女優・歌手という2つの表現を両立している原田知世。
新アルバム『音楽と私』で自身のキャリアを振り返り、そこから発信されたものとは?
interview & text:Michino Ogura photography:Mitsuo Okamoto styling:Ayaka Endo hair&make-up:Taeko Kusaba
セーター¥105,000/アニヤ・ハインドマーチ ジャパン(アニヤ・ハインドマーチ) パンツ¥88,000/エストネーション(ケイト)
ーーこのアルバムでは1曲目から「時をかける少女」を選ばれるなど、ご自身のキャリアを総括したものでした。代表曲のセルフカバーというコンセプトはどのように生まれたのでしょうか?
原田 デビュー35周年を迎えるにあたり、まずはここまで応援してくださったファンの方々に何かお返しができないかと考えました。そのひとつとして、セルフカバー集を出したことがなかったので、1枚にまとめたら喜んでもらえるのかなと。年代ごとの代表曲やファンから愛されている曲を歌っています。自分の音楽の足跡を振り返ることにもなりましたね。
ーー選曲についてはどのようなポイントで選んだのでしょうか?
原田 ディレクターとプロデューサーと私の3人で選びました。私は歌う側の視点から、今の自分が歌うならどんな曲かという意見を。ふたりはアレンジ面からの観点で選んでいましたが、ほぼ3人ともずれがなく、この選曲だろうと一致していたのも面白かったですね。
ーー昔の曲を歌うことで、今だから気がつくことはありましたか?
原田 それぞれに思い出深い曲ばかりですが、まずは素晴らしい作家の方々が気持ちを込めて作ってくださっていたんだなということを改めて感じました。今聴いても懐かしいだけでなく、新鮮な気持ちで向き合える曲ばかり。例えば、アルバム前半では自分が10代だった頃の曲をピックアップしています。それらは映画での役柄が先にくるイメージで、青春映画のためのラブソングです。でも、実は大人になっても置き換えられる歌詞でもあるんです。子供のためだけに書かれたものではないんだと思いました。
ーー今回のアルバムの中から1曲をあげるとすると、どの曲に思い入れがありますか?
原田 そうですね。「天国にいちばん近い島」かな。ピアニスト・坪口昌恭さんとデュオで歌いました。細かいアレンジを決めずに、二人でスタジオに入ったのですが、お互いの間合いを読みながら歌うという、良い意味で緊張感のあるレコーディングでしたね。子供のころに歌っていた時は、その曲についてゆっくり考える余裕もなかったので、いまの自分だからできたことなんだと思います。
ーーアルバム最後の曲「くちなしの丘」ではギターを弾かれていますね
原田 そうなんです。今回初めて、レコーディングでギターを弾いてみました。この曲を今歌うには弾き語りが一番良いんじゃないかと思って。このために3カ月ほど練習しましたが、自分の呼吸で歌が歌えるというのは素敵なことですね。よりプライベートな雰囲気になったので、ファンの方にも伝わるといいなと思います。
ーー原田さんは女優と歌手という2つの活動を両立されていますが、そのスタンスが続けられているのはなぜでしょうか?
原田 芝居は誰かの人生を一瞬だけど生きるような面白さがあります。そこには監督をはじめ、たくさんの人が関わって、ひとつの作品を作っている。自分はその一部になれる喜びがあります。逆に、音楽はもう少し個人的なもの、等身大の自分を表現できる場所です。演技での役は一度しか演じられないけれど、音楽はなんども同じ歌を歌うことができます。それを重ねていくことで、また違うものに変わっていく楽しさがあるんです。音楽をやっていると、そろそろ芝居がやりたいなと思うし、その逆も。それぞれの活動で出会えた人たちも自分の財産になっている気がして、両立できていることは自分の個性なんだと思うようになりました。
ーー9月からツアーも予定されていますね。何かプランはありますか?
原田 このアルバム『音楽と私』が中心のセットリストになります。そこに、アルバムに入れられなかった曲を加える予定です。去年はクラブ公演のみでしたが、今回の会場はホールになります。ですので、音はもちろんですが、視覚的な演出も考えています。ファンの方が喜んでくれる空間にしたいですね。
ーー美しく歳を重ねてらっしゃる原田さんですが、40、50周年にはどんな女性でありたいと思ってらっしゃいますか?
原田 35周年がすぐだったのと同じように、それもあっという間にきそうで(笑)。お仕事をご一緒させていただいている人々が素晴らしい方ばかりなので、そんな出会いや縁を大事にしながら、次に進みたいですね。人と人との繋がりはこれからも大切にしていきたいです。
INFORMATION
『音楽と私』
(初回限定盤¥3,600・通常盤¥3,000 Verve / Universal Music)
代表曲『時をかける少女』から始まり、キャリアを俯瞰する楽曲がずらり。近年、ともに音楽づくりやツアーを回る、信頼するミュージシャンたちと共に、大人のアレンジで名曲たちが描かれる。
Profile
TOMOYO HARADA / はらだともよ
女優、歌手。長崎県生まれ。1983年、オーディションで5万7千人の中から選ばれ、映画『時をかける少女』で鮮烈なスクリーンデビューを果たす。その後も、近年ではNHKドラマ10『運命に、似た恋』などに出演。女優と歌手の両立をこなしている。
http://haradatomoyo.com/
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