「本能を揺さぶる『魅力』の法則」 #11

エロい女になる準備はできてますか!?

 魅力的な人になりたいなら、恐れ知らずで、他者に依存せず、いつも落ち着いている、エロい人になりましょう。
 これが、魅力的な人の4資質です。
 ほとんどの人の場合、4つのうちひとつ、もしくはすべてが欠落しています。だから4つの資質を身につければ、たちまち誰もが憧れる別格の人になれます。


さぁ、書店でこの本を手に取ったことのある人! または「気になるけどちょっと手に取るの恥ずかしい……」と思って、のばしかけた手を引っ込めたことのある人! 手を挙げてください。きっとたくさんいることでしょう。私もタイトルを見た瞬間に「そんな法則あるなら教えてくれよ!」と、もう他の用事全部投げ捨てて一気読みしましたね。だってそんなんあるなら知りたくないですか?

しかし、まず著者紹介を見てみると、「Dr.アレックス・シラー」と名乗ってはいるものの「本物の医者ではありません」という注釈が。肩書きはセックスライフ・コーチ、パフォーマーとなっていて、ドクターとつくのも芸名なのだとわかります。かなりコミカルな芸風のようで、本書の内容も「なるほどなー」と頷きながら読んでいると、突然「定期的に脳みそが吹っ飛ぶような激しいセックスをしなければ、明瞭な思考力は得られない」「高級コールガールに間違われたら成功」なんていう見出しに遭遇して「!!!!!」となることも……。(確かに定期的に脳みそが吹っ飛ぶようなセックスはしたいところですが)

定期的に「いやいやいや」「そこまではちょっとできない!」みたいな、なかなかハードコアなフレーズが出てきて笑ってしまうんですが、アドバイスの内容はかなり細やか。特に序盤に登場する「相手に期待をするから、勝手に思い描いた期待が現実にならないと『失敗した』と思い込んで、敗北感のせいで積極的になれなくなる」という箇所、「かまってほしいオーラは人の魅力をどん底まで引き下げる」などのフレーズには心にグイグイ来るものがありました。

著者が提唱しているのは「Never Sleep Alone」。要するに、この本を読んで、並の女から別格の女になったら、自分が一人で寝たいと望んだ場合以外は、一人で寝る必要は金輪際ないということです。これもまたインパクトありすぎてちょっと笑ってしまったんですが、この本、どんなにぶっとんだことが書いてあるようでも、読んでいると「自分の周りのモテている人はこれ、できているな」「こんなとこ、とっくにクリアしてるな」と何人もの顔が浮かんでくるので、ちょっとただのトンデモ本とか、面白おかしいだけの本だとはとても思えないところがあるんです。
面白おかしい本ではあるので、その面白おかしさで、時にガーン! と来るフレーズを笑ってやり過ごしつつ、自分にとって重要だと思われるポイントを取り入れていくといいのではないでしょうか。あまりにも逃げ場のないマニュアル本って、ちょっと息苦しいときがありますが、すごいアッパーで語り口が日本ではあり得ない潔さで、セックスとかエロとかいっぱい書いてあるんですけど、なんだかさわやかに読めました。

まっすぐ欲望に向かっていけばいいじゃない! というはっきりした意志とユーモアがあるから、こういう本になったのでしょうね。血眼で「で、どうしたら本能を揺さぶれるの!?」という方にとっては、少々物足りないかもしれませんが、「別格の女」になるためのアイデアが豊富に書いてありますので、こちらも「なるほど……そういうのもあるのか」という気持ちで読んでいくと楽しいと思います。

「本能を揺さぶる『魅力』の法則」(Dr.アレックス・シラー/大和書房)

雨宮まみプロフィール画像
雨宮まみ

ライター。『女子をこじらせて』(ポット出版)で書籍デビュー。以後、エッセ イを中心にカルチャー系の分野でも執筆。近著に『東京を生きる』(大和書 房)、『自信のない部屋へようこそ』(ワニブックス)がある。

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