一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ! 『Cowboy Carter』 Beyoncé 『Cowboy Carter』 Beyoncé¥3,490/Sony Music 2024年は空前のカントリーブームの渦中にいると言えるだろう。全米チャートではカントリー楽曲が上位に連なり、先日行われたコーチェラでヘッドライナーを務めたラナ・デル・レイの新作はその影響を受けた作品になるという。さらにファレル・ウィリアムスが手がけるルイ・ヴィトンも最新コレクションでカウボーイスタイルを取り入れるなど、その動きは音楽の世界にとどまらない。この流れをより加速させているのがビヨンセの最新作『Cowboy Carter』だ。 彼女の出身地であるアメリカ南西部に脈々と流れるカントリー文化を再解釈し、先人たちへのリスペクトを示しつつ完成させた今作。世界中の人々がそのカルチャーの歴史や意義を考え、学ぶきっかけを与える作品としても重要な意味を持つ一枚だ。アルバムリリース当日の緊急来日の際のファッションも含め、見事に自分のスタイルとして表現している一方で、今作はカントリーに限らずさまざまなサウンドが混在したジャンルレスな響きをしているのも印象的だ。また、彼女が「これはカントリーアルバムではなくビヨンセのアルバムだ」と明言していたが、今作の多種多様な楽曲を聴けばその意味がわかるはず。 カテゴリーや人種の壁を壊し、アメリカの前時代的な価値観や、固定観念を刷新しようと挑戦し続けているビヨンセ。音楽や歴史を再考する3部作プロジェクトの2作目である今作を経て、次作では何に焦点を当てどんな世界を創り上げるのか。期待と想像は膨らむばかりだ。 HASHIMOTOSAN(ハシモトサン) ジャンルを問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。Itなアーティストを紹介する自身のX(@hashimotosan122)にファン多し。昨年、ビヨンセの「ルネッサンス・ワールド・ツアー」のラスベガス公演に参加。 2024年6月のおすすめ音楽 『Swaken』 Bab L’Bluz ¥2,750/Big Nothing マラケシュで出会ったモロッコ人女性とフランス人男性によるバンドの、セカンドが完成。北アフリカ各地のサウンドが渦巻く、サイケデリックで複雑なグルーヴに、男女平等や多文化共生のメッセージを込めた。 『Combo』 MFS 配信中/The Orchard 国内外で注目を浴びるラッパーが、拠点とする大阪の仲間から海外勢まで、多数のプロデューサーとファーストを制作。多彩なビートにストイックな語りをのせて、自分の信条や価値観を明確に示している。 『I’m Doing It Again Baby!』 Girl In Red 配信中/Sony Music あけっぴろげにメンタルヘルスのトラブルを歌って支持を得た、ノルウェー人シンガーの新作。ここにきてラブの力で自信を取り戻した彼女は、アップビートでユーモアあふれるインディポップに今の気分を託す。 【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】をもっと読む 【ジョーディー・グリープ】気鋭の若手が挑む、UKロックとブラジル音楽の未知なる融合【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【フローティング・ポインツ】自宅とダンスフロア双方を揺らす、電子音楽の最先端【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【テムズ】愛と希望、苦悩を世界に届ける、アフリカの歌姫【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【クレイロ】早咲きのベッドルームポップから、大人のソウル・ジャズへ【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【チャーリー・XCX】ポップアイコンが提示する、クラブサウンドとの新たなる交差【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【ベス・ギボンズ】加齢を受け入れ、別れと向き合う葛藤と現実を歌う【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】