一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ! 『Brat』 Charli xcx 『Brat』 Charli xcx ¥3,080/Warner Music 2024年の音楽シーンは実に華やかだ。ビヨンセやテイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュ、アリアナ・グランデなど、スーパースターたちが次々と新作アルバムをリリースしていく光景はまさに百花繚乱。今年も女性たちを中心にシーンが活性化していく中で、ひときわ強烈な個性を放っているのがイギリス出身のシンガー、チャーリー・XCXだ。 2010年代以降の音楽界を代表するポップアイコンの一人で、メインストリームとアンダーグラウンドのどちらのシーンからも支持を集める数少ない存在と言えるだろう。ポップスターとして売り出され人気が拡大していく中で、自分のやりたい音楽と人から求められるものの違いに徐々に不満を募らせていたチャーリー。長年契約していたレーベルを離れ、心機一転、自分の表現したかった音楽に真っ向から挑戦した最新作『Brat』は、彼女のクラブカルチャーへの愛が爆発した意欲作だ。 近年、宇多田ヒカルや藤井風との仕事でも知られるプロデューサー、A.G.クックを中心に制作されたエレクトロポップサウンドは、ハウスやテクノなどのクラブミュージックの要素を前面に押し出した非常にアグレッシブな響きをしている。攻めの姿勢のサウンド面に対し、彼女のパーソナルな苦悩や葛藤を吐露した歌詞のナイーブさも今作の魅力の一つ。 仲間たちと音楽を楽しみたい、ストレスや悩みを発散したいといったあらゆる思いを抱え、やってくる多種多様な人々を受け入れる、クラブという空間の素晴らしさを見事に表現した傑作だ。 HASHIMOTOSAN(ハシモトサン) ジャンルを問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。Itなアーティストを紹介する自身のX(@hashimotosan122)にファン多し。2024年上半期のベストアルバムはMk.geeの『Two Star & The Dream Police』。 2024年8月のおすすめ音楽 『Daffodils & Dirt』 Sam Morton ¥2,200/Beat Records 英国の名優サマンサ・モートンが、プロデューサーのリチャード・ラッセルと組んで初のアルバムを制作。養護施設を転々とした少女時代の壮絶な体験を掘り起こす彼女の声を、ドリーミーなサウンドが優しく包む。 『Ⅱ』 Kiasmos ¥3,190/Inpartmaint 10年ぶりの新作を披露するのは、アイスランド人の作曲家オーラヴル・アルナルズと、フェロー諸島出身のプロデューサーのヤヌス・ラスムセンの異才デュオ。室内楽とミニマルテクノが出合う音の楽園が広がる。 『STARFACE』 Lava La Rue ¥2,750/Dirty Hit 映像作家でもあるジャマイカ系英国人が、ジェンダーフリュイドな異星人を描く奇想天外な作品でデビュー。地元ロンドンのマルチカルチュラリズムを映すサイケデリックな音楽絵巻で、強烈な個性を突きつける。 【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】をもっと読む 【フローティング・ポインツ】自宅とダンスフロア双方を揺らす、電子音楽の最先端【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【テムズ】愛と希望、苦悩を世界に届ける、アフリカの歌姫【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【クレイロ】早咲きのベッドルームポップから、大人のソウル・ジャズへ【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【チャーリー・XCX】ポップアイコンが提示する、クラブサウンドとの新たなる交差【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【ベス・ギボンズ】加齢を受け入れ、別れと向き合う葛藤と現実を歌う【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】 【ビヨンセ】アメリカ音楽の歴史を、多様な視点で再解釈する旅【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】