子どもたちの真剣な表情が目に焼きつく、『少女ファニーと運命の旅』

(C) ORIGAMI FILMS/BEE FILMS/DAVIS FILMS/SCOPE PICTURES/FRANCE 2 CINEMA/CINEMA RHONE-ALPES/CE QUI ME MEUT-2015
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ここ数年、ナチスやその時代を描く映画の公開が続いています。それ自体はとても意味があることなのですが、少し心配なのは、ナチスという絶対悪がある戦争を「わかりやすいドラマ」として消費していないか、ということ。ブラッド・ピット主演の『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』でもテーマになっていますが、いま世界各地で起きている戦争は構造が複雑でわかりにくく、名前も「紛争」や「内戦」になっていたりする。だからといって、別物ではないのは当然です。

『少女ファニーと運命の旅』は実話をもとにした、ナチス支配下のフランスに暮らすユダヤの子どもたちの物語です。スイスに脱出しようとする彼らは、途中で引率する大人とはぐれてしまう。それでも独自にスイスへ向かう9人のリーダーとなるのが、13歳のファニーです。一つ間違えば生死が決まってしまう決断を、彼女は自分の恐怖や不安を抑えながら下していくことになります。

でも、ファニーを飛び抜けて聡明なリーダー気質というより、むしろ反抗的で頑固な女の子として描いているのがいい。それが現実的な強さを感じさせます。ファニーだけでなく、ファニーの妹二人を含む他の8人の少年少女にも個性があり、それぞれが「頑張る」局面がある。その頑張りが胸を打つのです。過酷な状況だけでなく、子どもならではの一途さと溢れる力を見せてくれる演出をしたのは、ジャック・ドワイヨンの娘であるローラ・ドワイヨン監督。観ると勇気をもらえるのと同時に、やはりいまも命を奪われ、居場所をなくしている子どもたちが大勢いるんだ、ということを思い出させる映画でした。



『少女ファニーと運命の旅』
監督/ローラ・ドワイヨン
出演/レオニー・スーショー、ファンティーヌ・アルドゥアン、ジュリアーヌ・ルブロー
8月11日よりTOHOシネマズシャンテ座ほか全国ロードショー

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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