【マリウス葉】さんにインタビュー。「自分をより深く知る時間が今の僕には大事」

よりパワーアップしてSPURに帰ってきたマリウス葉。SPUR4月号からリスタートする連載に先立ち、これまでの経緯や現在の生活について教えてもらった。

マリウス葉、久しぶりに SPURにカムバック!

マリウス葉 SPUR4月号
ニット¥234,300・ハイウエストジーンズ¥137,500・ダブルジャケット¥297, 000(p.35)/ロエベ ジャパン クライアントサービス(ロエベ)

2020年に「One step at a time」を連載していたマリウスさん。休養を経て新たな地で学びや生活をスタートしたことで獲得した体験をSPUR読者と「シェアし共に考えていきたい」という思いからこの企画が動き出しました。

自分の足で一歩ずつ前に進み始めた自分を誇りに思う

「こういう撮影、ほぼ1年ぶりなんです。うわーっ、緊張する〜‼」 
2023年の年末、マリウス葉は東京にいた。Sexy Zoneの東京ドームライブの応援にスペインから駆けつけたのだ。ちょうどSPURでの連載が再開することが決まり、スタッフとも久しぶりに再会。「僕、少しは大人っぽくなりましたか? だったらうれしいけど」と、はにかみながらカメラの前に立った彼の笑顔は、以前にも増して精悍で、エネルギーに満ちていた。

 

冷奴にナスの煮びたし!? マドリードでの自炊生活

Sexy Zone卒業から約1年。最近はインスタで元気な姿も披露しているが、今どんな生活を送っているのだろう。まずは近況を聞いた。

「皆さんにはご心配をおかけしましたが、僕は今スペインのマドリードで元気に大学に通っています。勉強しているのは、政治、哲学、法学、経済学……って幅広いですね(笑)。とにかく興味のあることを吸収しながら充実した学生生活を送っています。

これまで日本とドイツ(父親の母国)の文化の中で育ってきた僕が、なぜスペインを選んだかというと、ここがヨーロッパの中でもクオリティ・オブ・ライフを大事にする国だから。真面目で仕事熱心で、何かと頑張りすぎちゃう傾向にある日本人やドイツ人と違って、スペインの人たちは、遊ぶことが大好きで、仕事はほどほど。なんといってもシエスタ(昼寝の時間)が人権として認められている国だから(笑)、弱っていたメンタルをケアするには、一番いいんじゃないかと思ったんです。

とくにマドリードは、いつも天気がいいし、日差しが暖かくて、人もやさしい。とても住みやすい街で、リラックスして過ごせています」

勉学に多くの時を費やすが、ときに、隣国フランスでパリコレを見たりと自由な時間も満喫している様子。「ごはんも基本的に自炊です。簡単にできるものばかりだけど、ナスの煮びたしとか、冷奴にキムチを添えたりとか(笑)。BIOマーケットでとれた生卵を買ってきて、アジアンマーケットで買った納豆と混ぜたりして。それに醤油をちょっとたらして海苔で巻いて食べるとおいしいんですよ。もちろんスペインのパエリアやオムレツも好きだけれど、やっぱり和食が一番です!」

もちろん笑顔を取り戻すまでには紆余曲折があった。アイドルとして11歳から輝かしい世界に身を置いていた彼が、そこから距離を置き、新たな場所で再生するまでの道のりは、苦しくて険しいものだった。

「アイドル時代の僕は、メンタルヘルスに問題を抱えていました。人からの評価というものに重きを置きすぎて、自分自身を見失っていたんです。もちろんファンの方々の応援はうれしかったし、パワーをもらいました。その愛情は今でも感じていますし、本当に感謝しています。だけど幼い頃からこの世界にいて、つねに周りからの評価を意識してきたから、誰かの期待にこたえたり、周囲の人が望んでいる人間になることに必死で、自分が本当は何を望んでいるのか、考えられなくなっていたんです。

普通だったら思春期にトライ&エラーを繰り返して、本当の『自分』をみつけていくと思うんですけれど、僕はそういう時間を経ずに大人になってしまった。次第に自分がどんな人間なのかわからなくなって、気づいたときにはバーンアウトして何も感じられなくなってしまって……。ほんと、一時はどん底まで落ちた感じでした」

自分をより深く知る時間が今の僕には大事なんです

日本を離れたこの1〜2年は、カウンセラーやセラピストの力を借りながら、「自分自身に『マリウスって誰?』『マリウスって、本当はどんな人間?』『今どうしてこうなっているの?』という問いかけをずーっとしてきた」と振り返る。そんな中で見えてきたのは、完璧主義で、自分に厳しい自分だった。

「うまくいかないことがあると、『自分は生きる資格がないんじゃないか』って思ったり。オール・オア・ナッシングで考えて、自分を追い詰めてしまうことがよくあったんですね。でも、この先、そんな考え方をずっと引きずっていくのはつらいし、将来、自分のパートナーや子どもに悪影響を及ぼすのも嫌だなって。それで『変わりたい』と強く思うようになりました」

肩の力を抜いて、興味のおもむくままに自分らしく——。セラピーの効果もあり、次第に変化が表れた。

「たとえば勉強との向き合い方も変わりました。スペインに行った当初は、『芸能活動をしていない今、いい成績をとらないと自分は価値のない人間になってしまう』『僕の道を応援してくれている人を失望させてしまう』と必死に勉強していたけれど、最近は、そんなふうに自分にプレッシャーをかけるのをやめました。知識やスキルを学ぶことは大事だけど、それ以上に本を読んだり、エッセイを書いたりして、自分のことをより深く知ることのほうが大切だから。今は大人として成長する時間だと思っています」

ところで、今の大学の友人たちは、マリウスが日本でアイドルだったことを知っているのだろうか?

「最初は、みんな知らなかったんですが、あるとき、僕の名前をインターネットで検索をした友達がいて、『えっ、こんな活動してたの?』って(笑)。ライブの動画をみつけた友達には、『今と顔が全然違う!』ってびっくりされました。ちょうどスペインでヒゲをはやしてるときだったから、つるんとしたアイドル時代の僕に驚いたみたい」と笑う。

「今はステージで歌ったり、踊ったりする自分は想像できない」と言うが、多くの経験を経た今だからこそ、メンタルヘルスをはじめ、さまざまなトピックについて、SPURで発信していきたいと考えたのが、この連載がリスタートするきっかけ。

「タイトルの『One step at a time』は、以前の連載のままだけど、とらえ方が少し違うんです。前は『一歩ずつ進めば大丈夫だよね』って、自分に言い聞かせていたところがあって、どうしたら前に進めるか、全然理解できてなかった。でも今は、自分の足で一歩ずつ前に進み始めているし、成長を実感できている。そんな自分を誇りに思います。僕が経験したことをこの連載を通して、皆さんと共有できたらと思っています」

マリウス葉プロフィール画像
マリウス葉

2000年、ドイツ生まれ。幼少期を父の出身地のハイデルベルクで過ごす。元タカラジェンヌの母の影響で歌や踊りのレッスンをはじめ、11歳のとき、Sexy Zoneのメンバーとしてデビュー。2022年12月、芸能活動を引退。2021年9月、スペインの大学に編入した。

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