UMMMI./うみ
1993年東京 生まれの映像作家。これまでに、愛、ジェンダー、個人史と社会をテーマに作品を発表。ルイ・ヴィトンやナイキなどのファッションブランドとの仕事の傍ら、音楽好きな一面を生かしMVの制作も行う。
vol.5 自由な体を求めて
Billie Eilish
Loraine James
自分のありのままの身体を一度でいいから誰かに褒めてほしいと思ったことがある。「それでも君は美しいよ」と言ってくれる人がどこかに一人くらいいるんじゃないかと想像しては、同時にそんなことあるわけないと思ってしまう。ダボダボの服を着て身体のラインをぼかしていたビリー・アイリッシュが下着姿でUK版『Vogue』誌6月号の表紙に登場した。これまでのボーイッシュな服で自分を守るスタイルも最高だったけど、持って生まれた身体を恐れずにそのまま見せるアティチュードに勇気をもらう。
「You should see me in a crown」のリリックでは、こう歌っているのも印象的だ。「王冠を被った私を見るべき/このつまらない街を駆け抜ける/みんなの頭を下げさせる」。つい人からどう見られるか気にしてしまいがちだけど、本当はそんなことまったく問題なんかじゃない。すべての女性が王冠をかぶっているのだという力強いメッセージが、解放された身体を写したビジュアルから伝わってきた。
また、新しいアルバムが今月リリースされたばかりのロレイン・ジェームスは、2019年の『FOR YOU AND I』収録曲「So Scared」で何度もこう叫んでいる。「そこにいるアンタがめちゃくちゃ怖い!/私は人目を浴びることが苦手だから/普段は外で自分の彼女と手もつながない」。地元のロンドンですら同性の恋人と歩くことは危険があると訴えているのだ。
もちろん、肌の色やセクシュアリティですべてが決まるわけではないけど、黒人でクイアのロレインと白人でヘテロのビリーは受け取るものは違うだろう。だからこそ、ビリーのような発言力のある女性が身体の話をすることは重要だと思う。そして、注目を浴びるのも苦手という声の小さい人々の生活がひそやかに守られ、すべての人々がそれぞれの身体で、傷つかずに街を歩ける世界にしていかなければならない。
Monthly Pick-up
Danny Elfman
配信中/ANTI
Cola Boyy
¥2,420/P-VINE
SOURCE:SPUR 2021年8月号「UMMMI.の社会とアタシをつなぐ音」
text: UMMMI. text(Monthly Pick-up): Hiroko Shintani edit: Ayana Takeuchi