秋の連休は海外ドラマ三昧! おすすめは、約30分尺のドラマシリーズ。隙間時間や移動時間にサクッと観られるし、話の展開が早いからイッキ観しやすいのがポイント。
尺は短くても中身は濃厚な作品を、海外ドラマ好きエディターがセレクト。すべて、次回シーズンの制作が決まっている人気シリーズです。紹介するのは、プライベートでも結婚して絶好調! リリー・コリンズ主演の『エミリー、パリへ行く』、東京編の放映も話題の『モダンラブ』、優しい気持ちになれるBL青春ドラマ『ハートストッパー』の3作品。そして、これらは奇しくも「愛」をテーマにした作品群。すべてウォッチして、芸術の秋、食欲の秋に加え、「愛の秋」を堪能してみませんか。
観れば、おしゃれ&仕事&恋をしたくなる!/『エミリー、パリへ行く』
連休明けは秋のムードが加速します。街が色めき出し、おしゃれをしたり恋をしたりが楽しい季節の到来です。とはいえ、夏疲れがドバッと出てきて「仕事もおしゃれも恋も億劫……」という人もいるでしょうか。そんな人にイッキ観してもらいたいのが、現在シーズン2まで配信中の『エミリー、パリへ行く』。2020年Netflixで最も多く視聴されたコメディシリーズであり、エミー賞にもノミネートされたNetflixオリジナルドラマで、現在シーズン2まで配信中。
私にとってこのドラマは、誤解を恐れずに例えるならば“セラピー系ラブコメ”。一日の終わりに、肩肘はらず軽やかな気分で観ることができる、観ると元気になれる、サプリのようなドラマです。
というのもこのドラマ、“悪人”が一人も出てこないんですよね(現在のところ)。フランスとアメリカの文化の食い違いが仕事にも影響したり、保守的な上司と現代的な若者がすれ違ったりするお仕事ドラマでもあり、友人の恋人を好きになってしまう三角関係を描く恋愛物語でもあり。セクハラやパワハラ、SNSの弊害など現代社会が抱えるトラブルも降りかかり、一見“渡る世間は鬼ばかり”な状況。パリでそんな“洗礼”を受けるエミリーですが、真正面から向き合う真摯な姿勢が、一周まわってなんだかかっこいいし、観ていて愛着がわきます。また、他の登場人物が抱えるそれぞれの事情も上手く組み込まれ、エミリーが正義!にならないのもバランスがいい。
ストーリーの展開も早く、30分の尺でテンポよく進むのですが、登場人物がある程度固定化されていて話の筋は大きく変わらないので、焦ったり迷ったりすることなく観賞できます。
また、このドラマといえばファッション。シーズン1の毎日が仮装パーティ状態からブラッシュアップされ、エミリーのオフィススタイルも洗練されてきました。シーズン1に続き、衣装デザイナーのマリリン・フィツゥシと、エミー賞受賞の衣装コンサルタント・デザイナーであるパトリシア・フィールドがスタイリングを手がけるという、最強の布陣。
「スタイリングがシーズン1の繰り返しにならないよう努めること。(略)また、トレンドをなるべく避けています。トレンドは、すぐに廃れあっという間に飽きられるから」と、シーズン2配信の際にコメントしていたパトリシア。衣装の調達も、再生ファッションやリサイクルファッションにも重点をおき、ヴィンテージショップで見つけた個性派アイテム、H&MやZARAで買えるアイテムなどもミックスしているそう。
全編を通して「どこかで観たことあるな」というコーディネートがなく、大胆なのに奇抜でなくおしゃれ。私は色が好きなので、シーズン1より、エミリーのファッションは“ドンズバ”。登場する衣装すべてがスタイリングの参考になりそうで、衣装にフォーカスをあてて振り返り視聴したくなります。そして、観終わる度に、ワードローブを一新したくなるし、街に出たくなるし、旅に行きたくなる! 自身がポジティブでいることが、素敵な恋と仕事を引き寄せるのかな?とエミリーをみて思います。現実はなかなか簡単ではありませんが。
すでに、シーズン3&4の制作が発表された本作。シーズン2は大きなクリフハンガーで終わり、がらりと環境が変わることが予想される次のシーズン。この連休中に、イッキ観して、新シーズン待機するのはいかがでしょうか。
STORY(シーズン2)
同じアパートに住むシェフと、その恋人でありフランスでのかけがえのない友人との三角関係に悩むエミリー。仕事に意識を集中させるも、事態はより複雑な展開に。そんななか、語学学校で、同じく仕事でフランスに赴任しているイギリス人の男性と知り合い交流する内に距離が縮まり……。
30分完結の、リアル・ロマンティックストーリー/『モダンラブ』シーズン2
いやはや、今回も傑作揃い!
「愛」をテーマに、米「ニューヨーク・タイムズ」紙で約15年以上続いている人気コラム“Modern Love”を実写化した『モダンラブ』のシーズン2。1話完結、約30分のオムニバスドラマなのですが、体感時間は1時間ほど。つい全集中で観てしまう、惹きつけられるドラマです。
今回も、多様性の代名詞のような街、NYで実際にあった様々な愛のカタチが描かれます。観ると不思議と心が浄化される、現代の愛の物語の数々。愛の偉大さや素晴らしさを再認識できます。エピソードごとに世界観が構築されているので、結末を知っているのに何度も、何度も観たくなります。
家族や友人、パートナーなど、大切な人と一緒に観るのにもおすすめですし、ひとりで鑑賞して「愛」のシャワーを浴びるのも心が満たされそうです。
個人的には、新型コロナウイルスの影響で帰省するふたりが電車で会い恋に落ちる、「ダブリンの見知らぬ乗客」が、一目惚れというピュアな感情を思い出し(笑)、ぐっときました。『ゲーム・オブ・スローンズ』でジョン・スノウ役を演じたキット・ハリソンと、『ボヘミアン・ラプソディ』に出演したルーシー・ボーイントンというホットなキャスト。電話番号やメルアドなど連絡先を交換せず再会を誓うふたりに、コロナによる行動制限がかかります。果たしてふたりは……。こちら、原作はたった11文だというから驚き。
病気の影響で昼夜逆転の生活を送る女性と、朝起きて昼に働く男性の恋愛模様を描いた「夜の少女と昼の少年」も、パートナーシップにおける“生活や価値観のすれ違い”に置き換えることができて、考えさせられる内容(写真下)。
全話を通して感じるのは、「結末」がふんわりしているということ。事実ベースの物語だからでしょうか。その人の人生(物語)は続いていることを考慮してか、最終的なオチをはっきり示さず、オーディエンスの想像に委ねている部分もあり、それが観る側の想像力を刺激したり、心地よい余韻をもたらしてくれたりして、好感が持てました。
なお、シーズン3の制作が決まっているほか、10月21日からは、舞台を東京に移したAmazon Original 『モダンラブ東京~さまざまな愛の形~』が、Prime Videoにて世界同時配信されるとか! (予告編はこちら)
US版と同じく、「ニューヨーク・タイムズ」のコラムを原作にした1話約30分のオムニバスですが、US版とは違う話を採用。メガホンをとるのは、黒沢清、荻上直子、廣木隆一、山下敦弘といった、日本の映画界を代表する監督たち。出演も水川あさみ、榮倉奈々、伊藤蘭、成田凌、永作博美、ハリウッド女優のナオミ・スコット、黒木華ら国内外を代表する豪華キャスト陣が主演を務めます。こちらも待ち遠しいですね!
羽毛のように優しく繊細な、青春BLドラマ/『ハートストッパー』
とても甘くて楽しくて。心が洗われ前向きな気持ちになれるBLドラマをNetflixオリジナルで発見。イギリスのヤングアダルト作家アリス・オズマンのグラフィックノベルを原作とした、『ハートストッパー(Heartstopper)』です。
ティーンエイジャーの恋する姿をうまく切り取り演出されていて、10代の自分を思い出しタイムトラベルした気分に(笑)。また、グラフィックノベルの世界観の延長線上なのか、映像のところどころにグラフィックのイラストが施されるポップな演出がとってもキュート!
主人公のチャーリーはカミングアウトしているゲイ。ひょんなことから、同じクラスで隣あわせになったニックに恋をします。交流するうちに次第にチャーリーに惹かれていくニック。両思いのふたりですが、チャーリーは自尊心に加え自己肯定感が極端に低く、自分が関わると迷惑をかけてしまうのではと尻込みます。一方ニックは、自分がゲイ(正確にはバイセクシャル)ということに気付きつつも戸惑います。
そして、このドラマの面白いところでもありますが、周囲の友人たちもそれぞれ、男女同士、レズビアン同士、それぞれが両思いなのに思春期らしい“こじらせ”がはばかり上手くいかない状態。包まれるとふわふわと心地よいのに、ちょっと圧をかければぺしゃんとしぼんでしまう。暖かくて優しくて繊細で。そんな“羽毛のような恋”と、名付けたくなります。
なお、過激なセックスシーンや、ドラッグに溺れる姿など、ハードな描写はゼロ。親や先生など登場する大人も、良識人で子どもたちをバックアップ。平和で優しい世界観のなかで繰り広げられる青春物語として、私的には、見た後は心が洗われた感じがしました。
セクシャリティの問題に限らず、ティーンエイジャーが思春期に通る自己発見という“初体験”、そしてそれを受容するまでのプロセスを優しいムードで描きます。本当の自分を探し求める姿は、彼・彼女らより年を重ねた私でさえ、リアルに共感してしまいます。
こちら、シーズン3まで制作が決まっているようで、ますますファンが増える予感です!
STORY
同じ高校に通う、ゲイとカミングアウトしたチャーリーと、ラグビー部のニック。ふたりは互いに恋心を抱くようになるも、それぞれの理由から戸惑いを感じているが、気持ちは盛り上がる一方で……。
【海外ドラマ ナビゲーター】
エディターR
一日の終わりを、ワインとショコラとドラマで締めくくるのが愉悦のとき。“SATC”よりゴシップガール派。映像美と緻密な脚本ものが好物。最近は動画配信サービスのオリジナル作品のチェックに余念がない。作品でいうと、Netflix『ザ・クラウン』、Apple TV+ 『ザ・モーニングショー』などがお気に入り。ドラマに出てきた名台詞をコツコツとしたためていて、いつかどこかでアウトプットするのがささやかな目標。