遂に幕を下ろした『セックス・エデュケーション』やケリー・ラッセル主演の新作『ザ・ディプロマット』など、2023年に配信された作品の中から特に印象に残った作品を厳選！ 思わずイッキ観してしまうほど引き込まれる、観て損なしの作品ばかり。年末年始の徹夜視聴にも打ってつけな話題作をお見逃しなく。
セックス・エデュケーション／すべての大人に観てほしい、SDGsなハイブリッドドラマ
9月にシーズン4が解禁され、ついに幕を下ろした『セックス・エデュケーション』。これまでにも散々素晴らしい作品として取り上げられてきましたが、完結した今、改めて作品としての完成度が高いと感じ、2023年のベストにセレクトしました。
セックスのみならずメンタルヘルスやジェンダーなど、なかなか公の場で健全に話されることの少ないテーマに切り込んできた本作ですが、最終章もその例に漏れず。舞台を、閉鎖されたムーアデール高校から、まるでグーグルのオフィス（!?）かのような最先端の学校キャベンディッシュ・カレッジに移し、サステイナビリティへの関心が高く、ポジティブバイブス満点の新キャラクターと共に、今語るべきリアルを見せていきます。
高齢出産後、うつのような症状に悩みボロボロになっているジーン（ジリアン・アンダーソン）も印象的でしたが、車椅子を使用するアイザック（ジョージ・ロビンソン）が普通の学校生活を送ることもままならない不公平さに声をあげるシーンもグサリ。まさにSDGsのモットーである“だれ一人取り残さない”じゃない！と感動してしまいました。理由や程度は異なれど「私一人じゃない」と感じられるところがこのドラマの醍醐味だよなと再確認。
配信開始当初、有名どころといえばエイサ・バターフィールドとジリアンくらいだったのに、今やエリック役のンクーティ・ガトワ、メイヴ役のエマ・マッキー、アダム役のコナー・スウィンデルズが揃って『バービー』に出演するなど大作映画に引っ張りだこで、キャストの活躍からもドラマの成功ぶりが感じられます。
ザ・ディプロマット／イッキ観を誘う美しき外交官の駆け引き＆頭脳戦
Netflixで4月に配信されるやいなや、イッキ観してしまったポリティカル・サスペンス。ふとした時に「やっぱり面白かったな～」と思い出すことが多かった作品です。『ジ・アメリカンズ』のケリー・ラッセルが駐英米国大使に抜擢され緊迫した世界情勢の中、外交問題解決を期待される主人公ケイトを熱演。個人的に主演のケリーが大好きで、贔屓目に見てしまうというのも少なからずありますが、本当に彼女は淡々と仕事をこなす役が得意。すべてを見通しているような切れ長の目と、何事にも動じない姿勢を感じさせる低めの声が、今回も役にぴったりとマッチしています。
上流階級との交流ではなく実務経験を積みたいケイトの意に反して、周囲はシンデレラストーリーに仕立てようと必死。あれよあれよという間に副大統領候補として目を付けられ、好感度アップのためにドレスだのヒールだのを用意されるのですが、彼女は黒のスーツ一着でいいタイプ。根負けしてドレスアップしたときの美しさは言うまでもないですが、普段、仕事の場でダークカラーのスーツにバッグを斜めがけしている姿のかっこよさもピカイチ。彼女の臨戦態勢が感じられて、観ているこちら側の仕事モードにも、なんだか自然とスイッチが入るんですよね。
『HOMELAND/ホームランド』のデボラ・カーンがクリエイターを務めているので、政治要素の見応えが十分なのは言うまでもなく。加えてケイトの夫婦関係や大人の恋愛模様も魅力的なので、日頃政治ものを観ないという方にこそおすすめしたい作品です。
テッド・ラッソ：破天荒コーチがゆく／オールタイム・ベストとして愛でたい心温まる良作コメディ
コロナ禍の2020年に配信がはじまり、社会現象を巻き起こした『テッド・ラッソ』も今年ファイナルシーズンが配信されて終了。3シーズンで終了するのは当初の構成通りなので、覚悟はできていたはずなのに、最後は頭が痛くなるほど号泣してしまいました……。
これまでにも米国テレビ界のアカデミー賞といわれるエミー賞でコメディシリーズとして史上最多ノミネート、2年連続作品賞受賞など記録を残してきた本作ですが、新たにレギュラーキャスト全員がエミー賞にノミネートされるという偉業を達成。つまり出演者全員の演技が素晴らしい作品なんです！
大学アメフトコーチだったテッド・ラッソがサッカーの名門リーグの監督に抜擢され、優勝を目指す道のりを描く本作の素晴らしいところは、おちゃらけポジティブのように見えるテッド・ラッソ自身も、パニック障害など取り組むべき悩みを抱えている姿を描いていること。勝ち負けが求められる世界で、あえて本当に大事なことを大切にするテッドのメッセージを浴びると元気がみなぎってくるはずです。クリスマスエピソードもあるので、この時季にもおすすめ。2023年と言わず、オールタイム・ベストとして愛でたいドラマです。
【海外ドラマ ナビゲーター】
Kanako Iizuka
ミレニアル世代の映画・海外ドラマライター。日々現地メディアで海外ドラマの最新情報を収集しつつ配信メインで海外エンタメ漬けの毎日をおくる。音楽アプリ“Shazam”片手にドラマを観るのが好き。アメコミにアンテナを張りつつ、『YOU ―君がすべて―』『イージー』『Fleabag フリーバッグ』といった攻めた恋愛ものも大好物。最近はスペイン語の勉強を兼ねてスパニッシュドラマも探求中。
