一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ! 『Revengeseekerz』 Jane Remover 『Revengeseekerz』Jane Remover 配信中/deadAir 2025年4月、強烈な個性とインパクトを放つ作品が突如リリースされ、そのカオスな新しさに一瞬で魅了されてしまった。アメリカ・ニュージャージー州出身のミュージシャン、ジェーン・リムーヴァーの最新作『Revengeseekerz』だ。 現在21歳のジェーンが作り出すサウンドは、ルールや制約、固定観念にまったくとらわれず、自由極まりない響きを持つ。EDMやハイパーポップ、トラップ・レイジなどのヒップホップが、雑多に混ざり合ったようなミクスチャーなサウンド。「デジコア」とも称され、幼い頃からネットに触れていた世代ならではの斬新な発想や遊び心にあふれている。 ノイズやシャウトが鳴り響くアグレッシブなビートは、ハードコアでありながらポップさも感じる非常に複雑な質感をしているのが印象的。その要因と言えるのが、ゲーム音楽からのサンプリングを多用している点だろう。ポケモンの鳴き声やマリオ、ソニックの効果音など何百種類と言えるレベルのゲーム音楽がそこら中にちりばめられていることで、ただ激しいだけでなくキャッチーかつキュートに聴こえてくるのがなんともユニークだ。そんな攻撃的なサウンドに対して、トランスジェンダーの女性として生きる彼女が抱える葛藤や怒りをリアルに吐き出したような歌詞のセンシティブな一面も実に魅力的。 革新的な音楽性だけでなく、同じ世代・境遇の若者たちの代弁者としての姿勢も、ジェーンがこれからの時代の音楽シーンを象徴する存在として注目されている理由の一つだ。 HASHIMOTOSAN(ハシモトサン) ジャンルを問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。Itなアーティストを紹介するX(@hashimotosan122)にファン多数。最近は、新調したアナログプレイヤーでレコードを聴きながら過ごす時間がお気に入り。 2025年6月のおすすめ音楽 『Ready For Heaven』 Deradoorian ¥3,300/Big Nothing 昨今の世界の混迷をインスピレーションに5年ぶりのアルバムを制作したのは、マルチな才能を備えるアメリカ人女性。不安も絶望も、ときに荘厳、ときにファンキーなアートポップに変えて、避難場所を提供する。 『Earcandy』 Miso Extra ¥2,860/Big Nothing 日本と英国、両親の出身国の言語を操るシンガー兼ラッパー兼プロデューサーの待望のファーストが完成。ハウスやK-POPで味つけした音の甘みは強め、でもメロディと言葉はほろ苦い、美味なポップソング。 『La Femme Aux Yeux de Sel』 Gabi Hartmann ¥3,000/Sony Music フランスのジャズ界を騒がせる気鋭のシンガーが、物語仕立ての新作を発表。世界各地で民族音楽学を学んだ彼女は古今東西のサウンドを引用しながら、そのスモーキーな美声でノスタルジアと旅情をかき立てる。 【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】をもっと読む 【ジェーン・リムーヴァー】21歳の若き天才の個性が炸裂した、革新的一作【hashimotosanのおすすめ音楽】 【青葉市子】日本の自然の美しさを音楽に乗せ、世界に癒やしを届ける【hashimotosanのおすすめ音楽】 【オーケールー】フランス発、ポップミュージックの最新地点【hashimotosanのおすすめ音楽】 【バッド・バニー】祖国の伝統文化や社会問題を、音楽を通じ世界へ発信【hashimotosanのおすすめ音楽】 【ファビアナ・パラディーノ】偉大な父から音楽的センスを受け継いだ、R&B界の注目株【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【タイラー・ザ・クリエイター】過去と向き合い自身と対話し、これから先を見つめ直す【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】