オカモトレイジ
1991年生まれ、東京都出身。中学校の同級生で結成されたロックバンドOKAMOTO’Sのドラマー。9枚目のフルアルバム『KNO WHERE』が発売中。昨年全国ツアーを開催。
〝純粋でクソなロック“がクラブで流れる
1・2 バースデーイベントの様子。Psychoheadsと
3 Psychoheads「Bad Tuning」
4 Waater『Escapes』
5 フーテン族のメンバー
先日1月9日に誕生日を迎えてイベントを開催し、Psychoheadsというバンドでベースを弾きました(1・2)。なんでこんなことになっちゃったかというと、Psychoheadsには前々から誕生日イベントへの出演を頼んでいたんですが、イベントのちょうど10日前くらいにベーシストが突然失踪してしまったらしく、そのときの残されたメンバーの凹み具合が尋常じゃなかったので「よし! とりあえず今度の俺の誕生日イベントは俺がベースやるよ! なんてったって俺のイベントだしね」とその場のノリで言ってしまったのが事の発端でした。ライブでベース弾くなんて15年ぶりくらいだったので実際、「やれんのか!?」と不安でしたが、練習し始めたらドラマーの俺でも余裕で演奏できるくらい簡単! どのくらい簡単かというと「太鼓の達人」の"かんたんモード"くらい簡単でした(笑)。でもそんな簡単な演奏をカッコよく見せるっていうのが一番難しいのです。Psychoheadsはそれができているからすごい。だから私は彼らのファンなんです。
ロックをやるのには演奏力や作曲能力以外にも、ルックスだったり、アクションだったり、雰囲気だったり、武器になる要素が多いのです。それさえ持ち合わせていればまともに演奏なんかできなくたって誰でもロックとして成立するし、それはいくら楽器の練習をしても手に入るものではありません。誰でも始められる反面、選ばれし者にしかできないということ——ロックとはあまのじゃくなカルチャーであり、だからこそ、私はいつまでたっても心をつかまれたままなのです。
ここ最近、ハウス、HIPHOPなど、DTM主体のクラブミュージックがサブスクやSNSを媒介に、コロナ禍であろうと関係なくリスナーにしっかり届いている。というかむしろ飽和状態で、感度のいい子たちは飽きてきている気がします。それもあり、"純粋でクソなロック"(ザ・ブルーハーツやNIRVANAのサンプリングは別としてですが)が、カウンターカルチャーとして、今のクラブシーンに受容され始めているように感じます。
Psychoheads(3)をはじめ、Waater(4)、フーテン族(5)など、実際に若いバンドが増えています。ライブハウスシーンではなく、クラブシーンで、なのです。彼らはHIPHOPも好きだし、トランスでも踊るような、クラブミュージックを自然に聴いている世代であり、そういった若者たちがプレイヤーとしてロックを演奏していることが、俺はとてもうれしいのです!YoungThugやPlayboiCartiでTurnUpしているようなクラブで俺がいきなりThe Stoogesを流しても、バチバチにオシャレしてる子たちがわけもわからず踊ったりするんです。こんな日が来ると思っていなかった。長いことロックを愛し続けててよかった! 本当に報われた気持ちです。
SOURCE:SPUR 2022年4月号「オカモトレイジの現象」
photography : Masaya Tanaka 〈TRON〉(icon) hair & make-up : Takeru Urushibara 〈FLEURI〉(icon) text: Reiji Okamoto