アニャ・テイラー=ジョイを知っているか? 『クイーンズ・ギャンビット』が超面白い

PHIL BRAY/NETFLIX
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チェスを知らなくてもそのスリリングな面白さに魅了され、見だすとやめられなくなるドラマ『クイーンズ・ギャンビット』。孤児の少女ベスはチェスの才能を花開かせ、次々大会を制して世界に乗り出していきます。ベスを演じるのはアニャ・テイラー=ジョイ。ボビー・フィッシャーをはじめ、チェスの天才はエキセントリックな人物像になりがちですが、ここでは非凡でありながら、心の傷や依存症と葛藤するひとりの女性として描かれている。タイトルはチェスの駒を捨てる代わりに勝ちにいく差し手の名称だと聞きますが、その通り、ベスは犠牲を払いつつも自分が進む方向を見出していきます。


テイラー=ジョイは『ウィッチ』(2015)や『マローボーン家の掟』(2017)などのホラー、シャマラン監督作への連続出演で、怖い映画のイメージが強い人。ただ今回はその鋭利さが繊細な感情表現にもなっています。以前、イギリスのジャーナリストがラジオ番組で「彼女はとても耳がよくて、どんなアクセントでも完璧。実際、取材の間に私の訛りをピックアップして、最後には少し似たしゃべり方になってた」と驚いていたので、アニャ本人もちょっと天才肌なのだと思います。だからこそ、ベスははまり役。勝負だけでなく、孤独な少女が解放されていく過程に胸打たれます。もちろんチェスという男の世界で、女性として闘う姿にも共感する。

COURTESY OF NETFLIX
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しかも、再現される50~60年代のカラフルな美しさといったら! フィフティーズの学生風から、どんどん大胆でグラフィカルになり、最後には洗練されたドレスやコートをまとうベスの衣装も素敵ですが、アメリカの家具やインテリア、チェス大会の会場となるパリやメキシコのホテルの建築など、すべてがアイ・キャンディ。いまブルックリン美術館では『クイーンズ・ギャンビット』と『ザ・クラウン』、二つのドラマのコスチューム展が開かれていて、ヴァーチャルで見ることもできるので、そちらもぜひ楽しんでください(https://www.brooklynmuseum.org/exhibitions/queen_and_crown)。そうそう、アニャは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)のジョージ・ミラー新作出演も決定したばかり。演じるのはシャーリーズ・セロンがやったフュリオサの若い頃。超期待です!

『クイーンズ・ギャンビット』
監督/スコット・フランク
出演/アニャ・テイラー=ジョイ、モーゼス・イングラム、トーマス・ブロディ=サングスター、ハリー・メリングほか
Netflixにて独占配信中

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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