2025.01.05

【タイラー・ザ・クリエイター】過去と向き合い自身と対話し、これから先を見つめ直す【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】

 

【タイラー・ザ・クリエイター】過去と向きの画像_1

一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ!

『CHROMAKOPIA』 Tyler, The Creator

『CHROMAKOPIA』 Tyler, The Creator
『CHROMAKOPIA』 Tyler, The Creator
配信中/Sony Music

年齢を重ねるにつれ、昔は理解できなかった物事に対する、感情や感覚が変化しているなと感じることが増えてきた。若い頃に蔑視していた大人たちの年齢に自分が近づき、さまざまな経験の積み重ねや環境の変化などにより、自身の価値観も変わっていく。近年ファッションアイコンとしても絶大な支持を集めているラッパー、タイラー・ザ・クリエイター。彼もそんな人生の転換期に差し掛かっているミュージシャンの一人だ。過激な歌詞や言動、映像表現で同世代の若者から圧倒的な人気を誇っていた彼も、現在33歳。かつて一緒にバカ騒ぎしていた仲間や友人たちも家庭を築き、自分とは違った生活を送り始めている中で作り上げた最新作『CHROMAKOPIA』は、これまでの彼の作品の中でも最もパーソナルと言える仕上がりだ。

自分自身だけでなく、女手一つで育ててくれた母親の言葉とも向き合い、年老いていくことへの意識と恐怖心、周りの人と比べることなく自分らしく生きることの大切さなど、自らの内面と対話することで見えてきたリアルな思いが歌詞として綴られている。これまでほとんど触れてこなかった父親への気持ちを表現した「Like Him」は、タイラーの心の変化が特に率直に感じられる一曲だ。ソウルやジャズ、さらには自身のルーツでもあるアフリカのロックを取り入れるなど、さまざまなジャンルの音楽が混在したサウンドの幅の広さも本作の大きな魅力。タイラーの表現者としての面白さや音楽マニアっぷりが遺憾なく発揮された、聴きどころ満載の一枚だ。

HASHIMOTOSAN(ハシモトサン)プロフィール画像
HASHIMOTOSAN(ハシモトサン)

ジャンルを問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。Itなアーティストを紹介する自身のX(@hashimotosan122)にファン多し。最近は、世界各国の年代別ヒット曲を聴けるアプリ「Radiooooo」に夢中。

2025年1月のおすすめ音楽

『Young-Girl Forever』 Sofie Royer

『 Young-Girl Forever 』 Sofie Royer
配信中/Stones Throw Records

現代を生きるヤングガールたちの喜びと哀しみを、最新作のテーマに選んだのは、気鋭のイラン系オーストリア人アーティストだ。ファンキーなエレクトロ・ポップに憂いを含んだ声を乗せて、独自の議論を展開。

『Soft Power』 Fazerdaze

『 Soft Power 』 Fazerdaze
¥2,750/Big Nothing

2017年にデビューしてブレイクしながらも、心身ともに消耗して活動を休んでいたニュージーランド人シンガーが本作で再出発。波乱の20代に別れを告げて自己認識を改める過程を、ファジーなサウンドで切り取る。

『Eazy Peazy』 Man/Woman/Chainsaw

『 Eazy Peazy 』 Man/Woman/Chainsaw
配信中/Fat Possum Records

ロンドンから現れた新人バンドがEPを発表。バイオリンを交え、メンバーが代わる代わるシンガーを務めて繰り出すアートパンクは、プリティからノイジーへと瞬時に変貌。そのカオスに膨大なエネルギーが潜む。

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