口ンドンといえば東よりも、テムズ川の南側が注目を浴びている昨今、音楽事情も例外じゃない。最近このエリアは気骨のあるロックを絶え間なく発信していて、"サウス・ロンドン"はひとつのキーワードとして浸透しつつある。そのシーンを、シェイムやHMLTDといったバンドとともに牽引しているのが、4 人のロンドンっ子からなるゴート・ガールだ。今月は来日ライブも大成功をおさめた彼女たちにインタビュー!
Profile
(左上から時計回りに)クロティ・クリーム(ボーカル)、ロージー・ボーンズ(ドラムス)、ネイマ・ジェリー(ベース)、L.E.D(ギター)の4人が2016年に結成。名門インディレーベル、ラフ・トレードからデビューした。
少数派だからこその自由
「シーンに特徴があるとしたら、それは特定のサウンドではなく価値観ね」とベーシストのネイマは話す。「中でも重要なのは、助け合いの精神。活動を始めた当時まだ10代だった私たちは、妹分としてみんなに面倒を見てもらったわ。世代も嗜好も違うフレンドリーなアーティストたちに囲まれて、たくさん刺激をもらって、ここまでたどり着けたのよ」。
全員音楽が大好きで、サウス・ロンドンのライブハウスで顔なじみになり、まずは友達づき合いを始めた彼女たち。ギタリストのL.E.Dいわく、一緒にいろんなライブを観ているうち
に「バンドってかっこいい!」とインスピレーションを受けたのだそう。「軽い気持ちで4 人でプレイし始めたんだけど、すぐに夢中になったわ。今の時代、ギターなんて古臭くてかっこ悪いものだと見なされているし、高校時代はバンド活動をしてる知り合いなんかいなかった。でも少数派だからこその自由があって、やりたいようにやればいいと感じたの」
若くてリベラルな女性が共感する歌詞
4 人がデビューアルバム『ゴート・ガール』で披露しているのはまさに、そういうDIYなアプローチで見つけたユニークなスタイルだ。計22曲という曲数に驚くかもしれないけど、大半は1 ~ 2 分台。要点を絞った、ストイックで濃密でダーティなロックンロールが、ゴート・ガール流なのである。「私たちはシンプルなポップソングが好きだし、最初のひらめきを重視して、面白い部分だけキープするのよ」とL.E.D。シンガーのクロティが綴る、社会風刺を多分に含んだ歌詞も、独特のアイデンティティを与えている。若くて、クリエイティブで、リベラルな思想の女性が、日々感じる生きにくさを伝えているかのようで、ガールズ・グループとはいえ、彼女たちの音楽は甘くない。地元では同性のファンが多いという話にも納得がいくし、中にはかなり若いファンも……。
「少しマシになったけど、相変わらず業界は男性主導」
「先日とあるフェスティバルに出演したときに、会場で10歳くらいの女の子に話しかけられて"あなたたちみたいになりたい" と言われたの。そんなふうに自分にもできるんだと感
じてもらえて、すごくうれしかった。少しマシにはなったけど、相変わらず音楽業界は男性主導の世界だから」(L.E.D)。「そうね。たとえば容姿のことでも、女性は日頃からまったく現実味のない美の基準をおしつけられているし、リアルなお手本って大切だと思う。バンドを始めるにせよ、何をするにせよ、自分に自信を持つことから始まるから!」(ネイマ)
INFORMATION
『Goat Girl』
GOAT GIRL
(Beat Records)
4 月に登場したファーストアルバムには、パンクやブルースやカントリーなどなど多彩な着想源を消化した、ライブ感満々の曲を収録。心をざわつかせる音で、ひと味違うロンドンの風景を描き出す。
着たい服はどこにある?
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