写真、ファッションを中心に、広がる輪。企画のアイデアは画期的で多様性にあふれている
【参加することが支援になる、パリでのチャリティ・イベント】
チャリティ・イベントは、献金だけでなく、新しい才能を発見する機会。そこに参加したクリエイターたちを紹介しよう
ARTCODEUA
ウクライナの若手ブランドを集めて
キーウからパリに避難中のデザイナー、リリア・リトコフスカヤのイニシアチブで、11のブランドを集め4月初旬の4日間開かれた期間限定ストア。各ブランドは自由に寄金先を選んだが、その大半は医療団体。
Chego Jewelry
「チェゴ・ジュエリー」のデザイナーは、モデルのゼニア・ホロヴニア。戦争勃発後最初の5日間はキーウのシェルターで過ごし、その間にはジュエリー画像のNFTを構想した。現在はベルリンに避難中。シルバーのジュエリーは手作りで一つ一つ形が違い、パールや鉱石、溶岩をあしらったものも。愛犬のハーヴィーは爆弾の音がトラウマとなり、今では一匹が耐えられないと語る。
Poche
デザイナーのナディア・シオミク(右)は、妹(左)とともにキーウからバルセロナへ。日常的なモチーフをモダンに解釈した「ポシェ」のピースはシルバーか真鍮にK18コーティング。生産は続行可能で、日本ではユナイテッドアローズに入荷予定。
SITRUK STUDIO
音楽とアート、ファッションの複合イベント
ウクライナ・コミュニティにすっかり溶け込んでいるフランス人で、キーウでの滞在歴もあるジュリアン・シットリュク。画家、フォトグラファー、そしてミュージシャンの彼が3月上旬に開いた期間限定スペース「シットリュク・ステュディオ」では、プラトニック・ラブのウェアやジュリアンによる絵、彼のガールフレンドでウクライナ人モデルのアナスタシア・シルヴァによるオブジェを集めてチャリティ・セールが開かれた。日替わりコンサートの一つが、ジュリアンとワレリア・カラマンによるパフォーマンス(下右写真)。
Julien Sitruk & Valeriia Karaman
前衛的なパフォーマンスは、ワレリア(左写真・左)が書いた詩の朗読にジュリアンが即興音楽風のギターを添えて展開。モルダヴ生まれ、幼くしてキーウに移住したワレリアは映画『ライトハウス』(’19)で注目された俳優であり、モデル、アーティスト、エコ活動家でもある。
Platonic Love
キーウ出身、パリ在住のアナスタシア・マシャヴェッツによる「プラトニック・ラブ」は過剰生産を避けるため完全受注制。彼女の母が生産を仕切っていた。ウクライナの縫製はコストを抑えつつクォリティが高いので、同等のアトリエを見つけるのは難しく、今はあいにく休業中だとか。
【Bettter.Communityが目指すこと】
(右)Bettter.Communityのホームページ。メニューのHireセクションでは各クリエイターのサムネイルをクリックするとプロフィール、ポートフォリオ、連絡先、当面の居住地までがわかる(左)ジュリーのルーツはマリオポール。彼女は現在ギリシャに避難中
ウクライナのクリエイターたちを世界に広め、彼らに仕事の機会を与えるために
3年前までキーウでウクライナ版『VOGUE』のファッション・ディレクターとして活躍していた、ジュリー・ペリパス。退任後にはサステイナブルなブランドを立ち上げた彼女が、ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まってすぐ方向転換して始めたのが、Bettter.Communityだ。フォトグラファー、ビデオグラファー、スタイリスト、ヘアメイク、デザイナーからアーティストまで、60人余りのウクライナのベスト・クリエイターたちをオンラインでクライアントとつなぐための非営利団体である。各デザイナーとのコンタクトに協力しているのはデザイナーのアンナ・オクトーバー。アーティストや建築家など広いスペースを必要とするクリエイターのための合同レジデンス&アトリエも、もうすぐ西ウクライナにオープンする。働き続けたいウクライナのクリエイターたちの、具体的なニーズにこたえるプラットフォームだ。