2018.10.07

秋めく季節に散歩しながら聴きたい曲は?

Licaxxx/リカックス
DJ、ビートメイカー。数々のフェスやイベントでプレイする。ウェブメディア「シグマファット」を主宰。J-WAVE「SONAR MUSIC」ではラジオパーソナリティを務める。

秋めく季節に散歩しながら聴きたい曲は?


『A Voyage To Arcturus』
Vakula


「Nyako(Modified Man Remix)」
Makadem & Behr
『Nyako』収録曲

暑苦しくないジャズを感じさせるオーガニックな音楽

 今年の夏は本当に暑かったですね。ようやく秋らしく涼しくなって、外に出やすくなったんじゃないでしょうか。今回は、そんな気持ちのいい季節に街を歩くときに、ぴったりな音楽を紹介します。

 夕方くらいに家を出て、歩き始めに聴きたいのはヴァクラ『A Voyage To Arcturus』。彼はディープハウスやビートダウンを作っているウクライナのアーティストで、好きなレーベル経由で知りました。このアルバムはジャケットのインパクトがすごいですが、その印象とは裏腹に、アンビエント調のゆるやかなテンションの曲が多くて聴きやすいです。なかでもお気に入りは「Joiwind」。ジャズっぽいサンプリングがきいていて、夏の終わりの雰囲気も秋の始まりのムードもある。私の中で秋は茶色のイメージなのですが、そんなやさしいフレーズなんだけどちょっぴりもの哀しい、深みと渋みのある気持ちよさを感じてもらえたらと思います。

 夜になって歩く速度もテンションも上げようかなというときには、ケニアのマカデムと南アフリカのベーアによる原曲を、ロンドンのモディファイド・マンがリミックスした「Nyako」を。シングルに入っているリミックスの中で一番好きですね。原曲はもっとアフリカン・ミュージック色が強いんですが、このリミックスは声ネタを生かしつつ小気味よいダンスミュージックになっているので、トライバルな音楽でも入りやすいんじゃないかと。私は暑くなれば生音が、寒くなるにつれて電子音楽が聴きたくなるんですが、このジャジーな生音とエレクトロニックのバランスが、夏から秋にかけての季節にはまるんです。洗練された都会感を味わってほしいです。

PICK UP

『Dear Someone, Happy Something』
Honey Hahs
¥2,000/Beat Records

メンバーはロンドンで両親と暮らす、16歳、13歳、11歳の姉妹! 本作でデビューするこのバンドは、美しい声のハーモニーと素朴な演奏で、子どもの目に映る世界を生き生きと描写。天性のセンスと、音楽作りへの無邪気な好奇心が、圧倒的なオリジナリティを生んだ。

『Blurred』
mabanua
¥2,500/origami PRODUCTIONS

近年ますます国内外に活動の場を広げているプロデューサーの6年ぶりのソロ作品は、太いビートと味わい深い音の層、そしてファルセット・ボーカルを重ねた、極上のチルアウト・ミュージック。しっかりフロアに足を着けながら、頭は雲の上に突き抜けている。

text:Hiroko Shintani

SOURCE:SPUR 2018年11月号「LICAXXXのミュージッQ」
interview & text: Annie Fuku photography: Yuhki Yamamoto