『パリの恋人たち』の、素敵にくたびれたフレンチ・カジュアル。

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©2018 Why Not Productions

映画の衣装、特にスーツやドレスじゃない普段着は、アイテムのかっこよさやそれが似合っているかどうかより、「着慣れてる」感が大事だったりしますよね。少しくたびれ、馴染んでいてはじめて「素敵」と思える。ルイ・ガレル監督作『パリの恋人たち』ではそんなスターたちの普段着、特にセーターに目がいきました。心のなかで「これもセーター映画?!」と思ったりも。

というのも、セーター映画と言えば『ダンケルク』(2017)、というのが英国俳優好きの常識としてあるから。『GQ』のウェブサイトでも当時記事になっていましたが、あの戦争映画ではケネス・ブラナーが着るとっくりセーターからバリー・コーガンの編み込みベストまで、最高にブリティッシュなニット・アイテムが勢揃い。それが着る人の英国らしさを倍増させていました。

一方、『パリの恋人たち』はルイ・ガレルとレティシア・カスタ、リリー・ローズ・デップという美しい三人のリレーションシップ・ストーリー。まあ彼らが着れば、どんなにさりげない服でもコケティッシュで魅力的なフレンチ・シックに見えてしまうのはまちがいない。それにしても、レティシア・カスタが着る白のハイネックや、ルイ・ガレルのキャメルのセーター姿にはうっとりしました。

内容はベタな邦題に比べて、原題の『
L'homme fidèle(貞節な男)』のひねりが示す通り、真面目だからこそ二人の女性の間で揺れる男、そのとらえどころのなさをルイ・ガレル本人が演じています。セクシーで笑えて、ちょっとブラックで苦いところもある。会話とモノローグを聞いているうち、スルスルと話が進んでいく……という昔ながらのフランスの恋愛もの。その「くたびれ加減」を再びいまっぽく見せてしまうところもルイ・ガレルらしいなあ、と思った一作です。



『パリの恋人たち』
監督/ルイ・ガレル
出演/ルイ・ガレル、レティシア・カスタ、リリー・ローズ・デップ
12月13日、Bunkamuraル・シネマ他にて公開

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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