2. 「僕、リスクを負うのは怖くないんだ」

アンセルの父、アーサー・エルゴートは有名なファッション・フォトグラファー。母はダンサーで、オペラの演出家でもある。そんな自由なアーティスト一家で育った彼は、何事も恐れず挑戦するように育てられた。その冒険心はもちろん、ファッションでもそう。

「父はいい洋服が好きだけど、気取ったスノッブじゃないんだ。L.L.ビーンのシャツを着たり、シンプルなスタイル。だから僕自身のファッション・センスはむしろ母の影響が大きいかな。覚えているのは、母にそのドレス何?、って訊いたら、『あ、これはアズディンっていう友達にもらったの』って。つまり、アズディン・アライアからのプレゼントだった(笑)。母はとてもシックな人で、みんなの憧れだったんだ。僕が自分の着る服を意識しはじめたのは高校生くらいだったんだけど、学校ではよく『攻めてるな』ってからかわれたよ。一風変わった格好をしてたから。パープルのナイキ履いていったら、クレイジーだ、って言われたりね。でも気にしなかった。自分がトレンドを作ったとは言わないけど、しばらくしたらみんなパープルの靴履いていたし(笑)。僕、リスクを負うのは怖くないんだ」

「いまだにそれをからかわれることもある。『レッド・カーペットであんなの着るなんて!』とか。それは僕が『ノー』と言わないから。たとえば、長年一緒にやっているスタイリストがトム・ブラウンの短パンのスーツとか持ってきても、『それいいね!』って。暑いときには長いパンツ履きたくないしね」