私たちの未来に向けたピンク。『ラフィキ:ふたりの夢』

©Big World Cinema.
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ケニア映画『ラフィキ』は、世界各地で高い評価を得ながら本国では上映が禁止されました。監督のワヌリ・カヒリはその撤回を求めて提訴し、結果1週間だけ上映され、観客が詰めかけたといいます。そこまで闘わなければいけなかったのは、『ラフィキ』が同性愛を描いているから。同性愛はケニアでは違法とされ、この映画に携わったクリエイターたちはその状況を変えようとしています。

サッカーが好きで勉強熱心、でも家族や友人との関係にモヤモヤした思いも抱えている10代のケナ(サマンサ・ムガシア)。彼女は自由でカッコいいジキ(シェイラ・ムニヴァ)と知り合い、急速に仲良くなります。一緒にいると何もかも楽しくて、自分も周りも変わるような気がして、それは自然と恋になっていく。いまのナイロビの街やカルチャーの描写も含めながら、ふたりが純粋に「本当の自分になりたい」という気持ちでつながっていくのが感じられます。

でも、その恋は周りに認められない。オープンになれないケナと、それに苛立つジキの違いも出てくる。社会からの非難は、ちょっとしたきっかけで暴力にも発展します。シンプルなストーリーですが、それは少女たちをまっすぐ見つめる助けになる。ただ同時に、彼女たちが着ている服やふたりで踊る音楽など、目と耳にいろんなものが飛び込んでくるのがとても新鮮です。

いちばん印象的だったのは色彩。アフリカらしい大胆な組み合わせがいっぱいで、しかもファッションや背景、光に至るまで、テーマカラーがピンクなのです。そのさまざまな表情は「女の子ならピンクでしょ」みたいな安易な使い方とは正反対。勇敢なピンク、やんちゃなピンク、悲しくてつらいピンク……と、とても雄弁です。ジャネール・モネイの最高の一曲「PYNK」の「私たちにはピンクがある」という言葉も思い出しました。それはセクシーで強くて、枠に閉じ込められない女性の可能性。この映画も、リアルだからこそ未来に開かれていると思いました。

『ラフィキ:ふたりの夢』
監督/ワヌリ・カヒウ
出演/サマンサ・ムガシア、シェイラ・ムニヴァ
11月9日、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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