03 田中博子さんの文旦のキルシュ入りジャム

アルザスのジャム職人、フェルベールさんのもとで学んだ田中さんが柑橘系のジャムのコツを伝授

キルシュは最後にたっぷり加えて、飛ばさずに仕上げると大人の味に

 日本にもファンの多いアルザスのジャム職人クリスティーヌ・フェルベールさんのもとでジャムやお菓子作りを学んだ田中さん。「今の時期はいちごや柑橘のジャムをよく作ります。地元の福岡も柑橘の宝庫ですが、最近気に入っているのは高知の文旦。さっぱりした甘さで、アルザス名産のキルシュとよく合います」。同じ柑橘系のジャムでも種類によって作り方は変わるそう。「文旦は白いワタもおいしいので半分くらい残します。実は果汁が少ないので、煮るために別に果汁が必要。文旦の代わりに、味が近いグレープフルーツでもいいですよ。グラニュー糖を数回に分けて加えたり、途中で一晩置いて浸透させるのはアルザスで学んだ方法です」。仕上げのキルシュはアルコールが苦手なら飛ばしてもいいけれど、「しっかり残すと、文旦と一緒にお酒の風味も楽しめますよ」。

Profile

パティスリークリエーター。福岡にて製菓教室「クレアパ」主宰。イベントや出張レッスン、ジャムの販売などを積極的に行う。近著に『ジャムの本』(東京書籍)がある。

BASIC RECIPE

文旦のキルシュ入りジャム

[材料](約1ℓ分)

文旦約2個
 皮 500g分
 実 500g分
果汁(文旦またはグレープフルーツ) 200㎖
グラニュー糖 720g(皮と実と果汁の合計の重さに対し60%量が目安)
キルシュ 大さじ2
※瓶は110℃のオーブンで20分熱して殺菌し、ふたはアルコールスプレーで殺菌しておく。

[作り方]

1 文旦は皮と実に分ける。実は薄皮や筋が残らないように取り除き、正味500g用意する。
2 皮の内側の白いワタは半分くらい取り除く。
3 2の皮をたっぷりの水とともに鍋に入れ、火にかける。沸騰して15分たったら湯を捨てる。もう一度鍋に水を入れて火にかけ、沸騰して30分ほど煮て、湯を捨てる。
4 再度鍋に水を入れて15分ほど煮、皮に竹串をさして柔らかくなっていたらザルに上げて水を切り、千切りにする。これを正味500g用意し、1 の実、果汁とともに鍋に入れる。
5 分量のグラニュー糖のうち320gを鍋に加え、中火にかけて、木べらでかき混ぜつつふたをしながら煮る。実が完全にくずれ、全体がふっくらとして沸騰したら火を止める(このときふたをしたまま、蒸らしてもよい)。
6 耐熱容器に移し、表面にラップをぴったり張って一晩置く。
7 6を鍋に戻し入れ、グラニュー糖200gを加えて中火にかける。全体にとろみがついてきたら残りのグラニュー糖を加える。再度とろみがついてきたら最後にキルシュを加え、でき上がり。
8 熱いうちに瓶に詰め、瓶のふちをスポンジ等で拭いてふたを閉める。瓶が熱いうちに湯でさっと洗い、ふきんで拭いたら、逆さまにして完全に冷めるまで置いておく。

+ ADVANCED RECIPE

メレンゲと水切りヨーグルト、ジャムのデザート

[材料](5×7㎝・約12個分)

卵白 80g
グラニュー糖 80g
プレーンヨーグルト 約1パック(400g程度)
文旦のキルシュ入りジャム 適宜

[作り方]

1 メレンゲを作る。ボウルに卵白を入れて軽くほぐし、分量のグラニュー糖から大さじ1を加え、ハンドミキサーで泡立てる。跡がうっすら残るくらい泡が立ったら、残りのグラニュー糖の半量を加えさらに泡立てる。柔らかな角が立つくらいになったら残りのグラニュー糖を加え、しっかりとしたメレンゲを作る。星形口金をつけた絞り袋に入れ、オーブンシートを敷いた天板の上にらせん状に絞る。110℃に予熱したオーブンで約3時間焼く。オーブンシートからはずし、すぐに乾燥剤と一緒に密閉容器に入れて冷まし、密閉保存する。
2 ザルやコーヒードリッパーにコーヒーフィルターをセットし、ヨーグルトを入れて、冷蔵庫の中で3時間くらい水気を切る。
3 器に 2 の水切りヨーグルトとジャムを盛り、メレンゲを添える。

「アルザスで知ったスイスのデザート。本来はクレーム・エペスという発酵クリームを使うのですが、代わりに手軽な水切りヨーグルトで。メレンゲは湿気りやすいので、しっかり密閉して保存してください」

SOURCE:SPUR 2017年6月号「しあわせは瓶の中に 小さなジャムの宇宙」
photography:Nao Shimizu  edit:Kaori Okuda

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