自然がラグジュアリーな、北欧のホテルとレストラン



映画を見ていて「これ食べてみたい!」「ここ行ってみたい!」と思うことはしょっちゅう。内容がイマイチでも、思わず「後で調べよう」と頭の中でメモ書きすることってありますよね。でも最近見た二本は映画としても魅力的で、インパクト大でした。『ノーマ、世界を変える料理』と『エクス・マキナ』。それぞれデンマークのレストランと、ノルウェーのホテルが舞台となっています。

『ノーマ~』の方はまさに世界をあっと言わせたレストランであるノーマと、そのシェフのレネ・レゼピについてのドキュメンタリー。最近のフーディーズの世界はもう普通においしいものが好きなだけじゃ追いつけないほどコンセプチュアルでアーティスティックで、戸惑ってしまうこともあるのですが、そんなフーディーズをも驚かせたノーマのコンセプトは「北欧」。北欧で取れる食材にこだわり、その瞬間自分がいる場所と季節を感じさせる料理は、映画に登場する批評家に「ノーマの料理は私の音楽の聴き方、本の読み方まで変えた」と言わせるほど。さらには口を開くたび「Fuck」が飛び出すようなシェフ、レネの情熱的なキャラクターが立っていて、ますます興味が湧くのでした。




『エクス・マキナ』の方はフィクションです。それもサイエンス・フィクション。今あちこちで話題なAI(人工知能)と人間の境界をめぐるお話なのですが、話したいポイントは数々あれど、その舞台となっているノルウェーのホテル、Juvet Landscape Hotelが素晴らしいのです。

この名前を検索すると、ノルウェーの壮大な自然と、それに調和したモダンな建築の画像がぞくぞく出てくるはず。映画では場所が特定されていませんが、実際はオスロから車で6時間ほど。公開後は訪れる人が増えているそうです。ただし『エクス・マキナ』ではホテルではなく、天才プログラマーが隠遁する豪邸として登場します。彼がそこで一人こもって開発しているのが、AIを搭載した女性サイボーグ。プログラマーを演じるのがオスカー・アイザック、サイボーグ役にアリシア・ヴィキャンデル、AIをテストする青年がドーナル・グリーソン――と、今一番旬な俳優が揃って「人間性とは何か?」の駆け引きを演じるのですから、スリリングです。

それにしてもこの二本を見て思ったのは、本当に「自然」が誰もが憧れる贅沢になったのだなあ、ということ。北欧からそういうものが出てくるのは、自然の貴重さへの意識が高いからかもしれません。でもそのために大勢が飛行機に乗り、燃料を燃やしてはるばる出かけていくことには複雑な気持ちも残ります。本当は身の回りの自然を大切にしないと……と思いながら、散っていく桜を眺めるのでした。



『ノーマ、世界を変える料理』
監督/ピエール・デュシャン
出演/レネ・レゼピ
4月29日、新宿シネマカリテほか全国順次公開
(C)2015 DOCUMENTREE FILMS LTD



『エクス・マキナ』
監督・脚本/アレックス・ガーランド
出演/ドーナル・グリーソン、アリシア・ヴィキャンデル、オスカー・アイザック
6月11日、シネクイントほか全国ロードショー
映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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