ワカンダ・フォーエバー。チャドウィック・ボーズマン追悼

Photo:Instagram(marvelstudios)
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優美さと高潔さ、スタイルのあるスター。8月28日、42歳の若さでチャドウィック・ボーズマンが逝去しました。プライバシーを大事にしていた彼が2016年から癌と闘病していたことは、ほとんど誰も知らなかったといいます。だからこそ皆が衝撃を受け、さらにはこの4年間で彼がどんな作品を残してきたかを思って、その生き方に称賛が広がっています。

私が初めてチャドウィック・ボーズマンを意識したのは、BBCでミック・ジャガーのインタビューを聞いたときでした。映画『ジェームズ・ブラウン』のプロデューサーとして、ミック・ジャガーはソウルのゴッドファーザー役にチャドウィックを選んだ理由を語っていた。音声はジェームズ・ブラウン自身の歌声を使うことに決めていたけれど、史上最高のパフォーマーとも言われる彼のステージを再現できる人を探して、ブロードウェイの俳優も考えたが、チャドウィックのオーディションが抜群だったと。ちなみに、その時点でチャドウィックは踊りもパフォーマンスも未経験。2か月でレッスンを詰め込んだといいます。それに大リーグ最初の黒人選手、ジャッキー・ロビンソンを演じた『42』での存在感も決め手になったとジャガーは言っていました。

もちろん、そのあと彼はマーベルMCUでブラック・パンサーの役をつかみ、世界的大スターに。アフリカの架空の国、ワカンダの王子/王はチャドウィックの美点をさらに引き出すような役でした。黒人として初のスーパーヒーロー主演作となっただけでなく、『ブラックパンサー』は故郷を奪われた人々についての話でもあった。歴史の過ちを認めながら、未来を築こうとする王を演じる際、やはりチャドウィックの持つ知性と高潔さが鍵となったと思います。

ブラック・アイコンを演じ、自らもアイコンとなったチャドウィック。私はちょうど、どんな派手な服でもノーブルに着てみせる彼を「新しいスタイル・アイコン」とする原稿を書こうとしていたところでした。現時点での最新作『ザ・ファイブ・ブラッズ』を見ると、若くして戦死した兵士役の輝きに、また悲しくなります。ただ、彼が世界を変えたことは確か。チャドウィックは亡くなったからではなく、生前からレジェンドだったのです。映画界の失われたプリンスよ、永遠に。

『42~世界を変えた男~』
監督/ブライアン・ヘルゲランド
出演/チャドウィック・ボーズマン、ハリソン・フォード

『ジェームズ・ブラウン~最高の魂を持つ男~』
監督/テイト・テイラー
出演/チャドウィック・ボーズマン、ネルサン・エリス、ダン・エイクロイド

『ブラック・パンサー』
監督/ライアン・クーグラー
出演/チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン

『ザ・ファイブ・ブラッズ』
監督・脚本/スパイク・リー
出演/デルロイ・リンドー、ジョナサン・メジャース、チャドウィック・ボーズマン、メラニー・ティエリー
Netflixにて独占配信中

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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