#LifestyleINSPO
(右)東京の展示会に出張し、コーヒーをサーブする野崎さん。
(左)「"普段の食卓"を囲めば距離も縮まる」と本間さん。この日は細川さん宅のお庭で。
撮影協力 : HERO INTERNATIONAL
移住=今の暮らしをスパッと切り捨てること? 大事なのは自分にとっていいあんばいを探すことではないだろうか。ふたつの土地を行き来するふたりに二拠点生活のリアルな声を聞いた。
「田舎でやりたいことがあるなら、まず家を借りてみるのは一つの手かな」と語るのは、スタイリストで「GOOD DAY COFFEE」オーナーの野崎美穂さんだ。野崎さんは、サーフィンにハマったのを機に10年ほど前から静岡県・御前崎に家を借り、東京との二拠点生活を始めた。「トライアルのように住み始めたので自分も楽だったし、周りに自然と話が広まったのもよかったんだと思います。いきなり移住となると決断が必要だし、実際はそうでもなかったとしても、『何かをなくしてしまうかも』という恐怖が生まれたと思うから」
その後、パートナーの仕事の関係で、長野県・白馬乗鞍にも拠点が必要になり、現在は、4月中旬から12月中旬は御前崎、そのほかの時期は白馬乗鞍、スタイリストの仕事が入れば東京に通う。「私の場合はサーフィンでしたが、野菜作りでもなんでもいいので、その土地のコミュニティに入れる趣味があるとすごく世界が広がるかも」
フリーランスの編集者・プランナーとして働く本間裕子さんは、2015年から実家のある東京と、夫の赴任先の熊本で二拠点生活を送っている。平均すると月に2~3回往復し、東京では打ち合わせを、熊本では編集や執筆を進める。熊本に知り合いはいなかったが、料理家の細川亜衣さんとの出会いがきっかけで、ご近所づき合いが始まり、自分たちの手が足りなくなると細川さんをはじめ友人たちが娘の面倒を見てくれたり、お互いの家を行き来して食事をしたりと、親戚のようなつき合いをしてきた。「熊本では人とのつき合い方を学びました。温かく迎え入れてくれた人たちのおかげで、自分の意識も変わり、世界が広がりました」
二拠点生活を成功させるために譲れないのが仕事だ。地方で新たに仕事を作るのはハードルが高いからこそ、「どうしたら今の仕事を続けられるかを考えたほうがいいのでは?」と本間さん。「少しでも家賃を浮かすためにどちらかの家だけでも同じようなスタイルの人とシェアするとか、友達の家に泊めてもらうのもありですよね。移住によって、手放すことばかり考えなくてもいい。失ったとしても、それは別の何かを得るときなんだと思うようになりました」
野崎さんと本間さんに共通するのは、その土地のコミュニティとつながる趣味をもち、「困ったときはお互いさま」と言える人間関係を築くこと。そのふたつが二拠点生活のカギのようだ。
SOURCE:SPUR 2018年2月号「2018年の#INSPOを探せ」
text:Hiromi Kajiyama
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