2025.12.05

【ギース】ついに覚醒した、ロック界の新鋭【2025年12月のおすすめ音楽】

一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ! 音楽マニアのHASHIMOTOSAN(ハシモトサン)が注目の一枚を解説。

一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ! 音楽マニアのHASHIMOTOSAN(ハシモトサン)が注目の一枚を解説。

hashimotosanのおすすめ音楽

『Getting Killed』Geese

『Getting Killed』Geese

『Getting Killed』Geese
¥3,300/Universal Music

ここ数年あまり活気のなかったロックシーンの未来を託したくなるような、個性と実力を兼ね備えたバンドがアメリカから登場した。ニューヨークを拠点に活動する4人組、ギースだ。

2021年のデビュー以来、カントリーやブルースを内包した独創的なロックサウンドで異彩を放っていた彼ら。しかしその風向きが大きく変わったのが、ヴォーカルを務めるキャメロン・ウィンターのソロ活動の成功だ。昨年末にリリースされたアルバム『Heavy Metal』は、ボブ・ディランやニール・ヤングといった偉人級のシンガーソングライターを引き合いに出されるほどに高い評価を受け、一躍注目を集めた。

そんな中リリースされたギースとしての最新作『Getting Killed』は、ソロ活動で得た経験や自信がバンド全体に波及した、驚異の完成度を誇る傑作アルバムだ。最近あまり耳にすることのなかった泥くさく武骨な質感のロックンロールサウンドは、ローリング・ストーンズを思わせるオールドスクールな響き。低音のきいたキャメロンのコク深い歌声も相まって、まだ20代前半の若者たちが作り出したとは到底思えない渋さだ。

その一方でベース・ドラムを中心に生み出されるファンキーなグルーヴや、さまざまな響きが複雑に絡まりながら大胆に展開していく構成は、新時代のバンドならではのボーダーレスでフレッシュな感覚を感じさせる。その絶妙なアンバランスさが彼らの大きな武器であり魅力と言えるだろう。今後さらに大きな存在になっていくのは間違いないと確信させる圧巻の一枚だ。

HASHIMOTOSAN(ハシモトサン)プロフィール画像
HASHIMOTOSAN(ハシモトサン)

ジャンルを問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。Itなアーティストを紹介する自身のX(@hashimotosan122)にファン多し。最近は、新調したアナログプレイヤーでレコードを聴きながら過ごす時間がお気に入り。

2025年12月のおすすめ音楽

『The BPM』 Sudan Archives

『The BPM』 Sudan Archives

配信中/Stones Throw

シカゴ発のハウスや、デトロイト発のテクノをベースに、ダンス音楽に特化した新作を発表した、米国人のシンガー兼バイオリニスト。千変万化するサウンドスケープを強靭なビートで貫き、全編ハイに走り切る。

『Melt』 Not for Radio

『Melt』 Not for Radio

配信中/Not for Radio LLC

LAの人気バンド、ザ・マリアズを率いるマリア・ザルドヤが、深い森の中に身を置いて作ったという本作でソロデビュー。自然界の治癒力を借りて喪失感と向き合う彼女の声が、幻想的なサウンドの波間に漂う。

『Arthouse』 Nemo

『Arthouse』 Nemo

配信中/A Better Now Records

昨年ユーロビジョン・ソング・コンテストで優勝したノンバイナリーのスイス人シンガーが、ファーストを完成。オペラを学んで磨いた声を駆使し、ネオンカラーで包んだポップソングの数々で不寛容さに抗う。

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