他にも犬や猫を飼っている人に訊いてみたいのですが、動物の実写映画を観ると、素直に「かわいい~」とならず、逆にハラハラしたりヒヤヒヤしたりしませんか? まず前提として「撮影で無理させてないかなあ」とちょっと心配なのに、物語上でも細かいところが気になったり。8月公開の『ボブという名の猫』と9月公開の『僕のワンダフル・ライフ』でも、「私って神経質?」と思ってしまうシーンがありました。
映画としては、どちらも「動物とともに生きること」をテーマにしたいい映画です。『ボブという名の猫』はベストセラーにもなった実話の映画化。ドラッグ中毒を抱えホームレスになった青年ジェームズが、猫との出会いがきっかけで人生を立て直す話です。ミュージシャンの彼はロンドンの路上で演奏していて、ビッグ・イシューを売って生計を立てるようになってからも、混雑した繁華街に立つのは同じ。そこに毎日ボブを連れていくのです! 逃げたり迷ったりしないんでしょうか。実際、ボブはそれで人気になった猫だと承知してはいても、うちの猫だったらパニックになるはず……と手に汗握りました。
とはいえ、ジェームズの気持ちはよくわかります。自分自身と向き合えないときも、動物に対して責任を持つことで小さな目標を設定したり、やり直す気になれる。ジェームズが直面する問題もさすが実話、と思わせるリアルさがありました。
一方、『僕のワンダフル・ライフ』はもっとファンタジックです。少年イーサンと大親友になったゴールデン・レトリバーのベイリー。でも犬は人間より短命。そこでベイリーはなんと、生まれ変わりを繰り返しながら再びイーサンと会うことを望むのです。そんな健気な話があっていいんでしょうか? しかも生まれ変わる犬たちのなかには保健所で処分されたり、ネグレクトされたり、勝手な人間の犠牲になる犬も。小さなことですが、自分が食べるものを与えて犬を太らせてしまう飼い主が出てきたときも、「やめてあげて~」と言いたくなりました。
でも、犬が人間よりもまっすぐ生死を受け入れているのは、確かにそうかもしれない。動物と暮らしていて実感するのは、こっちがあげるものよりずっと多くのものをくれる――ということなのです。アプローチは違っても、どちらにもこの感覚が基本にあるので、最後は納得できる二本でした。
『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』
監督/ロジャー・スポティスウッド
出演/ルーク・トラッダウェイ、ジョアンヌ・フロガット
8月26日、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開
『僕のワンダフル・ライフ』
監督/ラッセ・ハルストレム
出演/ジョシュ・ギャッド、デニス・クエイド、ブライス・ゲイサー、K・J・アパ
9月29日、全国ロードショー
本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。