南仏のウィークエンドハウスへ Part.01

ショップでインテリアの出発点は、ひとつの食器や花瓶から

1 リビングルームにて。3匹の愛猫のうち一番の古株・ヴォーグとサフィア。手前右、70年代の木のついたては、リル・シュー・ラ・ソルグのヴィンテージ・ショップ、パスカル・ボンヌフォンで見つけたもの。3色のランプは、ダイニング・コーナー(7)と色違いで配した(南仏のウィークエンドハウスへ Part.03 →

2・3 サフィア宅があるのは、まるで映画のセットのような村、アンスイ

4 ヴィットリオ&パリージ&ナニ・プリーナの70年代デスクは色が気に入って。窓の向こうからオフィス・コーナーを眺めるのは、やんちゃ猫のグラムール君5 バスルームは、いわばポップな"ブドワール"(私室) 
6 ヴォーグと戯れるサフィア

7 作家の署名入り50年代のタペストリーはコントラストで(南仏のウィークエンドハウスへ Part.03 →
8 ピコーの陶器は100点近く集めていて、キッチンの壁にもずらり(南仏のウィークエンドハウスへ Part.02 →
9 寝室の壁のランプは、ジャン・ロワイエール作。奮発してオークションで競り落とした。クッションはマラケシュのイヴ・サンローラン美術館のショップで

テーマを見つけ発展させる。それが、家づくりの愉しみ

 「これが、今あなたが手にしている50年代のティーカップよ」。猫をなでながら、サフィアはこう言ってロベール・ピコーの本を見せてくれた。南仏の陶芸の街、ヴァロリスでピカソと親交を深めた陶芸家だ。「このアパルトマンを借りることになって最初に買ったのは、ピコーの食器。インテリアづくりの出発点はいつも、食器や花瓶なの」 アパルトマンがあるのは、南仏・プロヴァンス地方リュベロン南部に位置する、アンスイ村。「フランスで最も美しい村々」協会公認の約160の村のひとつだ。ホテルは数えるほどの民宿のみ、公共交通機関はなく、住人の登録した車しか入れないから、驚くほど静か。観光化は阻まれ、時が止まったかのような昔ながらの佇まい。“アール・ドゥ・ヴィーヴル”(直訳すると“暮らしの流儀”。衣食住、特に食と住にこだわったフランス特有のライフスタイル)を追求する彼女には、ぴったりの環境だ。彼女と夫のブルースは昨年、村の中心にある建物のうちテラスのある1フロアを借り、キッチンからリビング、ダイニングまでが一続きになった家に改装した。

 折衷主義を得意としつつ、一貫した世界観を大切にするサフィアは、家ごとに周りの環境に適したインテリアのテーマを立てる。パリのアパルトマンはグラマラスな“ハリウッド・リージェンシー”スタイル、以前所有していたノルマンディーの別荘はシック&カントリーだったのに対し、この新しい別宅は、ポップでカラフルな、50〜60年代風だ。「インスピレーションは大好きなデコレーター、マドレーヌ・カスタンが手がけた家。バンブーの家具にあふれた南仏の家よ」と、テーマを明かしてくれたサフィア。30年代から長い間活躍し、ネオクラシックなスタイルで知られるカスタンの、意外な部分だけを切り取ったのだ。こうして、バンブーの家具とピコーの陶器を主役に、アンスイの家ではさまざまな色と形がハッピーに共存している。

Profile
Safia Thomass Bendali
パリ生まれ。ファッション誌やインテリア本の編集を経て、ソニア リキエル広報に。その後フリーのPR、現在はラデュレが展開するブランド「テ&ボーテ by ラデュレ」のジェネラルマネージャー。テーブルウェアやアンティーク・ジュエリーの収集で知られる。また無類の猫好きとして、一昨年には猫のライフスタイルについて綴った本『Mon Catbook』(Editions du Chêne刊)を発表した。

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