革新的なブラック・ミュージックの発信源として改めて脚光を浴びているLAで、めきめきと存在感を増しているのが、このジ・インターネット。サウンドも佇まいも、エフォートレスなかっこ良さを誇るR&Bバンドだ。アンドロジナスな女性シンガー、シド・ザ・キッドのセンシュアルな歌声と、敏腕プレイヤーたちが紡ぐメロウなグルーヴで、世界中の高感度なリスナーを魅了している彼ら。2016年の初来日に続いて、またまたソールドアウトになった東京公演を前にインタビューに応えてくれた。
前作『Ego Death』について
――2015年に発表したサード・アルバム『Ego Death』で本格的にブレイクしましたよね。
マット:うん、すごくエキサイティングだったよ。バンドがどんどんビッグになるのを実感できたし、僕ら自身もミュージシャンとして成長して、大勢の人にアピールする曲を書きたいっていう欲が芽生えたんだよね。
シド:何しろ結成当時は、何か面白い音楽、自分たちが好きな音楽をプレイできたら、それで満足だったから(笑)
マット:時代を先取りしてるっていう自負は最初からあったんだけど、だんだん、“面白い音楽を作る通好みのバンド”でいるだけじゃ満足できなくなったんだ。
フジロックでの体験
――日本でも大人気で、2016年の初来日公演はすぐにソールドアウトになりました。
シド:あれはビックリだった! SNS上では日本人のファンはあまり見かけなかったから、ぜんぜん予期していなくて。
マット:日本での体験って言うと、2年前のフジロックフェスティバルがやっぱり最高だったよ。
スティーヴ:うん。当時僕はバンドに加わって間もなくて、ハイスクールを卒業したばかりだし、海外に行ったこともなかったんだ。だから、“え、みんな僕らを観に来てくれたの?”って、言葉で言い表せないくらい感動したよ。何かポジティヴなことを楽しむために、あんなに大勢の人たちが1カ所に集まっているのを見るのは、人生で初めてだったんだよね。ほら、デモとかじゃなくて(笑)
ソロ活動とグループの結束
――そして去年はみんなソロ活動に忙しかったですよね。シドもマットもスティーヴもソロアルバムを発表して。
マット:メンバー全員が幅広い音楽に興味を持ってるから、ここでひと休みして、それぞれ好きなことをやろうって決めたんだ。ほら、バンドが解散しちゃう原因って、自分のアイディアを取り上げてもらえなくて不満が溜まって……というケースが多いからね。それにソロ活動をしたことでみんな自信が増したし、結果的にバンドとしても結束が強まったんだ。
スティーヴ:みんな素晴らしいソロ・アルバムを作ったから、今のジ・インターネットはオールスター・チームなんだよ!
――結束と言えば、ファッション面でもなんだか統一感がありますね。
シド:確かにそうだね。意識しなくても自然にまとまる。
スティーヴ:いい曲を聴いたり、いい曲を作った時にグッとくるツボと、かっこいい服に出会った時にグッとくるツボが、みんな同じなんだ。たぶん、お互いのスタイリストを務められると思うよ(笑)
マット:パッと見たところ、ユニフォームを着てるみたいだよね。でも、例えばクリスはボトムが半パンのことが多かったり、さりげなく自分のヒネリを加えてるんだよ。
(左から)クリストファー・スミス(Christopher Smith/Dr)、スティーヴ・レイシー(Steve Lacy/G)、シド・ザ・キッド(Syd Tha Kid/Vo)、マット・マーシャンズ(Matt Martians/Key)、パトリック・ペイジ二世(Patrick PaigeⅡ/B)
準備中の新作は?
――そんなジ・インターネットの世界をずばり総括するとしたら?
マット:ちょっとヘンかもしれないけど、“ブラック・バンド”と言うよりほかないな。僕らの世代の最強のブラック・バンドを目指しているし。っていうか、人種に関係なく最強のバンドにならないとね。
――そろそろ新作が完成するとのウワサですが、どんな作品になりそう?
スティーヴ:『Ego Death』が大きくなって、ハイスクールに行ったみたいなアルバム?
シド:もしくは、『Ego Death』をビンに詰めて、土の中に埋めて発酵させて、3年後に掘り返した……っていうのはどう?(笑)。とにかく今のところすごくいい感じに進んでるから、お楽しみに!
編集Iのインタビューのぞき見話
★インタビューの手土産は日本が誇るヨックモックの超定番「シガール」のセットに。海外アーティストに大人気なのです。ライブ前のメンバーは箱を空けるなりすごい勢いで食べていました。「めっちゃうまい! お前も食べてみろよ!」と回し合い。
★楽屋でのインタビューはすごく和やかに行われました。誰かが一言話すと、それに乗っかって別のメンバーが冗談をかぶせ、結果話が終わらなくなるというパターン。本当に雰囲気のよいグループでした。
★撮影はたったの5分。メンバーのソロショットでは一人ひとりノリノリで動いてくれました。グループショットは一発で決まりました。「特に何もしていないのにかっこいい」のが本当にすごい……。エフォートレスとはまさにこのことですね。
INFORMATION
『Ego Death』
The Internet
(¥2,200/ソニー・ミュージック)
キャリア最高のヒットを記録し、グラミー賞最優秀アーバン・コンテンポラリー賞にノミネートされた、2015年発表のサード・アルバム。スゴ腕ギタリストのスティーヴが新たに加わったことで、ストリートぽいエッジと洗練性を併せ持つ、ジ・インターネット流のR&Bをブラッシュアップ。同性愛者としてカムアウトしているシドが、オープンに恋愛体験を綴った歌詞も話題に。
Profile
個性派揃いのミュージシャン集団オッド・フューチャーの一員として、プロデューサー兼DJ活動をしていたシド・ザ・キッドことシド・ベネット(ヴォーカル)とマット・マーシャンズ(キーボード)を中心に、2011年にロサンゼルスで結成。アルバム『Purple Naked Ladies』でデビューし、これまでに3枚のアルバムを発表。現在はスティーヴ・レイシー(ギター)パトリック・ペイジ二世(ベース)、クリストファー・スミス(ドラムス)を交えた5人組で活動中。
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