Licaxxx/リカックス
DJ、ビートメイカー。ウェブ「シグマファット」を主宰。インターネットラジオ「Tokyo Com munity Radio」もチェック。
ダークファンタジーのムードに合う音楽は?
「When I Leave」
Fat White Family
『Serfs Up!』収録曲
「Ark Bile Top-Ups」
Cru Servers
『Blubber Tottum』収録曲
2019-’20年秋冬コレクションで多く見られた「ダークファンタジー」のムード。ディストピア的世界観を見せることで、現実の背景にある社会問題を風刺したり、あぶり出したりしようとする印象を受けました。黒、赤、紫をべースとしたゴシックなテイスト。毒々しい花やハートのモチーフも多かったですね。今回はそんなファッションの雰囲気に合う音楽を紹介します。
1曲目はファット・ホワイト・ファミリーの「When I Leave」。サウス・ロンドンの3人組バンドで、映画『T2 トレインスポッティング』(’17)のサントラに収録された曲で注目を集めました。今春、UKを代表するレーベルのドミノ・レコーズから新譜を出したんです。なかでも「When I Leave」はポストパンクやウィッチハウスっぽさもあるサイケロックで気に入っています。やさしいメロディでファンタジーを感じさせつつ、ほの暗さもある。森をさまよう儀式風のMVも、ダークファンタジーのイメージに合っています。UKロックは昔から追っています。アメリカの明るさと違って、イギリス特有の暗さやじめっとした感じが好きなんです。
2曲目はまたイギリスから。グラスゴーのデュオ、クリュ・サーバーズの「Ark Bile Top-Ups」を。アムステルダムに行ったときにレコード店で掘り当てたんですけど、宇宙的なジャケが素敵です。曲はアンビエントやぐにゃぐにゃしたサイケっぽさもあるビート・ミュージックに仕上がっていて、シンセの音色でトリップ感を醸し出しているのがいいですね。実験的な音楽のなかで、最近一番ピンと来たのはこの曲も収録されているアルバムかな。実験的だけど愛らしさもあって。ジャンルは全然違うけど、前述のファット・ホワイト・ファミリーとの流れで聴いても違和感はないので、ぜひ続けて聴いてみてください。
Monthly Pick-up
『Cuz I Love You』
Lizzo
¥1,980/WARNER MUSIC JAPAN
今年のアメリカ音楽界を騒がせているリゾは、3枚目にあたるこのファンク・ソウル・アルバムで、ラッパーからシンガーに転向。ジャケットのインパクトに負けない破格の歌唱力を解き放ち、ポジティブで豪快なキャラで、"自分を愛さなきゃ!"というメッセージを叩き込む。
『Satis Factory』
Mattiel
¥2,400/Big Nothing
アンドロジナスなルックスと威厳あふれる歌声、そしてレトロ・アメリカンな美意識で鮮烈な印象を刻む、アトランタ出身のシンガー・ソングライターが本邦デビュー。60年代テイストのガレージ・ロックと、現代を生きる女性のウィットを、アルバムに仲よく同居させている。
text: Hiroko Shintani
SOURCE:SPUR 2019年9月号「LICAXXXのファッション×ミュージッQ」
interview & text: Annie Fuku photography: Yuhki Yamamoto, Jonas Gustavsson (runway)