2016年のベスト映画や各賞が世間を賑わせているこの時期に、場違いですよね。でもうっかり見たら笑っちゃったのです、『バッド・ママ』に。ミラ・クニス主演のコメディは仕事や育児に追い詰められ、ブチ切れた母親たちがハメを外すお話。その切れっぷり、外しっぷりは『ハングオーバー!』チームの映画らしくお下品でエクストリームですが、モチーフ自体はみんなが普段感じていること。そこがよくできているのです。
タイトルの「悪い母親」も深読みすれば、別にそうなりたいわけじゃなく、むしろいい母親になろうとする人ほど自分がダメ母に思えてしまう、という意味。忙しすぎてあちこち手が回らなくなって、落ち込んじゃう……それって母親じゃなくても、誰でも思い当たるはず。そんなときに「身近な天敵」になってしまうのが考え方の違う他のお母さん、というのもありがちです。クリスティーナ・アップルゲイト率いるこの意地悪ママたちは、まるで大人になった『ミーン・ガールズ』(04)みたい!
でも「バッド・ママ」として開き直ったミラ・クニスと仲間は、周りに押し付けられたルールやイメージに反抗し、本当の問題に向き合いはじめます。現実はこんなにうまくはいかないけれど、最後はちょっとスッキリ。エンド・クレジットで流れるのがいつもの「NG集」ではなく、キャストのじんとくるインタビュー集なのも気が利いている。バディ・ムービーならぬ、女性のためのシスター・ムービーです。
『バッド・ママ』
監督/ジョン・ルーカス、スコット・ムーア
出演/ミラ・クニス、キャサリン・ハーン、クリステン・ベル
Netflixにて独占配信中
本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。