グザヴィエ・ドランがCMに抜擢した、最高にクールな女性は誰?

6月号の千葉雄大さんのインタビューでも名前が出た、グザヴィエ・ドラン。カナダのケベック出身で、10代の頃からエモーショナルな映画を撮り続けている監督です。その彼が初めてCMを監督。ドランの映像はいつも深く印象に残るので、CMは「初めて」というのが意外だったのですが、仕上がりはシンプルで自由、かつゴージャスな彼らしい作品となりました。「ハッピーダイヤモンド」というタイトル通り、ジュリア・ロバーツの笑顔が1万ボルトの輝き。極上にハッピーな感覚をとらえています。

ショパールのサイトで見られるメイキング映像では、ドランの演出ぶりも楽しめます。彼自身もリラックスして、ジュリア・ロバーツに親密さを伝えているよう。私はドランが両腕に入れているタトゥーにも注目。ひとつひとつにいわくがありそうです。

そのすぐ後には、ドランが手がけた次のCMも登場しました。それが「プラダ ガレリア」のキャンペーン映像。一人の女性がいる部屋は、カラフルでいろんなものが散らかっていて、まるでティーンエイジャーの部屋みたい。インテリアも小物も、何もかも可愛い……と思っていたら、なんとその女性がハンター・シェイファーなのに気づきました。最高!

ハンター・シェイファーはティーンエイジャーの暗く悲しい部分もすべて描いたドラマ、『ユーフォリア』で有名になったトランスジェンダーの俳優。ゼンデイヤ主演のドラマながら、あのいまいちばんモードなゼンデイヤに負けないくらいクールな存在感を放っていたのが彼女でした。ゼンデイヤとハンターはそれぞれに問題を抱え、お互いの心の傷を癒すように友情を育み、それがやがて恋に変わる……というダークで美しくて、脆いカップルを熱演。二人がハロウィンに着たコスチュームのかっこよさにはため息が出ました。

それにしても、毎回キャスティングに唸らされるグザヴィエ・ドランだけあって、CMでもアイデア抜群。『ユーフォリア』とはまた違う、ハンター・シェイファーの軽やかでファンタジックな側面を捉えている。映画も多作な監督ながら、これから「短編作品」としてのCMを作ってくれそうで、期待大です。

『ユーフォリア/EUPHORIA』
クリエイター/サム・レヴィンソン
出演/ゼンデイヤ、ハンター・シェイファー、モード・アパトー

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映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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