こんな会話劇を、偏愛しています。フランス映画『ローラとふたりの兄』

© 2018 NOLITA CINEMA - LES FILMS DU MONSIEUR - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - FRANCE 2 CINEMA
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映画を楽しむポイントは本当にたくさんあって、臨場感やプロットに引き込まれることもあれば、デザインや衣装にうっとりしたり、俳優の存在感に釘付けになったり。そのなかで結構自分でも偏愛してるな、と思うのが映画の中の「おしゃべり」です。いろんなシチュエーションで会話がぽんぽん弾んでいると、すごく親密で、贅沢な時間を過ごしている気になる。ロマンティック・コメディや若者たちのドラマを観ることが多いのも、ジャンル愛というより(それもあるのですが)、会話シーンが中心だからかも、と思っています。

その意味でこの冬おすすめなのが、フランス映画『ローラとふたりの兄』。ジャン・ポール・ルーヴ監督が長兄役も演じ、次兄をジョゼ・ガルシア、そしてローラをリュディヴィーヌ・サニエが演じています。内容はといえばそれぞれが抱えている仕事や家庭の問題。リアルで切実な時もあれば、「あるある」と笑っちゃう時もある。とはいえフランスの典型的な地方都市の、典型的な家族の物語のようでいて、そこには当てはまらない階層や人種のキャラクターも登場する。それによって彼らのてんやわんやの「プチブル」ぶりが浮き上がる仕組みになっています。

それでもやっぱり繊細で気が利いていて、感情の機微を感じさせるのはフランス映画ならでは。主張が強くてぶつかることも多いのに、親しいからこそ「言えないこと」も織り込まれています。もちろん、そこは俳優たちの演技の見せどころ。離婚調停の弁護士で、毎日男女関係を解決しているローラが、自分のこととなると本心を伝えられないのにも共感。あと彼女の恋人がなんの意味もなくアラブ系の男性だったりするところに、監督の意識が表れています。

そう、この連載を続けている間に世界はどんどん変わり、私自身、映画やドラマを観る時の意識も変化してきました。ただ、偏愛しているもの、「ファンガール」な視点で見るのはほぼ同じ。それが自分ながら面白いな、と思っています。実はこの連載も次が最終回。ほんとに日記的に好きなことが書けて、楽しい連載でした。最後までよろしくお願いいたします!

『ローラとふたりの兄』
監督・脚本/ジャン・ポール・ルーヴ
出演/リュディヴィーヌ・サニエ、ジョゼ・ガルシア
12月10日公開

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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