爛漫なジャヨンと出会い、不審者に間違えられたり、田んぼに落ちて泥だらけになったり、家畜動物の怒涛のお産を成功させたりしながら、ジャヨンと過ごす時間のなかで少しずつ価値観が変わっていくんですね。その様子にも癒されますが、ここでもう一人。ヒドン里村長の息子イ・サンヒョンの存在です。演じているのはこれまた期待の若手俳優ペク・ソンチョル。ジャヨンに対して自然と友達以上の感情を抱くようになるのですが、最初のツンデレっぷりがもうたまりません!! ソンチョルの前作の役柄とのギャップもありつつ、幼馴染設定に弱い方はツボにハマる危険性大。
そんな3人の恋愛模様はもちろん、画面越しからも伝わる美しい景色に癒されて、ちょっぴりしつこいけれど心優しいヒドン里のアジュンマたちに思わず笑わされて、終始穏やかな気持ちで観られます。さらに家畜病院というひとつのフィールドを通して映し出される社会問題の数々。決して重苦しく扱ってはいないものの、考えさせられる描写も多く、取り入れ方がとても自然なのも韓国ドラマならでは。(エディターK)