2017.09.06

映画のなかにいるような「没入体験」を、『ダンケルク』で!

© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
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映画を映画館で観ることの特長を、よく「immersive experience」、没入体験と言います。まるで自分もそこにいるような感覚。観客が自宅で、また移動中に、手軽に映画を楽しめるいま、それは映画館にこだわるフィルムメーカーにとって以前にもまして重要になっているはず。私自身、「これは映画館にかかってる間に何度か見ておこう」と思う映画が今年は多い気がします。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『メッセージ』、公開中の『ベイビードライバー』、そしてなんといってももうすぐ始まるクリストファー・ノーラン監督の新作『ダンケルク』です。

クリストファー・ノーランといえば、デジタルやCGを極力使わず、フィルム撮影、特に大型のIMAXカメラでの撮影にこだわりつづけている人。その美しく壮大な映像は『ダンケルク』でも白眉で、戦争映画とは思えないほどです。物語はフランスの浜辺で包囲された英仏軍40万人を「撤退」させる実話。イギリスからは民間船がドーバー海峡を渡り、兵士たちを救おうとします。それを空から援護するのが戦闘機スピットファイア(なんと実物を使用!)で、操縦士がトム・ハーディ。ノーランはそのコックピットにまでIMAXカメラを持ち込んだので、観客はトム・ハーディとともに狭い空間にいるような気になるのです。興奮!

映像に加え、音も素晴らしい。というか個人的には、「没入体験」のためには映像より音がポイントだったりします。『メッセージ』も『ベイビードライバー』も、空間を表現する音、動きと一体となった音楽を味わうために映画館に通ったようなもの。『ダンケルク』はそこもすごくて、波の音や爆発音、そしてタイムリミットが刻々と迫るのを表現する秒針音がハンス・ジマーの音楽と溶け合っている。それが臨場感、緊張、エモーションをギリギリまで高めるのです。

こだわりだすと、どのIMAXシアターがいいとか細かくなってしまうので、基本的には近くにある一番スクリーンの大きな映画館、音のいい映画館を探してほしい。「映画館でないと意味ないでしょ!」とまで言いたい作品です。



『ダンケルク』
監督/クリストファー・ノーラン
出演/フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリン・カーニー、ジャック・ロウデン、ハリー・スタイルズ
9月9日、全国ロードショー

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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