若手実力派のイ・ジェウク最新作のリベンジ・ミステリー『予期せぬ相続者』をはじめ、気付けば涙を流しているヒューマン×サスペンス『砂の上にも花は咲く』など、ノンストップ視聴間違いなしの話題作をセレクト。次に観る作品に悩んでいる人は、韓ドラマニアのライター&エディターのコメントともにぜひ参考にしてみては?
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班/エディターK
母の影響により、第1次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界へ足を踏み入れる。「寝不足だけど幸せ」を合言葉に、約20年間あらゆるジャンルの韓流ドラマを観続けている。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。ドラマを観るたびに推しの俳優が増えていく毎日です。
『砂の上にも花は咲く』/大人の“涙活”にぴったりな隠れ名作
あまり話題になっていないのが残念でなりません。とにかく和む、とにかく癒される、そんなドラマ。シルム(韓国伝統の格闘技、いわゆる韓国相撲)の神童といわれながら、一度も優勝できずに30歳を過ぎた青年ベクトゥ(チャン・ドンユン)がこの物語の主人公。実は、ベクトゥが所属するとある港町のシルムチームは今や存続の危機で、そのチームを立て直すという名目でユギョン(イ・ジュミョン)というちょっと謎めいた美女がやってくるところから物語が展開します。となると青春スポ根ドラマか?と思いきや、何やらミステリーな気配。実はこのユギョンがワケありで、ベクトゥには彼女が「ドゥシク」というかつての幼馴染にしか見えないのに、本人は否定するし、周囲にも別人だと一蹴されてしまうのですね。
幼い頃のドゥシクは、シルムの覇者でガキ大将だったのですが、とある事件によって家族ともども町を追われていたという経緯があり。で、このとある事件が物語全体をつなぐ芯のようなものでもあるのですが、それはちょっと置いといて。実は、ユギョンがやってくる少し前、この田舎町の貯水池で遺体が発見され、その被害者と最後に接触していたのが、どうやらドゥシクらしいという……。え?てことは殺人サスペンス? いやいや、ドラマは、程よく仕立てられたサスペンスで引っ張りながら、街の人々の人間模様や友情物語、そしてベクトゥの遅咲きな成長&恋物語をほんわかしたコミカルを交えつつ、いい感じに絡み合わせながら進んでいくと言いましょうか。その塩梅が実に絶妙。ベクトゥと本当はドゥシクなのか……なユギョンの関係性も最高で、少年そのまんまなベクトゥが大人なユギョンにガンガン突っ込まれたりするのですが、実は反対にベクトゥのペースにユギョンがタジタジと巻き込まれているのもめちゃ面白いし楽しいし。
ちなみにベクトゥを演じるチャン・ドンユンは相撲選手の体型を作り込むため14キロ体重を増量、対するユギョン役のイ・ジュミョンは名作『二十五、二十一』の、あの腹の座った正義感で泣かせてくれた委員長。日本ではまだ知名度低めではあるけれど、若手実力派の二人が紡ぐ物語は派手やかさはないものの、じっくりこっくり効いてくるあったかいスープのよう。ドゥシクはなぜ町を去ったのか。貯水池事件の真相は。実力ありながらベクトゥはなぜ一度も優勝できなかったのか。シルム選手として返り咲くことはできるのか。最後まで美味しく味わい尽くせる逸品です。(さすらいのライター山崎)
『殺し屋たちの店』/1話観るごとに引き込まれる新感覚アクション×スリラー
いい意味で、不完全燃焼です。「え、ここで終わられたら私(視聴者)はどうしたら?」と言いたくなるくらい全8話があっという間すぎて、圧倒的に物足りない。『殺し屋たちの店』というタイトルからしてクライムスリラーであることは想像に容易いと思いますが、アクションはスピーディでテンポがいいのに対し、叔父&姪の日常生活は不思議なリズムで魅せられていくんですね。この制作陣の駆け引きが素晴らしく、毎話飽きることなく凝視してしまった要因であると推測! あと『チャルドゥロ(よく聞け)、チョン・ジアン』など、エピソードタイトルの付け方も秀逸なのでぜひ注目してほしい。謎多き叔父チョン・ジンマン(イ・ドンウク)と両親を亡くし叔父に育てられたチョン・ジアン(キム・ヘジュン)の生活って、一見普通なのだけれど、どこか奇妙というか。その違和感の正体こそ、ジンマンの本当の姿や職業、そしてジアンの運命に紐づいているんです。
幼きジアンは、今まで消息不明だったジンマンと初対面した翌日にある事件で両親を亡くし、彼に引き取られることになるんですね。遠い田舎に移り住み10数年の時を経て、大学進学のために上京。それから間もなく「ジンマンが自殺した」という知らせを受けるんです。姪からしても謎でしかなかった叔父の存在。ただひとつ言えることは「自殺など絶対にする人ではなかった」ということ。不可解に思いながらも葬儀を終えたジアンでしたが、不意に見つけたジンマンのガラケーに突然、超高額振り込みの連絡が。幼馴染のジョンミン(パク・チビン)の協力のもとジンマンが立ち上げたという妙なウェブサイトを発見。アクセスすると、表向きはただのオンラインショップサイト、しかし実態は「マーダーヘルプ」という違法サイトで、大量の武器が売られている恐怖。危険を察知したその瞬間、何者かがジアンの命を狙いに襲撃! 初っ端からガチガチのアクションシーン連発なので、この手のジャンルに目がない人にはぜひ観てほしいです。ド派手なアクションが繰り広げられたと思ったら、急に過去の回想シーンに移るなど、とにかく緩急の付け方がうまい。そしてアクションに慣れているドンウクと若手実力派のへジュンのケミも最高にいい。
霧がかかっていたジンマンの人物像が徐々にクリアになったり、ジアンの生い立ちが見えてきたり、謎の殺し屋集団の正体がわかってきたりと、スピーディな展開でも演出が細やかで、期待以上の仕上がりでした。ただ最終回の終わり方はモヤッとするのと伏線回収ができていないところが多々あるので、シーズン2があるだろうなと思っています。というかないと困る(涙)!(エディターK)
『魅惑の人』/演技派の共演が話題となった王道ロマンス時代劇
『賢い医師生活』のイクジュンことチョ・ジョンソクにほっと心を温められた人は多いはず。8年ぶりのミュージカル『ヘドウィグ』のチケットは秒速で完売。そんな人気実力を兼ね備える彼が朝鮮王朝の王役に挑むロマンス時代劇です。権力をほしいままにしたい高官と、そうはさせじと踏ん張る王の権力闘争がやっぱり見どころではありますが、相手の先を読み、裏をかき、ぐいぐいと追い詰め、追い詰められるその攻防は、まさしくこのドラマのモチーフである“囲碁”のようでも。そこに絡んでくるのが、王への恋心を抱きながらも“復讐”を決意した男装の天才棋士の存在。演じるのはロマンス時代劇俳優としても定評あるシン・セギョン。つまり、その思惑、その心をさらに読み取らなければならないのは、悪徳高官よりもむしろ、その男装のロマンス相手なのか! ということで物語。
チョ・ジョンソクが演じるチナン大君は、異母兄の王に命じられ、人質として清に赴くのですが、この時点で兄は弟思いだし、大君も兄を慕う良好な間柄なのですね。ところが、大君が清から戻ると状況は一変。外戚高官に操られた王はその疑心暗鬼から大君を冷遇するわけです。そんな彼の唯一の癒しとなるのが、ある大志のため賭け囲碁で資金を集めている男装の天才棋士(シン・セギョン)。囲碁の名手でもある大君は、偶然、彼と対局することになるのですが、囲碁を打ちながらお互いに心通わせたりするわけで。名前を明かさない彼(彼女)に大君は「モンウ(濠雨)」という名前までつけちゃったりなんぞして。実は、モンウは清廉な高官の娘で大君の誠実な言動に触れるにつれ、次第に惹かれてしまうわけですよ女子として。ところがです。そんな最中、王が急死。どうやら大君側の外戚高官らの陰謀絡みのようなのですが、それによりモンウの父は清に罪人として送られ、モンウもまた親友とともに捕えられてしまうという。
王イ・インとなった大君にモンウは友として助けを訴えるわけなのですが、政治のため王はモンウとの仲を切り捨ててしまうのです。親友は死に、多分父も助からない。かくしてモンウは復讐を決意、3年後、男装棋士として再び、王イ・インの前に現れるという次第。信じたいけれど信じてはいけない、復讐しなければならないのにまた惹かれてしまう……シン・セギョンの葛藤もまた萌えポイントですが、やっぱりチョ・ジョンソク。モンウの心を読みながら、何手先も見据えたその腹の内を静かに深く表現する演技力。絶品です。脇役陣の迫真の演技の応酬もさすが時代劇ならでは。大人のロマンス時代劇が好きなら必見。(さすらいのライター山崎)
『予期せぬ相続者』/韓国のトップの座を狙い、人生を賭けたリベンジに挑む
若手のなかでも群を抜いて演技センスが光るイ・ジェウク。ヌナに片想いする純粋な青年役から、意地悪さが尋常ではない高校生役、長年片想いする田舎の公務員役、ボクシングに命をかける少年etc.。どんな役でも自分のものにして表現できるし、独特のオーラも際立っているし、プラダ然りファッションシーンでも注目されているしで、若手No.1俳優と言って間違いなしなんですね。そんな彼の最新作は、U-KISS出身イ・ジュニョンとのケミが良すぎてNGを連発したという『予期せぬ相続者』。韓国のトップの座を狙う野心たっぷりの若者3人の運命を描いたリベンジ・ミステリーです。ジェウクが作品会見で「これまで演じてきた役柄とは180度違う役。新しい僕の姿を見ていただきたい」と述べているだけあり、まだ4話までの視聴ではあるけれど、すでにダークなジェウクに沼っています。
“殺人者の息子”のレッテルを貼られた高校生ハン・テオ(ジェウク)が転校先で出会ったのは、いかにも「財閥一家」らしい横柄な態度のカン・イナ(ジュニョン)。しかしイナは実はいわゆる“正統”ではなく、会長の婚外子のために一族から邪険にされる日々。立場は違えど「家族」にネガティブ感情を持つ同志なわけです。イナは幼い頃から一族への復讐を企てながらも正直そこまでのキレ者ではなく、テオの優秀っぷりに惚れ込んで、ある意味利用しようとするんです。が、テオは持ち前の頭脳を生かして長年虐待を受け続けた継父を刑務所にぶち込んだやり手。当然、忖度なしでイナの提案に乗るわけがない。そこで同盟を組むんですね。それぞれの利害が一致したところで、長期にわたるリベンジ計画がスタートするわけです。ここで勘違いをしてほしくないのが、本作は単なる復讐劇ではないというところ。あくまで目指すのは韓国のトップであり、最終目標は自分が頂点に上り詰めること。結果的に財閥一家を蹴落とすことにはなりますが、完全なる頭脳戦なので、アクションなどは(今のところ)まったくなし。最近多い全12話のコンパクトストーリーだけあって、物語の見せ方、まとめ方、その経緯……にも注目したいと思います。
そして本作のヒロインポジションのナ・へウォン役のホン・スジュは、コ・ユンジョン、ノ・ユンソなど今スターを輩出しまくっているMAA事務所所属なので、今後もっと話題になるはずです。テオ、イナ、へウォンの王道三角関係も終盤に連れて物語と密接に絡んでいきそうですし(というかそうであってほしい)、ダークなジェウクの切ない表情や涙が見られることを期待。(エディターK)