"あの"問題作がついに映画化

Ⓒ2019映画「翔んで埼玉」製作委員会

魔夜峰央さんにインタビュー

 衝撃的な"埼玉ディス"名言を数多く生み出し話題となった『翔んで埼玉』。そんな稀代の"問題作" が、初版から30年以上の時を経てついに映画化された。だが、そもそも原作者の魔夜峰央さんはなぜこの作品を描くに至ったのだろうか。
「新潟から上京するとき、当時の編集長に『所沢に住みなさい』って言われたんです。その言葉のままに引っ越したら、車で5分くらいのところに編集長と部長が住んでいたんですよ。これは監視するための罠だと思って、脱獄の機会を狙いながら描きました(笑)。所沢で生活をする中で、いわゆる"埼玉の劣等感"みたいなものを街の空気感から感じ取ったんです。きっとこんなことを考えてるんじゃないかなって」
 そうして始まったこの作品はいまだ3話しか発表されておらず、完結を迎えていない。でも、今後も続きは描かないという。「横浜に引っ越したために自虐ネタではなくなり、描けなくなってしまったんです。しかも、今回の映画では漫画のその先の世界を描いている。たとえば(京本政樹演じる)埼玉デュークのモデルは私の中でゴルゴ13だったんですけど、今描こうと思ったら京本さんしか出てこない。絶対引っ張られちゃうので、そういう意味でも難しいですね」
 今回のキャスティングには、魔夜さんも太鼓判を押す。特に主人公・麻実麗を演じたGACKTに関しては、彼が引き受けてくれれば映画は成功すると思ったほどだそう。それに加え、脚本の感性も酷似しており目を見張るものがあるとのこと。
「埼玉と千葉の合戦シーンで行われる、あの無意味なカードバトル! ひたすらくだらないことを続けるところが私のセンスとまったく同じ。あと、群馬の空を飛ぶプテラノドンも好きですね」
 そして魔夜さんは、大人が真面目にふざけたこの映画を、思うままに心から笑ってほしいと語る。
「どうやらみなさん、笑うと埼玉をバカにすることになる、と遠慮するようなんです。でも、どうぞ安心して好きなように笑ってください。すべての責任は監督がとりますので!(笑)」

『このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉』
1982から83年にかけて『花とゆめ』別冊(白泉社)に3話掲載。東京都民から埼玉県民がひどい迫害を受ける、という架空の日本が舞台の埼玉版『ロミオとジュリエット』。清々しいまでの"埼玉ディス"が支持され、2015年宝島社より復刊された。

映画『翔んで埼玉』
東京都の迫害から埼玉を解放するために立ち上がった、アメリカ帰りの隠れ埼玉県人、麻実麗。都民という地位を投げ捨て彼についていく壇ノ浦百美の協力を得て、永遠のライバル千葉解放戦線、そして東京都に立ち向かう。ロマンスあり、合戦ありの大スペクタクルエンターテインメント!(公開中)

魔夜峰央さん

1973年に『デラックスマーガレット』(集英社)でデビュー。『花とゆめ』(白泉社)にて代表作『パタリロ!』の連載を開始。現在も『別冊花とゆめ』『MELODY』(ともに白泉社)にて連載中。2015年には『翔んで埼玉』がネット発で話題となり、約30年ぶりに宝島社から復刊された。
Ⓒ魔夜峰央『このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉』/宝島社