『新感染』よりゾッとする! 『ソウル・ステーション パンデミック』

©2015 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & Studio DADASHOW All Rights Reserved.
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高速列車のなかで繰り広げられるゾンビ・ホラー、「釜山行き」こと『新感染 ファイナル・エクスプレス』。韓国映画らしい練りに練ったエンタテイメントが半端なかったので、ヨン・サンホ監督がその前に撮ったアニメーション作品『ソウル・ステーション パンデミック』を観にいきました。それがもう、ショック! と言っていいくらい、打ちのめされる内容。巧妙で息をつかせないのは同じ、でも『新感染』が最後まで戦う映画だとしたら、『ソウル・ステーション』はどんなに逃げても、逃げても……という映画だったのです。

ストーリーは前日譚のような話。釜山行きの列車が出るソウル駅近くで、ウィルス感染者が凶暴化し、人々を襲いはじめます。最初に犠牲になるのが路上生活者。ヨン・サンホ監督は格差社会の犠牲になった人々が、非常事態の際でも追い詰められ、切り捨てられるさまを描いていきます。

主人公の女性ヘスンはそこに巻き込まれるだけではなく、「過去」に追いかけられ、裏切られる。『新感染』ではコン・ユやマ・ドンソクが演じる、「家族を守る男性」に惚れますが、ヘスンの恋人や父親と言ったら! それだけでなく、この二本の映画はまるで表と裏、ポジとネガのような設定になっています。ラストを含め徹底的に残酷で、救いのない『ソウル・ステーション』があったからこそ、サバイバル・アクションの中心に「愛」を置いて泣かせる娯楽大作を作ったんだなあ、と感心。ただどっちも、ゾンビが全速力で走るのは反則だと思います!


『ソウル・ステーション パンデミック』
監督/ヨン・サンホ
9月30日、新宿ピカデリーほか全国ロードショー



『新感染 ファイナル・エクスプレス』
監督/ヨン・サンホ
出演/コン・ユ、キム・スアン、チョン・ユミ、マ・ドンソク
公開中

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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