ドラマ『ナイト・マネジャー』の、トムヒじゃないキャラにハマりそうです

先日も書きましたが、ここにきて、トム・ヒドルストンの「ロキだけじゃない」野心作が次々公開されています。テイラー・スウィフトとのゴシップで日本のファンが微妙な気持ちになっているちょうどそのときに、この連続公開。本当に偶然だと思うんですけど。

個人的には映画『ハイ・ライズ』『アイ・ソー・ザ・ライト』よりハマりそうなのが、もうすぐ配信が始まるドラマ『ナイト・マネジャー』です。原作はジョン・ル・カレ。いかにも彼らしい陰謀渦巻くスパイの世界で、トム・ヒドルストンが演じるのはある女性への思いを秘め武器商人の組織に潜入する男、ジョナサン・パイン。彼は元からスパイではなく、物語の初めではホテルの夜勤支配人=ナイト・マネジャーを務めています。ちょっと73年の『愛の嵐』(英題は『ナイト・ポーター』)みたい。でも、私が好きなのは主役ジョナサンでも、『ドクター・ハウス』でおなじみヒュー・ローリー演じる悪役ローパーでもありません。

実はジョナサンをローパーの元に送り込む、英国諜報部のアンジェラ・バーがお気に入り。オリビア・コールマン演じるこのキャラクター、原作ではレナード・バーという男性なのですが、女性に変更された彼女の存在がドラマをぐっと面白くしているのです。妊婦で味のあるキャラはまるで『ファーゴ』(96)のフランシス・マクドーマンド。重大な話のときも紅茶とビスケットを勧める「イギリスのおばちゃんぽさ」もいいのですが、そういう女性だからこそ、パブリックスクール出の男たちのなかでひとり正義感を燃やす設定に真実味がある。彼らは巨悪を捕まえようとして悪を利用し、騙し合いになっているのです。そこでアンジェラが独自に立ち上げるのがジョナサンのオペレーション。スパイものの事務方としては『ミッション・インポッシブル』シリーズのジェレミー・レナーも素敵なのですが、ジェームズ・ボンドを支えるジュディ・デンチのMがいなくなってしまったいま、いちばん肩入れしたいキャラかも。監督もデンマークの女性監督、スサンネ・ビアが手がけています。



『ナイト・マネジャー』
監督/スサンネ・ビア
出演/トム・ヒドルストン、ヒュー・ローリー、オリビア・コールマン
8月26日より、Amazonプライム・ビデオにて見放題独占配信
(C)Producciones Fortaleza AIE MMXV

 

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映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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