UMMMI./うみ
映像作家/アーティスト。これまでに、愛、ジェンダー、個人史と社会をテーマに資生堂ギャラリーや東京都写真美術館などで作品を発表。ルイ・ヴィトンやナイキなどとの仕事の傍ら、音楽好きな一面を生かしミュージックビデオの制作も行う。
vol.13 崖っぷちで、スヌープ・ドッグとお金の話
Snoop Dogg
スヌープ・ドッグのアルバム『Paid Tha Cost To Be Da Bo$$』に収録されている「Paper’d Up」という曲は冒頭からいきなり、金、金、金というフレーズの連呼で始まる。金がなければペンと紙も手に入らないし、チキンウィングも食べられないと歌う。そんな彼は、合法の地域で大麻や酒類を展開したり、最近では自身の名前であるスヌープ・ドッグにかけたホットドッグブランドまで作ると噂をされ、ビジネスマンとしての成功も収めている。
一方、アタシ自身はお金のことを考えることがかなり苦手なほうだけど、この社会で生活している以上、お金からは逃げられない。特にフリーランスとして仕事をしているので、請求書や領収書といった紙きれに埋もれる日々を過ごしている。そんなフリーランスや自営業の人々に打撃を与える「インボイス制度」が、このままだと2023年に始まってしまう。この制度について触れようとすると、誌面に限りがあるので難しいが、個人事業主から税を徴収しやすくする制度だと言える。富裕層から税金を取るのではなく、一般層から税金を絞り取る制度とも言えるインボイス制度。ただでさえアタシたちは税金の高い社会で生きているのだから、少しでもみんなが生きていきやすい環境にしていきたい。多様な働き方が認められるようになってきた今こそ、気になる人はまずネットで調べたり、周りの人たちとこの制度について話してみてほしい。
契約書などお金にシビアだと言われるスヌープ・ドッグが、同じラッパーの21 Savageにアドバイスしているインタビュー動画を見た。「お金を稼いだら、金のネックレスや家、車じゃなくて、音楽を作る環境に使え。そうやってお金を作り続けるんだ」。その言葉を自分に言い聞かせる。本当は美しくて高い服だって欲しいけど、まずは働いて稼いだお金を全部自分の作品につぎ込んで、崖っぷちを歩きながら、誰も見たことのない頂点に向かって進んでいこう。
MONTHLY SELECTION
Wolfgang Tillmans
¥2,420/Calentito
Beach House
¥2,970/Big Nothing
SOURCE:SPUR 2022年4月号「UMMMI.の社会とアタシをつなぐ音」
text: UMMMI. Hiroko Shintani(MONTHLY SELECTION) edit: Ayana Takeuchi photography: Mayumi Hosokura