2020.06.03

そうそう、イーサン・ホークってこういう人。『15年後のラブソング』

© 2018 LAMF JN, Ltd. All rights reserved.
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延期になっていた映画が続々公開されはじめました。私は最近原作を読み直したので、『ストーリー・オブ・マイ・ライフ わたしの若草物語』を劇場で観たい! と思っているところ。

https://spur.hpplus.jp/magazine/topics/202002/17/R4eEY1A/

ただ今回は、従来の予定通りに公開されるロマンティック・コメディ『15年後のラブソング』をお勧めします。というのも、中年インディ・ロッカーを演じるイーサン・ホークがめちゃチャーミングだから。

原作はニック・ホーンビィ。当然ポップ・カルチャーに人生を左右される男女が登場するのですが、これはモチーフが90年代のオルタナ・ロックになっているところがミソ。個人的には「懐かしのオルタナ」的扱いになっているのにちょっと愕然としつつ、突然姿を消して伝説となったシンガー(イーサン・ホーク)と、彼の同好会を主宰するイギリス人オタク(クリス・オダウド)、その恋人(ローズ・バーン)、この三人のなかなか素直になれない大人たちの関係を楽しみました。

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それにしても、ちょっとくたびれていても青臭く、妙に人懐っこい男の役はイーサンにぴったり。私も何度かインタビューしましたが、取材途中で携帯と財布を置いたまま席を外したり(無防備すぎ!)、「あの監督は嫌なやつだった」と愚痴ったり(スコット・ヒックスです……)、他のスターと比べても面白すぎる。「前の取材のとき、あなたはこんな発言をしてたんですが……」と切り出すと、「ええ! ね、俺、どんなこと言ってた? 他には?」と逆に質問されて、話が進まなかったこともあります。文学と音楽の話になると熱っぽくなるのはイメージ通り。

そんな素顔のイーサンを彷彿とさせるのが本作で演じるミュージシャン。誰をモデルにしてるのか考えても、昔のポスターなど『リアリティ・バイツ』(1994)の頃のイーサンそのまんまです。それにちょっとジェフ・バックリィを足した感じ? イーサンが歌う持ち歌を提供したのがブライト・アイズのコナー・オバーストら本職ロッカーなのも見逃せない。ただ、重要な役割を果たす曲は舞台がイギリスなだけに、キンクスの“ウォータールー・サンセット”。そこはオルタナの名曲だともっとオタク度が上がったのに、と思ってしまいました。監督がレモンヘッズの元メンバーなだけに、レモンヘッズの“イントゥ・ユア・アームズ”とか……あの頃はウィノナ・ライダーもレモンヘッズのイヴァン・ダンドゥと付き合ってたし……と、当時のトリビアも思い出した一作。こうした名前にちょっとでも引っかかる人は、ぜひ。




『15年後のラブソング』
監督/ジェシー・ペレッツ
原作/ニック・ホーンビィ
出演/ローズ・バーン、イーサン・ホーク、クリス・オダウド
6月12日、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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