ふたりの女性と極悪財閥との闘いを繊細に描き注目を集め、すでにシーズン2制作の噂が立っている『クイーンメーカー』や、チャン・ヒョク×チャン・ナラ4度目の共演にして、夫婦、家族の絆を問うスパイコメディ『シークレット・ファミリー』が配信開始となるなど、話題作が目白押し! 大人が楽しめる良作韓国ドラマが続々配信となっているため、ぜひお気に入りの一作を見つけてみて。
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班/エディターK
母の影響により、第1次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界へ足を踏み入れる。「寝不足だけど幸せ」を合言葉に、約20年間あらゆるジャンルの韓流ドラマを観続けている。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。永遠の推しは俳優ソン・ジュンギ。若手俳優の発掘が趣味の領域に。
『クイーンメーカー』/激しく繰り広げられる政治バトルから目が離せない
犯罪なんて当たり前、金さえあればどんなことも許されるし、どんなものも手に入れられる。そんな傲慢スレギ(クズ)な財閥を相手に、ソウル市長の座をかけて真っ向から立ち向かう女ふたりの壮絶なる闘いを描いたのが本作。もう、これだけでも一気観したくなるのですが、主演のひとりがあの『夫婦の世界』のキム・ヒエ! 上質なシルクブラウスにタイトスカート&ピンヒールといったエレガント服を品よくスタイリッシュに着こなしながら、その胸のうちに欲や悲しみ、執着などなど、人間の業ともいうべき一筋縄ではいかない感情をこれでもかというほどあふれさせるその演技。本作では役柄と相まってか、さらに迫力増し増しとでも言いましょうか。
彼女が演じるのはファン・ドヒ。ずば抜けた賢さを武器に財閥ウンソングループの戦略企画室エースとして上り詰めた強者です。企画室といえば聞こえがいいですが、実はウンソン財閥の失態や汚点を手段を選ばず洗浄するのが役目。故に優雅にエリート然としながらも、影では“水洗トイレ”とか“会長の犬”とか言われているわけなのです。そんなある日、彼女の部下が転落死。実は財閥の娘婿ジェミンによるレイプがその発端で、ドヒはそのもみ消しを言い渡されるのですが、部下の死を目の当たりにしてこれまでの自分の罪の重さを思い知り、それを拒絶。速攻でクビを言い渡されてしまうんですね。一方、ジェミンはウンソンの会長を後ろ盾にソウル市長に立候補。それを阻止すべくドヒは人権派女性弁護士オ・ギョンスクを候補者に立て闘いを挑むという展開です。
で、このオ・ギョンスクを演じるのがもうひとりの主演ムン・ソリ。彼女もベネチア国際映画祭で新人賞を受賞した演技派で、弱い立場の人々のために常に全力という全身正義のオ・ギョンスクを好感度高く爽やかに映し出す名演を披露。清廉に澄み切ったオ・ギョンスクと、汚さも悪も知り尽くすドヒ。真逆ともいえるふたりの対比がさらに互いのキャラを際立たせ、熾烈な政治ショーをより面白くしているのは、もはや言うまでもありません。ウンソン財閥が仕掛けるあの手この手の卑劣な罠に真逆なふたりはどう対抗していくのか。市長の座を勝ち取ることができるのか。会長役ソ・イスク、ジェミン役リュ・スヨンをはじめ、ジェミンの妻役のキム・セビョクや女性労働者役のキム・ソニョンなどなど、端々の脇役陣まですべて絶品。たっぷりとご堪能を。(さすらいのライター山崎)
『シークレット・ファミリー』/秘密を抱える家族のドタバタスパイコメディ
チャン・ヒョクとチャン・ナラといえば、なんと言っても超王道ロマコメ『運命のように君を愛してる』が記憶に残っています。放送当時まんまとハマったひとりですが、そんな“チャンチャン”コンビが9年ぶりに再タッグと聞き大興奮!! 共演4度目とあり、長きにわたり育まれたケミの良さが本作でも際立っています。原題は「ファミリー」のみですが、一見極フツーに見える家族が、実は夫婦ともに大きな秘密を抱えている「シークレット」な関係という設定で、タイトルは『シークレット・ファミリー』。「こんな家族楽しいな!」と思わせるブラックコメディチックなユーモアを薫らせながら、物語をピリリと引き締める銃撃バトル、心に抱えた闇を映し出すシリアスなシーンも。この不規則な変化の“波”を楽しめる人にぜひおすすめしたい作品。
もうとにかく序盤は“ドタバタコメディ”につきます。表向きは家庭的で子育てにも積極的な超がつくほど家族を愛するパパ、その裏の顔は韓国の国家情報院の優秀なスパイであるドフン(ヒョク)。とある貿易商社に勤めている設定ですが、いつも家におらず、急な出張もケガも多いのに、誰ひとり怪しんでいないのが逆に面白い(笑)。そんな夫を理解しながら家族をうまくまとめている妻ユラ(ナラ)と、おてんばな愛娘ミンソ(シン・スア)、さらになにかと問題を起こすドフンの父(イ・スンジェ)、ドフンの弟ジフン(キム・カンミン)、ジフンの妻ミリム(ユン・サンジョン)の3人を含めた6人が“ファミリー”。なんてことのない日々のやり取りに笑って、癒されて、深夜メシが止まらなくなるんですよ……。基本的に家族の食事シーンが多いドラマは、食欲が刺激されすぎて危険!
そんな8割はギャグ&ほっこり、2割はドフンの本業の様子が映ってシリアス。の塩梅だったのに、中盤からその比重が変化するんですね。序盤はドフン視点だった物語が途中からユラ視点に変わっていって、そこからグインと舵が大きく切られていく。もちろん想定内の設定だったという人もいるかと思いますが、あらすじを一切読まずに鑑賞し始めた私にとっては、「そういうこと!?」と思わず口に出してしまった瞬間も。互いの秘密が表に顔を出したとき、夫婦が下す決断とは? 改めて“家族”の存在について考えさせられる点も多いので、思わぬ一気観案件になるかもしれません。(エディターK)
『配達人 〜終末の救世主〜』/壮大なスケールで描く人気ウェブ漫画の実写版
韓国ウェブトーン原作の完全なるSFです。舞台となるのは、彗星の衝突によって砂漠化した2071年の韓国。大気は汚染され、人々は人工的に作られた酸素を買うことで命と生活を維持しているのですが、問題は階級の存在。生存者たちは、「コア(一番いい環境)」「特別(今私たちが暮らす都会みたいな環境化?)」「一般(シェルター的な密閉空間風?)」の3つに分けられ、それぞれのエリアで暮らしているのだけれど(階級の基準などは不明)、さらに階級からあぶれた「難民」もたくさんいて、彼らは砂漠化した廃墟でギリギリの生活を送っているという設定。
で、難民たちは当然のように差別されるため、「ハンター」となって酸素や物資の略奪をする輩も現れるわけです。そんなハンターの攻撃にも怯むことなく物質や酸素を各家庭に届ける「配達人」が、このSF物語のキーパーソン。配達人になれば階級も与えられるし、なる条件は“強い人”であることのみ。そのため難民たちの唯一の希望なのですが、その中でもずば抜けた強さを持つ伝説の配達人“5-8”(配達人は番号で呼ばれる)が、このドラマの主人公というわけです。演じるのは復帰ドラマ2作目のキム・ウビン。そんな5-8に憧れ、配達人を目指す難民のサウォルがもうひとりの主人公なのですが、演じるカン・ユソクはなんと1500倍のオーディションから選ばれし逸材です。
そして、このふたりに対抗するのが、優男イメージ強めなソン・スンホン。演じるのはそんな彼にしては希少な冷酷ヒール役で、財力も権力もNo.1のチョンミョングループの2代目御曹司リュ・ソクなのですが、更なる権力を手に入れようと難民虐殺まで目論んでいるわけなんですね。で、その計画を阻止し、階級のない社会に変えようと伝説の配達人5-8がサウォルたちとともに立ち向かうという筋書き。SFにありがちですが人物の描き込みがわりかし浅めで、そのせいかイマイチ盛り上がりに欠けるものの、壮大な物語をコンパクトにまとめつつ緻密なCG映像でスケール大きく感じさせて一気観させちゃう力技。マスクからのぞくキム・ウビンの鋭く優しい眼差しは相変わらずセクシーだし、カン・ユソクの天衣無縫な少年っぽさもキュートだし(実年齢は28歳!)。1話40分強の全6話。物足りなさはありますが、見始めたらあっという間です。(さすらいのライター山崎)
『九尾狐伝 1938』/大人が沼るKファンタジードラマの続編がスタート
あの麗しいイ・ドンウクが、これまで韓国で幾度となく題材にされてきた九尾狐を演じた『九尾狐<クミホ>伝〜不滅の愛〜』。『相続者たち』を手がけたカン・シンヒョが演出を担当しているだけに、ロマンスの上質さはもちろん、兄弟の絆を繊細に描いてくれました。ヨン(ドンウク)の異母兄弟ラン(キム・ボム)とのブロマンスも最高によく……そしてなんと言ってもジア(チョ・ボア)を何千年もひたむきに想い続け、「一度愛したら、永久にその人を愛し抜く」姿! 最終回で涙を流す人も多かったはず。そんな大人が楽しめる良作ファンタジーの第二弾が現在日韓同時配信中。まだ序盤ではありますが、前作とは時代設定が変わっているので、登場するキャラクターも新鮮! また違った作品として楽しめる仕上がりになっています。
シーズン1の続きというよりかは、ジアと出会う前のヨンや、関わりの深かった人物にフォーカスされたストーリー展開になっています。来世出入国管理事務所こと、要は三途の川の門番である奪衣婆(キム・ジョンナン)からまた頼まれごとをされてしまったヨンが、犯人を探すために過去へタイムスリップし、1938年に“不時着”してしまうんですね。奪衣婆と約束した「時の門」が閉まるまでに事を成せず、次に門が開く月食の日まで、その時代で過ごすことに。そこで過去の自分や、弟のラン、かつて苦楽をともにした元山神たちに会うことになるのですが、もちろんヨンが追っている“犯人”と無関係ではなく、少しずつ真相が明らかになっていきます。直球のファンタジーなので好みは分かれるかもしれませんが、緻密な脚本と演者の熱量で、自然に物語に没入できるんですよ。
そして特筆すべき点は、元・西方の山神ホンジュにキム・ソヨン(『ペントハウス』シリーズ)、紅白面をつけた謎の人物にリュ・ギョンス(『梨泰院クラス』)をキャスティングしているところ! 実力者同士の化学反応で、想像以上にのめり込める大人のファンタジー作品になっています。特にホンジュの美しさのなかに潜む恐ろしさや強さが(若干『ペントハウス』を彷彿とさせますが)、まさに役にピッタリとハマっている! 紅白面の人物とヨンの関係性も気になることながら、今後の驚きの展開や激しいバトル、シーズン1では見られなかったランのロマンスも楽しめる予感。(エディターK)