今年初めに『バーフバリ 王の凱旋』(2017)にやられ、そのあと仕事で『きっと、うまくいく』(2009)を見返したせいもあってか、時々ふっと「インド映画見たいな~」という気分になります。話にちゃんと山と谷があり、恋と涙と踊りもある。そんなエンタメが見たいときにも便利なのが配信系。で、見つけたのが『平方メートルの恋』。2月にリリースされたNetflixオリジナル作品です。こんなのも製作されてるんですね。
大都会ムンバイで働く若い男女、サンジェイとカリーナ。どちらも家族と同居していて、恋愛や結婚もそれなりに考えているけれど、もっと切実な夢は自分の家を持つこと。これ、すごくわかる! と思いました。自分のスペースがあるのって重要。お得な新築マンションを見つけても一人ではローンが組めず、同じ職場の二人は偽装結婚を思いつきます。
と、プロットはベタなラブコメでも、サンジェイとカリーナの気持ちの動きは自然でリアル。とくに女性のカリーナが「人生に求めているもの」がはっきりしているのに好感が持てます。私は男性に面倒をみられたいわけじゃない、同じ価値観の人と暮らして、二人の表札を出したいの――と。
当然、そのゴールに到達するまでにはいろんな障害があります。宗教の違い、価値観の違い。経済的な問題もあるし、家族は別の思いを抱えている。きちんといまのムンバイの現実が反映されているからこそ、話に引き込まれていきます。もちろん、音楽とダンスもいっぱい。
『きっと、うまくいく』のアーミル・カーンが熱血オヤジを演じるスポ根、『ダンガル』でも思ったのですが、インド映画はストーリーの要所要所で「逃げない」というか、安易にならない。ぐっと粘って、エモーショナルな人間味を出してきます。映画ごとにテイストは違っていても、そこが魅力。これからも折に触れ、いろんな作品を楽しみたいと思います。
『平方メートルの恋』
監督/アナンド・ティワリ
出演/ヴィッキー・コウシャル、アンギラ・ダール、アランクリタ・サハイ
Netflix独占配信中
『ダンガル きっと、つよくなる』
監督/ニテーシュ・ティワーリー
出演/アーミル・カーン、ファーティマー・サナー・シャイク、サニャー・マルホートラ
4月6日公開
本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。